2014年11月14日金曜日

ミニ・クーパーS 「残念ですが・・・ただの足し算でしかないです」

  毎度毎度上から目線で恐縮です。BセグのボディにBMW320iの2Lターボを横置きしたら、どんなに楽しいクルマが出来る? クルマ好きならば無条件で支持してしまうほど、ワクワクするコンセプトなのは確かです。しかし冷静に考えてみると、スズキがスイフトにキザシ用の2.4L直4を積んだらどうなるか?と同じことだったりします。スズキに置き換えるとなんだか気乗りがしない・・・なんてことはないですけども、とりあえずスズキには別のことを期待したい次第です。ほんの数年前まで4mそこそこのハッチバックに3.5LのV6エンジンを搭載するという過激なコンセプトのクルマがトヨタから発売されていました。その頃は完全に無視していたくせに、今になってレクサスCTに2.5LのHVを積め!とか言ってる評論家もいたりして・・・人の事は言えませんが無責任極まるクルマ好きが多すぎですね。

  軽さが身上のトヨタやスズキがこんな企画をやるならば、「大丈夫か?」という老婆心が先走ってしまいますが、車重バランスこそを「社是」とするBMWが作るならば、やや過剰気味に期待してしまいます。BMW傘下になって3代目になるミニですが、これまでの1.6Lを使った設計から全面的に見直しを図りました。世界的にも成功例が少ない1.6Lの直4エンジンを遂に放棄し、別に日本の税制に配慮したわけではないでしょうが、1.5L(直3)と2L(直4)の二本立て組み替えてきました。ちなみにベースモデルの「ワン」には1.2L(直3)が使われています。そこで遂に実現したのが、4mに満たないミニの極小ボディにBMW320iの2Lターボを横置きにしたモデルです。BMW本体でも聖域無きダウンサイジングの嵐が吹き荒れるなかで「クーパーS」に関しては、1.6Lターボから2Lターボへ排気量が格上げされました。おーこれは乗るしかない!と思い立ちミニディーラーにお邪魔してきました。

  これまでもミニの個性的なデザインや、なかなかツボを押えた内装などには興味はあったのですが、例の1.6Lターボエンジンに対しての評価(燃費悪い・ウルサイ・パワー不足)が極めて低かったので、失礼ですが全く眼中には全くないクルマでした。そんな失礼極まる口上は決して営業マンにぶつけたりはしないですが、とりあえず「2Lが出たので来ました!」くらいはアピールしておきました。ミニの営業マンからしてみたら、そんなことはまだまだ言われ慣れてない様子で、「はあ・・・そうですか」といまいち要領を得ていない受け答えでした。「他に検討されているクルマはありますか?」と訊かれたので、「ゴルフGTIです!」と間髪入れずに返答すると、どういう切り口でクーパーSの優越性を語るか楽しみでしたが、デザインについて「ミニはオシャレで、ゴルフは汎用」といった当たり前の説明が・・・。まだまだ販売の現場は「ミニ&2Lターボ」が巻き起こしつつある反響に追いつけていないようです。

  マツダがデミオで目一杯勝負していることからも分りますが、BMWにとってもミニでしっかりと競争力を確保するのはグループ全体にとっての至上命題のはずです。巨大なVWグループの尖兵となっているアウディからは、VWポロ・ベースのアウディA1を戦略モデルと位置づけて、いよいよラインアップの大幅な増強が待ったなしで行われる見通しです。BMWはドイツ本国でアウディにあっさりと追い抜かれるという屈辱を味わっていて、VWグループに対しての警戒心はどのメーカーよりも高いはずです。アウディがすすめる「コンパクトカー&ラグジュアリー」戦略に対し、BMWとしては全力で妨害しようとしている意気込みを、今回のミニのFMCからひしひしと感じられます。

  インパネの真ん中に大径のアナログ速度計を配した、先代までの独特のインテリアを支持するファンも多いようですが、クーパーSではその部分にナビが標準装備で収まっています。BMWと同じく、コンソールに据え付けられたクオリティの高い入力装置を使うタイプのナビが使われています。このナビシステムはBMWが常々誇っている優良な機能美のイメージを最も見事に体現していて、メルセデスやレクサスのものよりもかなり使い易くできています。余談ですが"マツコネ"と同次元の幼稚さを誇るアウディの純正ナビなど全く相手になりません。スマホの方が使えるとか言われるほどに、情けない純正ナビが高級ブランドにも溢れているようですが、クーパーS標準ナビはコンパクトカーに装備されるものとしては最強だと思われます。内装に関しては先代よりも空間をトータルでデザインしていて、ドアトリムやインパネのカーボン調パネルなど存在感あるパーツが各所に散りばめられて、メルセデスAクラスにも負けないくらいの「コンパクトカー&ラグジュアリー」が貫かれています。

  さらにホイールベースの拡大も大きな変更点となっていて、これは最近に追加された5ドアモデルを想定したものと思われがちですが、どうやらFFなのにフロントオーバーハングがほとんどないスタイルにすることで、運転席・助手席の足元スペースが広くとることに腐心したようです。高速道路でも静かな「2Lターボ」、そして使い易い「ナビ」、くつろげる「前席のスペース」と様々な要素が揃ってきました。これはいよいよ街乗りコンパクトカーながらも、長距離ツアラーとしての実力も併せ持つこれまでに無い「スーパーコンパクトカー」の創造をBMWは意図していると思いますが・・・いざ走ってみると残念ながら、あっさりと期待を裏切ってしまう「粗」が見えてしまいました。

  さてクーパーS試乗ですが、私と連れと営業マンの3人が乗ってもターボ不要なほどに余裕のある2Lエンジンは、エコ走行を強要する「グリーンモード」でも発進加速にストレスが無いほどです。どこまで回してもヘタることなく、同じエンジンの3シリーズよりも200kgも軽い1270kgに加えて、FFらしい食い付くトラクションもダイレクト感があってとても良いです。なるほど!ここまでFFで仕上がったならば「2シリーズ・アクティブツアラー」もかなり期待できそうです。しかし・・・ふと我に返ります。こんな平穏無事なドライブフィールを求めてわざわざミニ・ディーラーにやってきたのではなく、BMWのノウハウを全て注ぎ込んだスポーティな乗り味こそがこの「クーパーS」の本当の価値ではないか・・・。全開のアクセルでも笑顔でステアリングを操作できるような"地を這う"走りができるはず。

  ということで信号を一つ超えた所ですぐに「スポーツモード」に切り替えて、見通しの良い直線でアクセルオン!・・・繰り返しますが直線区間です。当然にハッキリと向上したアクセルフィールが機敏に反応して、小振りな車体がピリっと動きます。ところが加速が始まって2~3秒程度で早くも足元から、キュルキュルとホイールスピンの音が・・・。いくらBMWでも物理的限界は超えられないことはよくわかっていますが、こちらも予想外なほどに無策だったのには驚きです。ステアリングを切った状態からの発進時ならまだしも、直線でスピードにのったタイミングで発生するなんて、改造車もどきのヴィッツ・ターボみたいです。高速道路での使用を推奨するようなコンセプトのクルマがこんな作りでいいのか?というBMWグループの姿勢に疑問が残りました。そういえば日本に導入された2シリーズアクティブツアラーは2Lモデルは全てAWDになってましたね。BMW本体では絶対に起こってはいけないことなのだと思います。

  
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