毎月のようにクルマ雑誌に躍る「◯◯◯おまえもか!」という文字に少々ウンザリです。最近の例でいうと「ジャガーおまえもか!」「マセラティおまえもか!」「ベントレーおまえもか!」「ランボルギーニおまえもか!」そして「アルファロメオおまえもか!」・・・。これらの各ブランドは近々プレミアムSUVを導入するそうですが、「おまえもか!」ってことは不満タラタラなんですね・・・絶対にSUVが嫌いとは書けないでしょうけど、気持ちがこもってます(笑)。そんなクルマ雑誌のライター達も「BMW X5」や「ポルシェカイエン」のレビューとなると、歯の浮きそうなおべんちゃらを散々に使っていて・・・。
これもカーメディアに生きるものの宿命とはいえ、本心とは全く違うことを延々と書かなくてはならないのはツライと思いますね。SUVが好きではない(というか嫌いな)のに、新型車はどこもかしこもSUVばかり・・・。しかもメーカーの鼻息は異様に荒く、下手なことが書けないですし、全くアガらないテンションを押し隠して書かなければ次の仕事はない。出版不況が吹き荒むなかでイヤイヤな苦行が、これからも続くのかと思うともう気分はヘロヘロじゃないかと思います。できることならユーザーの好みが突如劇的に変わってSUVブームが一気に下火になってくれないかな? そしてそんな風潮を作ってくれるスゴいクルマが出てこないかな〜・・・なんて待望する雰囲気をクルマ雑誌のあちこちから感じますね・・・。
そんな憂鬱な毎日を過ごしているであろうカーライターの気分が、少しは晴れそうなモデルが、意外や意外のVWから登場したようで、秋にも日本に導入されることが決まっているそうです。VWと言えば堅実な作りの「ゴルフ」と、レトロな復刻モデルになる「ザビートル」など、日本のユーザーの心を掴むクルマをラインナップしているなかなか素晴らしいブランドです。しかし正直に言いますと私はVWがあまり好きではないです。このブランドが日本でも高い支持を集める理由は、他でもないトヨタやホンダに迫るレベルで相応に合理的なクルマの設計をしているからだと思うからです。「トヨタ=ホンダ=VW」という意味でVWは称賛に値しますが、私はトヨタやホンダを買わないのと同じ理由でVWにも距離を感じています。
私たちは日本車に囲まれて生活していてそれが当たり前になっていて、トヨタやホンダのスゴさがメディアで正当に評価されることを目にする機会もないです。しかし世界の自動車メーカーと比べてもこの2社の合理的なクルマ作りは、圧倒的な地位にあることも十分にわかります。トヨタやホンダがアメリカだけでなく、欧州でもかなりの信頼と羨望を受けているブランドだという話はたくさん聞いたことがありますが、ちょうど同じように合理的なVWが、逆に日本でチヤホヤされるのと同じ構図なのだと思います(ドイツではVWは普通のクルマ)。
もちろんトヨタ、ホンダ、VWが同じようなクルマを作っているという話ではないです。しかしこの3社はどんな困難な経済情勢に巻き込まれても、政府や他社の支援など必要とせずに独自の体力だけで生き抜いてきた数少ない自動車工業の雄であり、この3社の逞しい背中を見てBMWグループやダイムラーグループも合理性を取り入れたクルマ作りに軸足を移しています。そしてどこぞの自動車グループの傘下にある高級ブランドでも現実的なSUV作りが広がっているわけです。
しかし行き過ぎた合理性は、大きくクルマの魅力を削ぐ結果となり、トヨタもホンダも慌てて「86」「RC-F」「S660」「シビックtypeR」「新型NSX」といったモデルを投入してきました。少しも揺るがない頑強な合理性を持つ強いメーカーが、改めて世界のクルマ好きへメッセージを発信することで、私達はこれからも長く楽しいクルマを選ぶことができるんだ!と少々ホッとするところがあります。某国産メーカーが突如3ローター&ターボの超絶スーパースポーツを1000万円で発売したら、このメーカーは全く懲りないな・・・と呆れてしまいますし、ロータスやマクラーレン、ケーニッグセグが10年後も存続していると信じる気持ちにはなれないです(ボルボもジャガー=ランドローバーもアストンマーティンも!)。
トヨタやホンダと同じ「合理主義」を社是とするVWも同じ世界に生きているわけですから、当然というべきかクルマ好きへのメッセージのこもったモデルを作ってきました。「VWゴルフR420」は、2Lターボを420psまで引き上げてその出力に耐えられる構造で横置きエンジン用のミッション(7DCT)をわざわざ新造して市販化に漕ぎ着けたようです。「直4ターボの横置き」「AWD」というとすぐに「ランエボ」が思い浮かびますが、ちょうどランエボ終焉の時期に登場したこともなんかの因縁を感じます。もしかしたら細部で使われる機構のライセンスに関する契約が三菱とVWで締結されているのでは?と・・・。
さてクルマ雑誌にウケが良いと思われるこの「ゴルフR420」ですが、やはり一斉にかなりのハイテンションで報じられています。そしてどこもかしこも、「日本にはこういうクルマがほとんど無くなってしまった・・・」なんて付け加えて書かれています。MSアクセラやシビックtypeR、ブレイド(トヨタ)などいまでも街中でしばしば見られるモデルの販売が、現在はされていないことを悲しむと同時に、日本のお家芸までもドイツメーカーに持っていかれたことに対する不満もあるようです。しかしいつまでも「ドイツvs日本」なんて構図というのもナンセンスですし、そもそもドイツの得意技って何?って話です。メルセデスAMG「GT」なんて見るからにアメ車的な設計ですし、BMW i8なんて何らブランドのポリシーを反映できていない。アウディR8はもはや・・・ですし。ポルシェ911はドイツ車で括られる前に「911」なわけで・・・。
もしVWがランエボの骨を拾っているならば・・・まあそれは結構なことだと思います。三菱にとってVWなどのドイツメーカーはターボチャージャーの納入先で大切なお得意様です。三菱自を破滅へと追いやったのは、もちろん自らの脇の甘さもありますが、マスコミに過剰なまでの三菱叩きをさせた謎の「巨大勢力」の存在があったのではないか・・・という陰謀論も囁かれます。しかしもはや信じられないかもしれませんが、ドイツでの品質信頼度における上位3ブランドは、ポルシェ、三菱、マツダです。日本では三菱のリコール隠しというモラルハザードが声高に叫ばれましたが、三菱と同じような状況は他のメーカーにも相応に起きているのに、三菱ばかりが日本中で知られるくらいまで繰り返し報道されました。同じ時期に故障を原因とした死亡事故はトヨタにおいてもホンダにおいても実際は三菱以上に発生しているわけです。
なぜトヨタやホンダは追求されないのか?という声は当時からもありました。そして三菱が「生け贄」になってくれたおかげで、日本メーカーの多くがコンプライアンスを改めて連日のようにリコールを出すようになりました。「最近のホンダはなんかリコールが多くない?」なんてニューモデルマガジンXでも散々に書かれていましたが、それはね・・・三菱が生け贄になったからだよ!という側面もあるはずです。そんな三菱の「怨念」をも背負ったVWが、トヨタやホンダそして、三菱を完全に喰いものにしたメルセデスに対して制裁を加える!はちょっと言い過ぎかもしれませんが、なんとも興味深い話です。トヨタ&レクサスの全てのモデルよりも、ホンダの新型「シビックtypeR」よりも、そして「メルセデスAMG・A45」よりも速い超絶マシン「ゴルフR420」が日本に降り立つのを楽しみにしたいと思います。
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