プジョー308 「欧州COTY・スタイルは没個性・だけど・・・」
「プジョー308」と車名は先代と同じままなのですが、完全なるFMCでプラットフォームもPSA版の「MQB」として話題になっている「EMP2」というPSAのほぼ全車をカバーする新開発のものになりました。「MQB」をさらに上回る140kgの軽量化と報じられているが、先代の1370kgが今回は1090kgという「公称値」を見るとあれ?140kgどころじゃない?気がするのですが・・・。これにはカラクリがあって、日本仕様は1.6Lターボエンジンのみの設定で1370kgですが、今回は1.2Lターボしかも3気筒になってエンジンの軽量化もさらにすすんでいます。さらに日本仕様には快適装備のための電装系が追加されてもっと重くなるので、最終的には1230kgくらいになるのかもしれません。
ちなみに「日本版」VWゴルフの1.2Lターボは最廉価グレード・トレンドラインで1240kgですから、ほぼ同じくらいの水準に落ち着くことになりそうです。これじゃつまらん!と思ってしまいますが、プジョーが仕掛けてきているのは、どうやらエンジンのようです。カタログ数値をみれば一目瞭然なのですが、最大馬力/最大トルクがVWの1.2Lターボと同じ排気量とは思えないほどパワフルです。VWが105ps/175Nmですが、プジョー(PSA)のものは130ps/230Nmとなっています。しかも燃費がゴルフ1.2Lターボが21.0kg/Lなのに対し308は21.7kg/Lとまあ「後だしジャンケン」のメリットをしっかりと生かしています。
この数値を見て「プジョー圧勝!」と喝采したいファンの人も少なくないと思います。馬力差をみると、ちょうど日本におけるトヨタの1.5Lエンジンに対して、パワフルで評価が高いホンダやマツダの1.5Lエンジンのようなポジションを占めているといってもいいかもしれません。もちろんトヨタやVWも境最大規模の量産メーカーとして、一定の品質やコストにおける基準に基づいて生産が行われているので、単純にパフォーマンスだけで比べられるものではないですが、トヨターホンダ・マツダの力関係の欧州版といってもいいかもしれません。
プジョーは「欧州のホンダ」ということになるわけですが、ホンダがトヨタに対して仕掛ける切り口が、そのままプジョーによるVWへの攻勢のポイントになっている類似点としては、「スペック優先主義」が挙げられるでしょうか。ただしホンダユーザーはともかく、フィットによるヴィッツやカローラに対しての「スペック上の優越性」は、トヨタによるHV戦略という厚い壁に阻まれて、一般レベルではほとんど認知されていないのが現状です。去年鳴りもの入りで投入された新型フィットもリコール騒動が収まらず、ホンダが自ら仕掛ける軽自動車の攻勢に対して、普通車シェア回復の起爆剤には成り切れなかった感があります。
「高温多湿」「ストップ&ゴー地獄」で過酷な使用環境として知られる日本。最近は徐々に下がってはいるものの、「90%」という他国では例を見ない高い国産比率の一因は、この環境だと言ってもいいでしょう。「輸入車に乗るヤツはアホ」みたいな意見が当たり前のように語られ、「どうせ私は馬鹿ですから!」と居直るくらいの度胸が無ければ、輸入車オーナーなんてとても務まりません。しかし最近ではホンダもマツダも普通車はほとんどがグローバル車ですから、「ホンダ(マツダ)に乗るヤツはアホ」と言われる時代がいつやってくるともわかりません。もちろん両社には日本で長年クルマを作ってきたノウハウがあるので、かなりの部分でリスクはヘッジできるでしょうが・・・。
トヨタやVWが控えめなスペックでクルマを設計する理由は、おそらく1000万台メーカーとしてのリスク管理が何よりも優先されるからです。必要以上に馬力を出せばエンジンはそれだけ脆弱になるし、燃費を伸ばし過ぎても同じことが言えます。そして何より新設計エンジンの投入には二の足を踏みます。ヤマハに作らせたり、フォードの人員を引っ張ってきてその模倣を行うといった手法が「石橋を叩いて渡る」という社是につながります。ホンダやマツダといった中堅が、この2大メーカーグループを出しぬこうとするとどうなるか? ホンダがトヨタやVWに見せつけるように導入した、「HVのモータートルクでDCTを滑らかに動かして、MTと同じ伝達効率でCVTを上回るという」アイディアには思わぬ落とし穴があったわけです。しかし中堅はリスクを取らなければ未来は・・・ということです。
ちょっと横道それましたが、いまや中堅の上位にまでシェアを下げてしまったPSAにとってもリスクはヘッジすべきか取るべきかの舵取りが難しくなっています。そしてこの新型の「308」もその両方の要素が入ったPSAの苦悩が伝わってくるクルマに仕上がっています。2014年の欧州COTYを圧勝と言える得点差で受賞したことからも、「欧州ブランドの期待の星」として、フォードに圧迫されつつある欧州主要市場で弱体化が指摘されるVWに変わる役割を求められているのがわかります。全世界注目のライバル車・アクセラ、そしてシュコダ版「ゴルフ」であるオクタビアに大差を付けたという事実は、このクルマがただの新型車ではないことが伺えます。
このクルマのポイントは、簡単に言ってしまえば1.2Lターボという効率重視でトヨタやVWよりも踏み込んだ設計でリスクを取ったエンジンを採用しつつ、仮想ライバルであるVWグループのゴルフ・オクタビア・A3が欧州メーカー製DCTを使うところで、日本のアイシンAW製の6速ATを標準で持ち込んでいることです。フェラーリ、ポルシェ、GT-R、ランエボで高性能DCTが相次いで採用されたことで、DCTのイメージは2007年頃に大幅に良くなりましたが、変速ショックが大きいために小排気量エンジンでは耐久性に問題が出るという指摘があります。また20年前に日本やアメリカで急速にトルコン式ATが普及した理由もトルクコンバーターがエンジンへのショックを最大限にいたわってくれるという、隠れたメリットが大きいと言われています。
1.6Lから1.2Lへのさらなるダウンサイジングを果たし、そこにVWとは違うトルコンATを乗せたことは大きな意味があるように思います。欧州の道路環境も都市周辺部では日本と同じで「ストップ&ゴー」とまではいかないほどに「低速区間」が増えたことで、DCTよりもトルコンAT・CVTの優越性がはっきりしていて、そのトレンドを踏み外したVWが伸び悩み、そこを改善したPSAが復権していくのでは?という予感があります。そのためにも「復活の旗印」となるヒット車が必要になるでしょうが、この新型「308」が担っていくかもしれません。
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ちなみに「日本版」VWゴルフの1.2Lターボは最廉価グレード・トレンドラインで1240kgですから、ほぼ同じくらいの水準に落ち着くことになりそうです。これじゃつまらん!と思ってしまいますが、プジョーが仕掛けてきているのは、どうやらエンジンのようです。カタログ数値をみれば一目瞭然なのですが、最大馬力/最大トルクがVWの1.2Lターボと同じ排気量とは思えないほどパワフルです。VWが105ps/175Nmですが、プジョー(PSA)のものは130ps/230Nmとなっています。しかも燃費がゴルフ1.2Lターボが21.0kg/Lなのに対し308は21.7kg/Lとまあ「後だしジャンケン」のメリットをしっかりと生かしています。
この数値を見て「プジョー圧勝!」と喝采したいファンの人も少なくないと思います。馬力差をみると、ちょうど日本におけるトヨタの1.5Lエンジンに対して、パワフルで評価が高いホンダやマツダの1.5Lエンジンのようなポジションを占めているといってもいいかもしれません。もちろんトヨタやVWも境最大規模の量産メーカーとして、一定の品質やコストにおける基準に基づいて生産が行われているので、単純にパフォーマンスだけで比べられるものではないですが、トヨターホンダ・マツダの力関係の欧州版といってもいいかもしれません。
プジョーは「欧州のホンダ」ということになるわけですが、ホンダがトヨタに対して仕掛ける切り口が、そのままプジョーによるVWへの攻勢のポイントになっている類似点としては、「スペック優先主義」が挙げられるでしょうか。ただしホンダユーザーはともかく、フィットによるヴィッツやカローラに対しての「スペック上の優越性」は、トヨタによるHV戦略という厚い壁に阻まれて、一般レベルではほとんど認知されていないのが現状です。去年鳴りもの入りで投入された新型フィットもリコール騒動が収まらず、ホンダが自ら仕掛ける軽自動車の攻勢に対して、普通車シェア回復の起爆剤には成り切れなかった感があります。
「高温多湿」「ストップ&ゴー地獄」で過酷な使用環境として知られる日本。最近は徐々に下がってはいるものの、「90%」という他国では例を見ない高い国産比率の一因は、この環境だと言ってもいいでしょう。「輸入車に乗るヤツはアホ」みたいな意見が当たり前のように語られ、「どうせ私は馬鹿ですから!」と居直るくらいの度胸が無ければ、輸入車オーナーなんてとても務まりません。しかし最近ではホンダもマツダも普通車はほとんどがグローバル車ですから、「ホンダ(マツダ)に乗るヤツはアホ」と言われる時代がいつやってくるともわかりません。もちろん両社には日本で長年クルマを作ってきたノウハウがあるので、かなりの部分でリスクはヘッジできるでしょうが・・・。
トヨタやVWが控えめなスペックでクルマを設計する理由は、おそらく1000万台メーカーとしてのリスク管理が何よりも優先されるからです。必要以上に馬力を出せばエンジンはそれだけ脆弱になるし、燃費を伸ばし過ぎても同じことが言えます。そして何より新設計エンジンの投入には二の足を踏みます。ヤマハに作らせたり、フォードの人員を引っ張ってきてその模倣を行うといった手法が「石橋を叩いて渡る」という社是につながります。ホンダやマツダといった中堅が、この2大メーカーグループを出しぬこうとするとどうなるか? ホンダがトヨタやVWに見せつけるように導入した、「HVのモータートルクでDCTを滑らかに動かして、MTと同じ伝達効率でCVTを上回るという」アイディアには思わぬ落とし穴があったわけです。しかし中堅はリスクを取らなければ未来は・・・ということです。
ちょっと横道それましたが、いまや中堅の上位にまでシェアを下げてしまったPSAにとってもリスクはヘッジすべきか取るべきかの舵取りが難しくなっています。そしてこの新型の「308」もその両方の要素が入ったPSAの苦悩が伝わってくるクルマに仕上がっています。2014年の欧州COTYを圧勝と言える得点差で受賞したことからも、「欧州ブランドの期待の星」として、フォードに圧迫されつつある欧州主要市場で弱体化が指摘されるVWに変わる役割を求められているのがわかります。全世界注目のライバル車・アクセラ、そしてシュコダ版「ゴルフ」であるオクタビアに大差を付けたという事実は、このクルマがただの新型車ではないことが伺えます。
このクルマのポイントは、簡単に言ってしまえば1.2Lターボという効率重視でトヨタやVWよりも踏み込んだ設計でリスクを取ったエンジンを採用しつつ、仮想ライバルであるVWグループのゴルフ・オクタビア・A3が欧州メーカー製DCTを使うところで、日本のアイシンAW製の6速ATを標準で持ち込んでいることです。フェラーリ、ポルシェ、GT-R、ランエボで高性能DCTが相次いで採用されたことで、DCTのイメージは2007年頃に大幅に良くなりましたが、変速ショックが大きいために小排気量エンジンでは耐久性に問題が出るという指摘があります。また20年前に日本やアメリカで急速にトルコン式ATが普及した理由もトルクコンバーターがエンジンへのショックを最大限にいたわってくれるという、隠れたメリットが大きいと言われています。
1.6Lから1.2Lへのさらなるダウンサイジングを果たし、そこにVWとは違うトルコンATを乗せたことは大きな意味があるように思います。欧州の道路環境も都市周辺部では日本と同じで「ストップ&ゴー」とまではいかないほどに「低速区間」が増えたことで、DCTよりもトルコンAT・CVTの優越性がはっきりしていて、そのトレンドを踏み外したVWが伸び悩み、そこを改善したPSAが復権していくのでは?という予感があります。そのためにも「復活の旗印」となるヒット車が必要になるでしょうが、この新型「308」が担っていくかもしれません。
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308HBに興味があります。 ブログの記事がとても参考になりました。
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