2016年12月13日火曜日

トヨタ・マークX Dセグの珍車が8年目に脚光を浴びる!?

  トヨタ・マークXが何やら新展開を迎えています。プレミオ/アリオンに引き続き、突然のアナウンスとともに、大胆なフェイスリフトが行われました。あまりの変貌ぶりに前の顔の面影はほとんど無くなりましたね。しかも最近のトヨタに有りがちなアバンギャルド顔でもなく、とてもナチュラルな仕上がりで好印象です。

  現行モデルは2009年デビューの2代目ですが、不幸にもリーマンショックの嵐の中での船出となり、さらに東日本大震災の混乱に見舞われて全く脚光を浴びることなくモデルの前半を過ごしました。あまりの不調に2012年頃には「次のマークXはFF化してカムリと兄弟車になる」という怪情報すら流れていましたっけ。特にベストカーは堂々と「次のマークXはFFで1.4Lターボを搭載する」みたいな情報をどうやら意図的に流していました。K沢やI川やらどっかのメーカーの工作員が執筆陣として複数入り込んでいますから、普段からやたらとガセネタが多い雑誌ではありますけど。もしかしたら当時はトヨタの幹部もそう考えていたのかもしれませんが・・・。

  初代マークXでも同じことがいえますが、デビューからしばらくの2代目マークXは、このクルマの独特の立ち位置のせいもあって、実際に乗ってみても大きく訴えてくるものが無かったのも事実です。初代がデビューした2004年頃には、ミニバンやSUVに圧されて日本メーカーのDセグセダンはすでに日本市場には居場所がありませんでした。当然のことながらV35スカイラインもGGアテンザも最初からグローバルカー市場で頂点を目指す!!という方針のもと設計されました。

  トヨタはいち早くアルテッツァ(1998年デビュー・レクサスIS)を海外市場向けに送り込んでおり、その後に企画されたマークXは国内専売モデルとして、「走り」よりも「居住性」などの日本的な価値観に基づいて設計されていました。開発年度が違うということもあってか、アルテッツァとマークXを兄弟車にするという発想はなかったようで、直6・直4のアルテッツァに対して静粛性重視のV6を使うマークXという明確に違う立ち位置でした。

  アルテッツァは英国カーメディアにも「打倒E46を掲げる日本からの刺客」と破格の好評価で迎えられました。1998年当時に欧州市場で最もブランド力を持っていた日本のセダンは、欧州向けホンダ・アコードで、規格外のVテックによる戦闘力はアルファロメオやアウディの技術者魂に火を着けたと言われています。アルテッツァの襲来に続いて、日産が欧州にもその名を轟かしていた伝説のスカイラインGT-R(R34)がイギリスでの正規販売を開始し、2002年には初代アテンザが欧州で破格の大ヒットを遂げました。

  欧州で俄に高まった「日本VS欧州連合」によるDセグ対決ですが、元々は1990年にバブル期の過剰投資そのままに水野和敏氏(主査)&前澤義雄氏(デザイン)の超強力タッグによって作られたP10プリメーラが、BMW、プジョー、アルファロメオなどの欧州GTカーブランドに大恥をかかせるような大ブレークをしたことから始まります。その後に欧州の威信を賭けてBMW3erの歴代最高傑作として名高い「E46」や、映画「TAXI」でも大活躍のプジョー史上最高の「406」そしてアルファロメオ史上最高の「アルファ156」など、デザインも走りも極限まで洗練されたDセグが対抗モデルとして作られます。

  世界の多くのブランドでDセグが圧倒的に高性能なのは・・・水野さんのおかげなんですね。ただしマークXに関しては全くその流れには乗っておらず、国内専売のまま無菌状態で「培養」されてきました。この開発の過程がクルマ好きからマークXが全く相手にされない決定的な理由なのだと思います。しかし時代は流れてDセグセダンのトレンドは「スポーティ」から「エコ&ラグジュアリー」へと180度変わります。

  ホンダは欧州向けアコードおよび「ユーロR」を廃止し、アキュラ向けの北米ラグジュアリー路線へとシフトさせボデーサイズはEセグ並みに拡大しています。北米の雄ホンダに追従するようにアテンザやスカイラインもボデーが拡大する傾向にありハンドリングのキレはかつての「スポーティ」セダンのような凄みは無くなりました(デカ過ぎ)。そして欧州勢も同様にBMW3erはE46⇒E90⇒F30とメタボの一途を辿り、プジョーも406⇒407⇒508の変遷の中で存在感が一気に無くなってしまいました。もうそっとしておくしかないですね・・・。

  その後も陽の目を見ることもないままに販売が継続されていたマークXですが、8年目にして大胆なフェイスリフトが行われました。このままモデル廃止かと思われましたが、トヨタの優秀なマーケティング部門はこのクルマにまだまだ可能性が残されていると判断したようです。BMWもマツダも新型シャシーを投入した現行モデルでの評判が芳しくない。たまたま「水野さんのトレンド」に乗っかってE46もGGアテンザも売れたけど、現行のF30やGJアテンザは完全に「道」を見失っている。今がチャンス!!といったところでしょうか。

  「BMW318i (409万円)」「アテンザXD・Lパケ (377万円)」「マークX350RDS (385万円)」のステップAT使用の3台を比べると、レザーシートが標準装備でサイズも一回り大きくてキャビンスペースも広々していて、さらに燃費もいいアテンザが最もお買い得に見えます。一方でBMWの売りは最小ボデー&1400kg台の軽量による取り回しの良さ、後席に十分に座れるレイアウトの巧みさ、それから「BMWですよ!!」と主張できるステータス性。これはこれでツボをしっかりと抑えた商品性を持ってますね。そしてマークXは318psの圧倒的な性能と、エンジン起因の静粛性の高さ。BMWやマツダには無い豊富なオプション&パーツ。

  実際に「マークX350RSD」で欲しいオプションを遠慮なく選んで見積もってみたら支払い総額は487万円になりました。レザーシート、ムーンルーフはもちろんで、さらに6wayのサウンドシステム。ウエイティングランプとLED華飾ランプと特別な室内灯。ナビ&リアビューカメラ、ドラレコにETC。さらにトヨタのスゴいところは、フロントシートの背もたれを後ろに倒すとフラットな空間ができる「車内泊」仕様。この装備に関してはトヨタらしいユーザーをよく研究したマーケティングだなーと感心しますね(具体的な使い道には言及しませんけど)。

  いまどき3.5LのV6でハイオク7km/L程度の燃費ではお話にならない!!のはその通りなんですけども、多くの日本市場のセダンがHV化やディーゼル化へ一気に動いてしまった結果、立派な体躯に見合わないほどラゲッジが狭かったり、CVT化によるセダンらしからぬヌルいフィールだったり、ディーゼル音による高級セダンイメージの崩壊など、混乱を極めているといってもいいかもしれません。やっぱり高級車なら6気筒の自然吸気だろ!!と再び回帰を考えるユーザーの前に提示されている価格は日産&レクサス700万円〜、BMW&メルセデス800万円〜という全く売る気がないような設定・・・。

  そんな中でオプション満載でも乗り出し500万円以下で済む3.5L自然吸気のセダンってとても貴重な存在だと思うんですよ。ちょっと前にG'sモデルが発売になるなど、トヨタが考えるスポーティセダンとして新たな商品価値が付加されて、8年目にしてさらに進化しようとしている2代目マークX。高級セダンのFR機構としては断トツで世界最高の静粛性を誇るトヨタの「本質」が手軽な価格で味わえるのも素晴らしいです。レクサスやクラウンで使われる8ATではなくて、スポーティに振った6ATを使い続けるところも好意的に受け止めたいです。覚悟がある方にはぜひオススメしたいクルマです。

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