2013年5月2日木曜日

ゴルフⅦ 「さまよえる合理性の極地」 その2

  VWは2000年代に看板車の「ゴルフ」を巧みな戦略で、欧州と東アジアの大ヒット車として「ブランド」を確立することに成功した。前回も書いたがゴルフⅣとゴルフⅤを同時に生産する戦術(ノックダウン生産)を駆使して「Cセグハッチバック」の主役となった。トヨタもグローバル戦略(円高のリスクヘッジのため)の一環として、ノックダウン生産を行っているが、それはあくまで新型が販売されていない市場に向けてのものだ。VWの戦術は同じ市場に旧型と新型を投入させるという、より「戦略的」なものだ。ちょっとメリットが分かりづらいが、例えるならトヨタが「新型クラウン」を発売していて、同時にダイハツが「先代クラウン」を車名を変えて売っているようなものだ。新型モデルで思い切った設計をする際にはなかなか有効な作戦かもしれない。

  この細やかな戦術はVWの営業利益に大きく貢献し、世界的な経済危機に見舞われてもプラス収支に踏みとどまる原動力となった。実はこのVWと同じような戦略を駆使してプラス収支を維持しているのが「ホンダ」だ。ホンダは北米ではCセグではシビックが最大のシェアを持っていて、VWゴルフをまったく寄せ付けない強さを発揮している。さらにシビックは欧州市場でも主要国で軒並みゴルフに迫るシェアを獲得している。ホンダとVWが黒字のまま推移しているのは、主力Cセグが世界中の市場で最も安定した収益を稼ぎやすいという分析もあるようで、MBやBMWといったプレミアムブランドも参入してきて激戦区になってきている。ゴルフⅦもシビックもこの市場で存在感を維持できるかは定かではない。

  ただ一つ言えることは、ゴルフにしろシビックにしろ「できる限りコストを削減」し「できる限り高級に見える努力をする」という相反する二つのことを追求してきたことだ。よって場合によってはMCよりもさらに細かいタイミングで設計変更が行われているようだ。シビックはしばしばコストダウンがバレバレで「作り直し」なんていう事態が発生している。どちらも上級ブランドのアキュラとアウディに同じ設計のクルマを用意しているので、「差別化」という別の要求にも応えなければならない。Cセグメントは当然ながら、Bセグより「高級な走り」が要求され、同時にDセグより「経済的」なクルマでなければならない。隣接するセグメントの車種も考えるとライバルは無数にいる。その中から選ばれるためには「ブランド」化を強力に推進する必要があるので、結局はコストがかかることになる。開発の現場ではそれこそ「綱渡り」のような心境だと思われる。

  「ブランディング」に関してはVWとホンダはやや距離があるように思う。技術屋のホンダは「開発こそがブランディング」と考えているようだ。v-tecなどのエンジン技術を中心に優位性をアピールしてファンを獲得している。それに対してVWは「カーメディア」を徹底的に利用しているように思う。ゴルフを語るジャーナリストの口調にはしばしば「強烈な違和感」を感じることがある。複数のメディアでゴルフに対し一言一句違わない「形容」が使われるのを度々目にする。先代のゴルフⅥは「世界のベンチマーク」とバカの一つ覚えのように書かれていた。新型のゴルフⅦでは「クラウンの乗り心地」と盛んに言われている。おそらく新手の広告手法で、その言葉を言ったり書いたりすれば、報酬が発生する仕組みなのかな?という気がする。

  どちらもクルマに詳しくない人々を誘導する「意味不明」な言葉だ。ゴルフは世界最大の北米市場ではそれほど目立ったクルマではないから「世界のベンチマーク」ではないし、「クラウンの乗り心地」と言われてもいわゆるゼロクラウンの前後ではクラウンの乗り心地はだいぶ違うので、どのクラウンを指しているのかも不明だ。そんなことは当然承知の上で、そこそこ有名なジャーナリストが「確信犯」的に使っている。彼らに本音で言わせれば「ヴィッツ以上でオーリス未満の乗り味」それ以外の何者でもないといったところなはずだ。シビックはv-tecファンが買って行くが、ゴルフはメディア戦術でクルマに疎い人を惹き付ける手法だ。そんな手法が通用するのは残念ながら日本だけかもしれないが・・・。

  

  
↓「ヴィッツ以上でオーリス未満」が的確な表現だと思います。新型オーリスはやはりというか欧州で売れています。
  

0 件のコメント:

コメントを投稿