2015年1月22日木曜日

ホンダグレイス 「Bセグセダンという世界標準」

  昨年にトヨタがマツダとの新たな提携を発表しましたが、これは米国市場向けに新たにBセグセダンを投入するためと言われています。マツダが供給するクルマをトヨタブランドで販売する、いわゆるOEMが発表されました。これまでの北米市場では、Cセグ(カローラ、シビック)が「スモール・セダン」として大きな市場を持ってきましたが、近年ではジープが再び躍進するなど米国市場の嗜好も、他の地域よりもだいぶ緩やかですが、変化しつつあります。そんな中でトヨタは次の米国市場のトレンドとして「Bセグ・セダン」を仕掛けていくようです(まったくの未確定情報ですけど・・・)

  日本メーカー各社が国内では売らずに中国や東南アジアの市場を中心に投入しているのが、フィットやデミオをベースとした小型セダンで、もはやアメリカ以外の地域では日本車といえばこのタイプのクルマを指すというくらいに広く知られているようです。もちろんランクルやハイラックスこそが日本車という道路事情が劣悪な地域もまだまだ多いのは確かですが・・・。そんな日本車の象徴である小型セダンが本国ではほとんど販売されていないというのは、やはりやや滑稽な構図です。結局のところ日本では軽自動車の税制面での優遇によって、小型セダン市場が完全に破壊されてしまっているようです。

  もの凄いペースで高齢化する社会では、運転のし易さを売りにした小型セダンは、むしろ売れるタイプのクルマだと思われますが、ここ数年の経緯をみてみると販売が伸び悩みフィットアリアやティーダラティオといった小型セダンが比較的短期間で日本市場から消えていきました。元々はCセグだったカローラもダウンサイジングされBセグに近いポジションになった現行モデルでも、販売開始時は極めて低調で、のちにHVが投入されてやや息を吹き返した印象がありますが、その販売のほとんどがワゴンタイプのカローラ・フィールダーだと言われています。セダンタイプである現行のカローラアクシオに街中で出会うことはほぼ無く、現行モデルに関してはかなりレアな存在となっています。理論上では日本でも十分に売れるはずなのですが、小型セダンを取り巻く現実を見ると、この手のクルマを積極的に選ぶユーザーは少なく、思いのほかに全く人気がないという不思議な現象が起こっています。

  しかしそんな現状を打破することが「ホンダの使命だ!」という意識を強く持っているのかは解りませんが、ホンダが新たに小型セダン「グレイス」を日本に導入してきました。実際のところはフィットとヴェゼルではカバーできない顧客へ向けたもので、つまりはフィットアリアやシビックセダンユーザーの乗り換え需要を見越した投入であり、そこがこの企画のスタートラインだったと思います。しかしこのクルマはテレビCMの作り方を見ていると、ホンダの狙いはもっと高い所にあるようで、どうやらアコード&フィットの燃費大幅アップやオデッセイのコンセプト変更など、天敵トヨタへの挑戦とばかりに、巨大な敵の間隙を突く狙いがあるようです。このグレイスが狙うトヨタ車はズバリ「プレミオ/アリオン」です。全車種HV化を推し進めるトヨタの中にあって、いまだにガソリンエンジンのみという旧態依然なままの販売が続くモデルです。

  コロナやカリーナの系譜を受け継ぐC/Dセグセダンとして残るプレミオ/アリオンですが、そのコンセプトはデザイン性・スポーツ性への意識は極めて弱く、高級感の演出と乗り心地に特化した「コンフォータブル・セダン」というべき仕上がりになっています。同クラスに属するプリウスと比べても、内装の方向性はだいぶ異なりますし、プレミオの乗り心地とプリウスの燃費がある程度の高い相関をもってトレードオフの関係なることはすでに各メーカーのエンジニアが示しています。その中でトヨタの主張かどうかはわかりませんが、プレミオのクラスを超えた乗り心地を維持するためには、HVという選択肢は難しいという判断があるのかもしれません。

  トヨタは全社を挙げてハイブリッドの普及に邁進してきたこの20年あまりの中で、欧州市場での逆風や日本でも反対意見がいまだに燻っていたりします。しかし苦難の末に、ハイブリッドありきの日本市場であったり、ドイツ主要メーカー全てでHV車が発売されるなどの結果を得る事ができました。しかし日本市場では断トツのシェアを誇り、グローバルでも1000万台を販売するトヨタがHVだけの一枚岩のエンジニアリングで成り立つはずもなく、ひっそりとプレミオのようなクルマが今も売れ続けています。トヨタの見事な広告戦略の結果として「HVといえばトヨタ!」というイメージが広がっていますが、プロであるはずの自動車評論家が真顔で「トヨタ=HV」という前提で持論を展開するのは、さすがに「痛い」と思います。

  さて話がトヨタへと偏ってしまいましたが、トヨタのプレミオ/アリオンを狙い撃ちした(であろう)、ホンダのグレイスは成功を収めることができるでしょうか? 同じサイズのクルマ同士の競争ではないのですが、ここ数年の日本市場では上のクラスのシェアを喰ってしまう高性能コンパクトカーの活躍が目立ちます。シビックを日本から退場させたフィットや、アテンザの販売を激減させたアクセラとそのアクセラの販売を激減させたデミオなどが目立ちます。とくにBセグの活躍が目立ちます。もちろんBセグも軽自動車によって刈られる立場にあるわけですが、やや古めのCセグ車に狙いを定めて設計すればまだまだ十分にシェアを伸ばせる環境といえます。

  ホンダとしてはグレイスをコンパクトカーに付加価値を加えたクルマとして、テレビCMにおける高級感の演出こそ出来ていますが、現実にプレミオの持つストロングポイントを実際にどう攻略しているのかが気になるところです。残念ながらホンダの快進撃を支えたヴェゼルの乗り心地はお世辞にも良いとは言えないものでした。それでもSUV人気の中で他社の新型SUVを上回る人気を集めて予想を超えるセールスを記録しまいました。乗り心地こそ満足できるものではないですが、その分だけイメージよりははるかに軽快なハンドリングが好印象という人もいたようです。グレイスにも使われるヴィゼルの1.5LHVユニットは結論として燃費に特化し過ぎたもので、Sモードの加速もなかなかですが、やはり残念なことにアクセルを踏み込んだ時の高揚感が非常に乏しいです。

  グレイスが狙っているプレミオもまたアクセルのレスポンスに大いに課題を持ったクルマです。その主な要因はCVTの変速フィールの悪さにあるように思います。トヨタの1.5Lエンジン車をひと昔前に主流だった4ATと現在のCVTで比べると明らかに走り易い領域が変わってきます。30km/h以下ならばCVTの方が安定した出力が見込めるというメリットはありますが、50km/hを超えたあたりからは完全にダイレクト感に優れる4ATが勝ります。ホンダの小型車用HVDCT化されているので、また違った乗り味にですし、Sモードもついてくることは素晴らしいです。

  さてグレイスがトヨタからシェアを奪うかどうかはわかりませんが、トヨタもカローラアクシオHVに手直し&G’s投入などの応急処置を施してくれば、去年高いレベルで張り合ったSUVに続いて、小型セダンも熱くなるかもしれません。マツダもすでに海外で導入していて、なかなかのデザインを誇るデミオセダンが存在しますし、スズキが中国向けに販売を予定している小型セダンベースのコンセプトカーも加わって、これが新たなトレンドになっていきそうな気配を感じます。


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