インプレッサXVハイブリッド 「クラウンHVより燃費悪いが・・・」

  アウトランダーPHEVという画期的なAWDのHV車が昨年に颯爽と登場し、業績不振に喘ぐ三菱に久しぶりに明るいニュースとなりました。三菱に負けじとライバルのスバルもよりスタイリッシュな都会型SUVに仕上げたインプレッサXVを発売しました。ゲリラ豪雨に豪雪が毎シーズン到来し、夏も冬もAWD車の必要性をひしひしと感じる日本の現状を考えるとどちらも画期的なクルマといえます。

  インプレッサXVは現行インプレッサが大々的に打ち出した「サイバー・デザイン」が、「都会的SUV」のデザインと相性が良い?ようで、新型車種にしてはかなり解りやすい仕上がりになっているようです。単体で見るとなかなか評価が分かれるデザインです。スバル+"やや"ポップというイメージを急に展開されても、ブランドイメージがすぐに変わるわけはなく、今は過渡期の真っ最中なのかなという気がします。

  クルマに「ポップさ」を求めることは、デザインに於いては良く有る話なのですが、こと賛否両論ある中でいつも全力で「スバルらしさ」を発揮してきたスバルが、唐突にややポップなデザインを出してくるとやはり戸惑ってしまいます。それでもスバル初のポップ・デザインは予想外にレベルが高く、初代日産マーチやVWビートル、BMWミニほど拘ったキャラ設定こそしていませんが、同じ都市型SUVのヒット商品である日産ジュークのデザインと比較すれば圧倒的に支持されるくらいの完成度はあります。

  サイバー・デザインと言えば、最近のメルセデスベンツもスバルと争うかのように積極的に取り入れている感があります。他社と比べて直線的なヘッドライトとグリルデザインで近未来的な乗り物デザインを志向している意図を強く感じます。ただ直線的なデザインは「色気がない」や「子供っぽい」といったネガティブな要素も醸し出すので、高度なデザインワークが要求されます。メルセデスの盟友である日産はこれとは逆に「曲線が複雑に絡み合う意匠」をフーガやスカイラインで多用し過ぎて、どこか締まりのない表情やサイドラインにやや混迷を感じたりもします。直線or曲線で方向性を決めてしまうのは、今後成長が望めない気もします(今後傑作デザインが登場する可能性もありますが・・・)。またメルセデスとスバルがデザイン的に近似する点も増えてきた結果、ややメルセデスの格調が失われたという意見も聞こえてきます。

  表題にクラウンHVより燃費が悪いと書きましたが、これは歴然たる事実です。ほぼすべての速度帯、走行条件に於いて数字が下回っています。2WDのクラウンHVは後輪動力源をエンジンとその互換機能としてモーターを設置し、出力特性に応じて絶妙にバランスミックスして使うことで燃費を向上させます。これに対し4WDのインプレッサはモーターをエンジンのアシストつまり「スーパーチャージャー」的に使っているので、大きく燃費は伸びません。EV発進がデフォルトのトヨタ車に対し、スバルHVは始動時はエンジン発進をします。もちろん一旦停止からはEV発進するようですが、一番の売りはEV発進ではなくエンジンの加速能力をモーターアシストで高めた時のスポーティな発進における燃費の良さです。瞬間的に3km/L程度に落ちる強烈な加速を、回生ブレーキを使ったモーターアシストに頼ることで軽減しています。スバルにとって見たらDITに変わる新しいエコ・モーター・チャージャーとでも言うべき機能です。

  いろいろ調べてみると、かなりスポーティなHVというスバルの予告通りのクルマになっているのですが、スバルの宣伝が完全にブレブレになっていることがやや残念です。一般的な印象としてもインプレッサXVハイブリッドが、WRXが積んでいるDITエンジンに比肩するパワーユニットだとは夢にも思いません。もちろんEJ20DITや最新鋭のFA20DITといったカリカリのスポーツエンジンともだいぶ距離があるのは確かなのですが、トヨタアクアとWRXのどちらに近いかと言えばWRXにやや近い!となら宣言しても問題ない立ち位置だと言えます。

  ホンダがこのクルマを作ったならば鬼の首を獲ったかのように、「スポーティHV完成!」と大々的にプロモーションすると思いますが、スバルにとっての「スポーツ」とはとてもじゃないがこんなレベルではない!とでも言いたそうな意地を感じます。それ故に他のブランドではもっとチヤホヤされていいくらいのクルマなのですが、スバル車である限りはなかなか扱いが地味なようです。まだまだスバルの開発の中枢部は「ロングストローク+ターボなんて子供だましのクソだ・・・」とでも考えているのでしょうか? スバルに言わせればBMWやメルセデスの現行モデルのほぼすべてが・・・!? やっぱりスバルはいいですね!
  

  ↓WRXは世界に誇る改造乗用車ですが、このXVハイブリッドも存在意義をもっとPRして良いのではと思ってしまいます。


  

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