2014年2月20日木曜日

スカイラインHV 「日産の飛躍・・・このクルマで主導権を!」

  日産が上級グレードに搭載しているVQ37DE。一般的な仕様ではNA3.7Lで333psを絞り出す世界最強のV6NAエンジンで、日産はこれを車重1500kgのフェアレディから3000kgの救急車に至るまで採用している(救急車の燃費が気になる)。スカイライン、フーガ、シーマ、三菱にOEMしている分、エルグランドでの需要をかき集めても日本ではまったく採算が取れるレベルのエンジンではないのだが、このエンジンこそが北米で日本車技術の象徴として讃えられているのだとか・・・ちょっと皮肉だ。

  日産はいよいよ日本国内でもV37スカイライン(インフィニティQ50)の発売を始めたが、それに先立ち作られたCMの謳い文句がスゴい。
「なぜ?ありきたりなプレミアムカーを選ぶのか?みんなが乗るから。定番だから。そんなプレミアムはもうたくさんだ。日産が世界で培ってきた圧倒的技術力が、今解き放たれる。」
商品の宣伝の基本は「ストーリー性」であり「共感力」なわけですが、いや〜素晴らしいキャッチコピーですな。自動車産業に対して感じているある種の不信感を当事者として堂々と認めた上で、このクルマはスゴいんだ!と訴えかけるメッセージに思わず惹き込まれてしまう。

  余計なお世話かもしれないが、このCMを見ていて気になることがある。世界の自動車技術は日進月歩で、最近では自動ブレーキや追従クルーズコントロールが当たり前になり、まもなく自動運転も可能になるようだが、このCMで日産が訴えている「技術力」とはそういうものではない。このことが一般の視聴者に正確に伝わっているかが気になって仕方がない。自動運転はともかく自動ブレーキはまもなく全てのメーカーの全ての車種で採用されるであろうタイプの技術だ。瞬く間に広まったATやABSといった技術と同じといってもいい。

  このCMで日産が主張する「技術力」は、他のメーカーにも広まりスタンダードになることが想像しにくいものだ。他の多くのメーカーが採用を前提に真剣に研究しないような技術をことごとく実用化し、一度に複数詰め込んで新型車を作ってしまったわけだ。これは自動車産業においては近年まれな歴史的事件だ。繰り返しになるが、今回スカイラインに盛り込まれた新技術のほとんどが、すぐに他社が真似できるレベルのものではなく、おそらく追従しようとするメーカーは皆無だと思われる。

  日産がこのクルマでブレイクスルーを目指そうとする意思はとてもよく分かるし、成功する保証もない中でこれだけのクルマを発売し、世に問うという姿勢は贔屓目なしにポルシェやマクラーレンといった世界最高レベルのスペシャリティカーブランドくらい価値がある事だと思う。しかもこれだけのクルマが450万円で買える。この価格は絶対に失敗できないという開発陣の薄氷を踏む想いの現れだろうが・・・。

  トヨタがのほほんと作っているレクサスLS600hという1000万円を軽く超える超高級車があるが、この新型スカイラインの基本スペックはベースグレードでもLS600hの水準に近い。400ps近い最大出力と世界最高レベルの高剛性ボディ。LS600hを初め世界の高級セダンの主流になったAWD。それによる燃費悪化を十分に補うHV。燃費こそ10km/Lをいくらか超える程度かもしれないが、実用域でこれだけあれば十分。従来の3.7Lスカイラインの6~7km/Lと比較すれば10万キロ走行時点でなんと100万円の燃費削減につながる。先代の3.7Lと比べて50万円の価格差があるが、たとえ電池交換(15万円くらいらしい)があったとしても10万キロ使い倒せば確実に元が取れる。

  それでもこのクルマのスゴさと実用性の高さをしっかりアピールできなければ、450万円という決して安くはない金額なので思いのほか売れないかもしれない。しかもこのクルマには先端技術を使い過ぎたことで、従来の高級車とはまた違った乗り味になっているので、よっぽど保守的な人はBMW320dを選ぶという可能性も否定できないのだ。なんといっても他社が真似しない技術が満載のスカイラインである。

  レクサスやホンダの高級車に使われるようになった4輪操舵(4WS)も、ハンドリング性能の向上がそのままドライビングフィールの向上につながらなかったという苦い過去をスカイラインは持っている。それでも車重があるクルマに限界を超えた旋回性能を与えるために今回も採用されている。さらにHVによるさらなる重量増加によるハンドリングの鈍りを補うために、標準装備でステアバイワイアという全く新しい技術を取り入れてきた。どうやらこれもまた「官能性」とは違う方向に響く可能性が高い難物らしい。

  4WSとステアバイワイアに対して好意的な人にとっては、このクルマは理想的だろう。そして450万円に抑えた価格設定にもGT-R開発で日産が培った「コスト管理」というすばらしい技術の賜物なのだろう。10年前に発売されたVQ35DEエンジンの改良型VQ37DEエンジンは日本市場との相性の悪さで、このまま北米専用エンジンになってしまうかと思われた。

  しかしGT-R用のVH38DEとともに、現在の日産を象徴するこのエンジンをぜひ日本でも載せたいという「エゴ」から全てが始まり、日産の持てる力を全て投入してこのエンジンの活路を切り開いた恰好だ。これが新型エンジンを開発して積むとなるととても450万円では収まらなかったであろうし、もし新型エンジンで650万円くらいで発売して全く売れなかったら・・・その時は日産の高級車開発の息の根が止まってしまっただろう。いやはやこのアイディア満載の素晴らしいクルマが成功することを心から祈っている。

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