2013年7月29日月曜日

マセラティ・ギブリ 日本車セダンに格の違いを見せつけるか?


  2013年に入り日本ではミドルサイズ以上のセダンが国産車だけでも毎月軽く1万台を突破するほど順調に売れている。セダン好調の要因を分析すると、各モデルの水準がひと昔前と比べると格段に高くなっていることが挙げられる。特に良くなっているのは燃費と内外装のデザインである。以前のセダンは燃費は悪くて当たり前で、車内は広さこそ優があったが、比較的短いサイクルでFMCMCを行うコンパクトカーやミニバンにインパネのデザインについては遅れている感すらあったほどで、インパネ以外にも古臭いミッションやハンドルが現行モデルに平気で付いていて、なおかつ「殿様商売」的な価格設定なのだからたまらない。

  この流れを変えたのが、2011年に発売されたトヨタのカムリHVと言われている。このクルマのヒットの最大の要因は、「なんちゃって高級車」として成金趣味にばかり走っていた従来の大型セダンの悪しきトレンドを叩き直した点である。10km/Lを軽く上回る良好な燃費に加え、大型ボディを動かすのに十分な進化したHVシステムを搭載し、後席のスペースを十分に取りセダンとして「当たり前」の実用性を決してスポイルすることなく、さらに内装はモノトーンで統一してクラスレスなシンプルさではあるが、全体としてセンスの良い仕上げにしている。

  もっともなんでこんな当たり前のクルマがもっと早く出てこなかったのかという思いもある。トヨタの時流を読む眼というべきか、1840mm幅のクラスレスなプライベートセダンに日本の道路&駐車場事情が対応できるように急速に改良されてきたことを察知し、他社に先んじてクラスレスなミドルサイズセダンを投入する英断こそが、このクルマの成功の最大のポイントなのだろう。

  車幅1840mmについては様々な意見がある。その最たるものとして「2013年版 間違いだらけのクルマ選び」で2台の1840mm幅のクルマについて、なぜか異なる見解が載っていた。レクサスGSは「ベストサイズ」で新型アテンザは「大きすぎる」とまったく逆の評価がされている。穿った見方をすれば、レクサスGSユーザーは赤坂・六本木周辺で買い物するので駐車場は問題ないが、アテンザユーザーはお台場や御殿場などのアウトレットを主に使うだろうから、アウトレットの狭い駐車場には「デカすぎる」ということか?さすがにそういった差別的な表現は一切使われていないが、著者が言外に託した想いはそれに近い気がする。なにはともあれ大衆車ばかりが並ぶ新宿駅西口駐車場も1900mm車が十分に入庫できるほど広く作られていて、1840mmならばなにも問題はなくなってきている。

  MBBMWに加えてレクサスや日産フーガなどが屋台骨を背負っていた、従来のセダンは失礼ながら、「時代遅れ」「悪趣味」のイメージが拭えなくなっていて、販売が低迷している。新型シャシー投入で巻き返しを図るレクサスもGSに続きISも意外にパッとしない。ブランドの宿命として「高級感」を全方位的に発揮する必要があり、それが従来のセダンのネガティブなイメージに重なってしまうようだ。

  その一方で「クラスレス」なカムリHV・アテンザ・アコードHVはかなりの勢いで息を吹き返しつつある。これまた穿った見方をすれば、バブル期に飛ぶように売れた欧州車が、その後の不況期にも中古車として大量に低価格で流通していたという事情で、このクラスの日本車の新車需要を一時的に引き下げていたと言える。中古欧州車もタマ数がだいぶ減って来て、それら中古ユーザーの多くは新車に乗り換える資金的余裕がないところに、お手頃で格落ち感も少ない良さげな新型国産セダンが登場して、その結果好評を博しているのではないかと思われる。いずれも輸入車からの乗り換えがかなり多いと言われている。

  それでもまだまだお金を持っている人は日本にはたくさんいる。新車に1000万円を注ぎ込める人にとっては、新たなクルマの候補としては、バブル期から大きな進化を見せていない名門のMBBMWではなく、新たに登場したポルシェ・パナメーラやマセラティ・クアトロポルテのほうが断然に魅力的であり、費用対効果も高いと言える。そこの市場に満を持して投入されようとしているのが、マセラティの新型セダンのギブリだ。いよいよ日本へも導入が近づいているようで、その仕様が次第に明らかになってきた。

  GTカーとしてのスポーツ性を重視するクアトロポルテは従来のガソリンエンジンに固執しているが、ライバルのパナメーラがVWのバックアップもあり突如としてPHVを導入してきたこともあり、新型ギブリにはディーゼルが設定されてパナメーラPHVに真っ向勝負を挑むようだ。果たして高級車にディーゼルが相応しいかという議論もあるようだが、とりあえず低燃費&マセラティブランドのパッケージで十分に日本などの市場で十分競争力がありそうだ。

  もっともマセラティとしてはさらなる市場の拡大を意図しているようで、簡単に言うと高級セダンにおいては斜陽のMBBMWの市場を切り崩す戦略車として位置づけられている。ただ早くもマセラティ車にしてはどこかオーラが無いという印象もある・・・。グランツーリズモがBMW6シリーズと同価格ならば十分勝算はあるだろうが、このギブリに6シリーズを切り崩す魅力があるかどうかはやや疑問だ。


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2013年7月19日金曜日

インフィニティQ50(新型スカイライン) 「”ラスト・ニッサン”は買いか?」

  あくまで憶測の域を出ない話だが、日産はどうやら「FR高級モデル」の開発を凍結したようだ。先日も北米を中心に展開しているインフィニティブランドの廃止が取りざたされたと報じられた。北米でのFR車の売上はまったく成長の兆しをみせず、仮に次期モデル用の新型シャシーを開発したとしても現在の規模の売上では開発費用の回収もままならないだろう。次世代の環境対応車の展開で遅れをとっている日産にとって、見通しが付かない高級車の開発をする余裕はないのが実情だ。

  まもなく発売されるインフィニティQ50もV35・V36と2代に渡って使われているプラットフォームが引き続き使われる。トヨタのクラウンと同じく3世代が同じシャシーを使うことになった。新型プラットフォーム開発が割に合わない事情はクラウンに関してもまったく同じだと思われる。そして様々な報道によると、この次(6~7年後)の日産のミドルクラス・ラグジュアリーセダンは業務提携しているメルセデスが設計を担当するそうだ。

  実質的にメルセデスはルノー日産の高級車部門を担当する「関連メーカー」に位置して来ているようだ。これはトヨタ・VW・GMの3軸で展開されつつある自動車業界で、メルセデスとルノー日産がそれぞれに競争力を保つための必然的な「同盟関係」だ。メルセデスもルノー日産もここ数年においてトヨタと互角以上の収益をあげていて、投資家サークルでは一定の評価を受けている。しかし世界で一番トヨタが多く計上している「研究開発費」を、この両社は大幅に削って無理矢理に収益を作り出しているという指摘もある(エコカー技術で両社が遅れているのは必然の成り行き?)。

  今後10年の自動車業界で予想されるトレンドとしては、VWが傘下のアウディとポルシェに高級車開発を委譲するという合理化策が各陣営に広まると予想されている。ライバルのトヨタもまったく同じようにスバルとBMWに自社の高級車を委ねる方針でグループ再編が進んでいる。フィアットも傘下ブランド間の連携を強め、フェラーリのエンジンやマセラティの生産スキームをクライスラー系ブランド(SRTやダッジ)やアルファロメオに移植して北米・中国・日本でのシェアの拡大を目指すようだ。簡単に言うとフェラーリのエンジンを使ってマセラティが組み上げたダッジやアルファロメオブランドのスーパーカーが登場するということだ。フォードとホンダはこれらとはやや一線を画した独自の経営方針(孤立主義?)を押し進めるようだが、ルノー日産もメルセデスと三菱をブランド内部に組み込んでVWやトヨタに追従すると言われている。

  前置きが長くなったが、このインフィニティQ50で歴史ある日産の「走りのセダン」は姿を消す公算が高い。北米で売れているアルティマ(ティアナ)は今後も残るだろうが、これはカムリやアコードのライバルとして作られたFFセダンであり、日産のスカイラインやセドリック/グロリアの系譜を引き継ぐようなクルマではない。

  今の段階でインフィニティQ50で新たに導入されると発表されたシステムは、フーガのハイブリッドシステムの流用と超高張力鋼鈑の使用がアナウンスされている。すでに生産が開始されているが、まだ正式に噂の「ハンドリング機構」についての発表はない。来年以降には2.2Lディーゼルターボと2Lガソリンターボによる新グレード追加があるようだ。

  もし栃木工場で作る「ラスト=スカイライン」なのだとしたら、やや地味なFMCの印象でとても残念だ。日産のこだわりが盛り込まれたハイテク=セダンこそがスカイラインの名前にふさわしいはずだが・・・。やはりバブル後の経営危機の段階でスカイラインは幕引きをすべきだったのだろうか。それでも余力で新生スカイラインはBMW3シリーズを北米市場で完膚なきまでに叩きのめし、ヒュンダイから羨望の眼差しを受けジェネシスというフォロワーも生んだ「日本を代表する名車」でありつづけたのはさすがだ。6~7年後に登場するであろうメルセデスがアメリカで組み立てるOEMのスカイラインなんて、喜ぶミーハーは居るかもしれないが、とても日本を代表するスポーツセダンとは言えない。



  

2013年7月11日木曜日

新型アクセラ 「予想以上の進化で欧州車ではなくアテンザのシェアを喰ってしまいそうだ・・・」

  前輪ストラット後輪ダブルウィッシュボーン。スカイアクティブ-Gとスカイアクティブ-D。MT設定などなど・・・。アクセラとアテンザの違いは、ともに3代目に突入してかなり少なくなってくるようです。すでに2代目の段階で内装の差はほとんどなく、アクセラの完成度はかなり高かったのですが、新型ではアテンザにはない新システムを搭載しているようで、マツダの「攻めの姿勢」を強く感じます。

  マツダが2Lのスカイアクティブ-Gを開発した時、アテンザではなく先にアクセラに投入した経緯がありました。これは2代目のアテンザとアクセラを比べたときに、両者にフロントサスの違いなどが顕著にあってクルマの方向性自体に違いがあったからだと思われます。ダブルウィッシュボーンで武装しているアテンザの2Lにはあくまでもスポーツセダンのショートストロークエンジンを載せ続け、ストラットという大衆車向けのサスを使っていたアクセラには、多少のスポーツレスポンスを犠牲にしても、より燃費が優れているロングストロークのスカイアクティブ-Gを投入したようです。ただそもそも燃費を気にするユーザーは1.5Lモデルを選ぶので、あまり効果はなく最初のスカイアクティブ-Gはまったくの「無風」に終わりました。

  アテンザが去年FMCを迎え、結果としては3代目はアクセラもアテンザもどちらもスカイアクティブ-Gでフロントストラットという形で共通化してしまいました。おそらくマツダが超円高に苦しんだ末に苦し紛れに選択したモジュラー化戦略の一環でしょう。それでもロングストロークエンジンとストラットを使うクルマ作りは、アクセラやアテンザの当面のライバルであるゴルフやBMW3と同じに過ぎないので、そこまでネガティブな要素ではない気もします。それでも従来のマツダファンからしてみれば、「これじゃマツダを買う必然性が乏しくなる」と不満が募る展開ではあるのですが。

  3代目のアテンザとアクセラはスポーツカー的な性能面でのアドバンテージを放棄して、いよいよデザインだけでプレミアムブランドに立ち向かっていくようです。新型アクセラも「鼓動」デザインは当然に取り入れていて、出来上がった新型アクセラは我々の期待と不安を軽々と飛び越えていくような、まさに「最先端」のクルマに仕上げてきました。初代・2代目のアクセラも独特のリアデザインを配していましたが、今回も実によくできています。去年リアデザインにこだわって投入されたトヨタ・オーリスのデザインを、まったく綺麗に作り直したような見事な造形は欧州車のものとは次元が違う出来だと思います。今度こそ本気でカーデザインCOTYを狙えるかもしれません。

  マツダはすでに「鼓動」デザインが飽きられるということも折り込み済みのようで、ただ単にデザインを配するだけでなく、それ以外の目に付く魅力を最大限に盛り込んできているように感じます。アテンザのとりあえずの成功で手綱が緩むこともなく、アテンザを超える魅力を秘めたアクセラを作ってきました。これで一時的にアテンザの販売が低迷するかもしれませんが、来年にはアテンザのMCでかなり大規模な修正と、クーペかスポーツのボディに高出力エンジンを載せた「本気モード」のアテンザが出てくるような気がします。この2台にプライベートカーをどこまで進化させられるかにマツダの命運は100%かかっていることは間違いないでしょう。とりあえずは、スポーツメーカーの地位は捨ててでもポジティブな結果を追い求めている姿勢はよくわかります。

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2013年7月3日水曜日

オペル・インシグニア 「GMの最高傑作が日本にやってくる日は近い」

  経営不振で米政府の管理下に置かれていたGMがV字回復を達成し、再び世界戦略を開始している。日本市場には欧州製(オペル製)の新型キャデラックが導入されているが、まだまだレクサスやドイツ車の脅威にはなっていないようだ。しかし、GMの実力はこんなものではない、今後日本のクルマ産業にとってVW以上の脅威となってくるだろうことが予想される。

  北米市場をHVで席巻するかと思われたトヨタが、GMやフォードに対して最近では遅れをとるようになってきている。クライスラーを含めた北米ビッグ3の現在の成長戦略の中心にいるのはなんと小型車だ。従来は日本車とそれを追っているヒュンダイの得意分野とされている小型車だったが、ビッグ3がそれぞれに充実したラインナップを展開し大きく巻き返している。

  経営危機の直前の時期までにビッグ3は外国メーカーとのM&Aで小型車のノウハウをきっちり獲得していたと言われている。GMはスズキから、フォードはマツダから、クライスラーはフィアットから先端の小型車技術を吸収して、現在世界中の生産拠点(タイ・メキシコ・南ア・ブラジル・ハンガリーなど)で生産を行っている(クライスラーはフィアットのOEMが中心)。さすがに本家の日本市場に進出するのは簡単ではないだろうが・・・。

  マツダとの協業関係を維持しているフォードはマツダラインナップに重なるモデルの日本投入には消極的なようだが、GMは今後さらなるブランド力拡大を狙って積極的に日本市場を目指してくるはずだ。ニュルブルックリンクでGT-Rを超える最速タイムを叩き出したコルベットの新型(C7)もまもなく日本で発売になる。GT-Rを性能でもコストパフォーマンスでも上回るスーパースポーツの登場は、ホンダの新型NSXにとっても大きなプレッシャーになるだろう。

  GMはGT-Rに匹敵するコルベットや、レクサスISのライバルとなるキャデラックATSだけでなく、次世代の日本車の象徴とも言える「新型アテンザ」に匹敵するクルマをもすでに欧州で発売していて、そのデザインの良さから人気が爆発している。それがDセグのセダン/ワゴンの「オペル・インシグニア」だ。大衆ブランドのオペル車なので、欧州に輸出されるアテンザとガチンコ勝負になっているクルマだ。新型アテンザはスカイアクティブDと洗練されたスタイリングを武器としている。対してインシグニアのストロングポイントは、様々な種類のガソリンターボの設定により最高のスポーツセダンとしての「価値」を謳っているから、なかなか手強い相手だ。

  従来から欧州での売れ線は、燃費よりもドライビングフィールと言われている。新型アテンザの弱点を敢えて言うなら「レスポンス」に優れるエンジン設定が無い点だ。これに対してインシグニアでは「レスポンス」重視のエンジンに力を入れている。個々のエンジンを見てみると、2L直4ターボはボア×ストロークが三菱ランエボXと同じで三菱GDIのライセンスのようだ(日本仕様のATSと同じエンジン)。2.8LのV6ターボはその仕様を見る限りメルセデスC350の3.5LのV6NAのエンジンに匹敵する良いフィーリングを持ったスポーツエンジンだと思われる。しかもこれを搭載したインシグニアOPC(2.8Lターボ)の方がC350よりも10000ユーロ以上も安い。

  オペル自慢のディーゼルエンジン搭載モデルももちろんあって、グレード設定は非常に多岐にわたる。三菱エンジンまでわざわざ揃える辺りにGMの欧州や日本進出への「本気」を感じる(もしかしたら元三菱の技師が設計した類似エンジンかも?)。当面は正規ルートではATSを売り続けるだろうが、ある時期が来たら必ずこのインシグニアを「究極のスポーツセダン」として日本で売り出してくるだろう。V6の2.8Lターボ(325ps)の搭載モデルを300万円台で発売したりすれば、アリストやセドリック/グロリアターボの復活だと大反響になるのではないか(そんな元気なオヤジがどれだけ残っているかはわからないが・・・)。


↓オペル製品はリーズナブルな価格設定です。クルマも本格的に日本に投入してほしいな。