スズキ・イグニス 「このクルマは全国区になれるか?」
手頃な価格のコンパクトカーを出せば、とりあえずそこそこは売れる!・・・なんてそんなに甘い時代はとっくに過ぎ去ったようで、国内メーカーから出されているコンパクトカー(Bセグ)でよく知られたモデルは、どれもとても良く企画が練られた力作ぞろいになっています。代表的なモデルを挙げると、ヴィッツ、パッソ、アクア、フィット、ノート、デミオ、スイフトといった面々ですが、どれも「世界屈指の名車」と断言してもいいくらいに粒ぞろいです。
意外に知られていないことですが、日産ノート以外はいずれもグローバル車となっていてそれぞれに欧州や米国で非常に高い評価を得ています。またノートにしても欧州で人気のルノー・クリオ(ルーテシア)と共通の設計で、「直3」エンジンを日本向けに静粛性の高い「直4」に換装するなどなかなか手の込んだ逸品です(パッソはダイハツ・シリオンとして欧州で販売)。フィットやアクアはアメリカ市場で勝負する「メジャーリーガー」です。デミオ、スイフトはドイツ市場での評価が高い欧州テイスト車です(なのでカーメディアに受けがいい)。
これだけの陣容ですから、まさに鉄壁を誇っていて、輸入車に対してはあまりにも「脅威」すぎる強さです。そういえば、10年くらい前には「もはやBセグは日本で作っても儲からない!」と、経営コンサルタントだか経済アナリストだかが、まるでMBAの教科書に載っている「常識」かのように語っていましたが、Bセグも軽(Aセグ)もいまだに立派に「国内生産」が商売になっているんですよね。彼らの意見に乗っかるように海外組み立て車として導入された三菱ミラージュと日産マーチですが、こちらは価格の割に全然売れてないようです。タイ生産車でもちゃんと自動ブレーキだって装備されているわけですが・・・。三菱、日産の現場を無視した大卒・官僚主義を、トヨタ・ホンダ・スズキ・マツダの高卒叩き上げが撃破する!!!これこそが「ものづくり」ってやつですね。
高級車と違ってコンパクトカーには誰でも見てわかりやすい付加価値が少ないです(盛り込みにくいです)。限られた製造原価に抑えることを考えれば、不必要な豪華装備はことごとくオプションへと回されますし、オプションを目一杯積み込んでもせいぜい250万円以内に収まるようにしないと、コンパクトカーとしての価値は無くなります。その中でユーザーに選んでもらう為に何をすべきか? 例えば欧州市場で一般に見られる売り方が、WRCに参戦するといった「ストーリーの構築」です。日本でもランエボ、インプがWRCをきっかけに世界的な人気を獲得しましたが、今ではWRCはBセグ車で競われる時代になりました。VW、シトロエン、ヒュンダイなど欧州で生き残りをかけるブランドが相次いで参戦していますが、トヨタもヤリス(ヴィッツ)で2017年から参戦する意向だそうです。
実際のところWRCの注目度が低い日本市場では参戦をPRしたところで、大きな期待はできないでしょう。・・・ゆえに日本でコンパクトカーを売るには、
①地道に快適なクルマへと育てる。
②ブレイクスルーを起こす。
③CMで人気のタレントを使う。
これらを手を抜かずにやり続ける必要があります。
①で成功している事例として挙げられるのが、スズキ・スイフトでしょうか。クラス最良のドライビング・ファン、そして小排気量でも妥協なく回る優秀なエンジン・・・小型車の巨人・スズキらしい傑作車だと思います。
②に当てはまるのが、HV搭載&グッドデザインで大ブレークした「トヨタ・アクア」と、Bセグにディーゼルという掟破り&グッドデザインで大きな話題となった「マツダ・デミオ」です。
③の例としては、嵐の二宮君を最初から使い続けている日産ノートがとても上手くやっていると思います。あとタレントは出てこないですけど、ホンダ・フィットのCMは非常にメッセージ性が強くて、クルマ好きは思わず心が掴まれてしまいますね。個人的にかなり好きです。
さて今回新たにこのクラス(厳密に言うとAセグですが)に追加された「スズキ・イグニス」は、果たして日本市場に定着して根を張ることができるでしょうか? 全車マイルドハイブリッドを搭載していて最も下のグレードの2WD車は28km/Lを実現。高効率Vテック&CVTで燃費スペシャルとなっているフィットの非HVが26km/Lなことを考えるとかなりの水準にあります。もちろんアクアやフィットHVは35km/L以上といった水準で争っているわけですが、「イグニス」の素晴らしい点は、マイルドハイブリッドを搭載しても尚、フィット(非HV)やヴィッツと同じくらいの価格を実現しているところです。140万円クラスのコンパクトカーではもっとも優秀な燃費と言えます。
これだけでも本来ならば、立派なブレイクスルーになると思うのですが、残念ながら「イグニス」には、アクアやデミオのように一目見た瞬間から「これは売れそうだ!」といったデザイン面での好感触がやや希薄です。おそらくこのクルマを見た人の多くが、旧共産圏で売る予定のクルマをそのまま日本に持ってきたのでは?という印象を持つのではないでしょうか。スズキの意図としては80年代の古き良き日本の小型車に見られたデザインを随所に取り入れたと思われますが、フロントは最新の流行に合わせつつも、リアのデザインは・・・斜め後ろから見ると1981年発売のスバル・レックスあるいは同時代のキャロルやスターレットに似たクラシカルな風情。なんだかぎこちないデザインに感じるのは私だけでしょうか? ・・・このクルマの売れ行きに注目したいと思います。
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「最新投稿まとめブログ」
意外に知られていないことですが、日産ノート以外はいずれもグローバル車となっていてそれぞれに欧州や米国で非常に高い評価を得ています。またノートにしても欧州で人気のルノー・クリオ(ルーテシア)と共通の設計で、「直3」エンジンを日本向けに静粛性の高い「直4」に換装するなどなかなか手の込んだ逸品です(パッソはダイハツ・シリオンとして欧州で販売)。フィットやアクアはアメリカ市場で勝負する「メジャーリーガー」です。デミオ、スイフトはドイツ市場での評価が高い欧州テイスト車です(なのでカーメディアに受けがいい)。
これだけの陣容ですから、まさに鉄壁を誇っていて、輸入車に対してはあまりにも「脅威」すぎる強さです。そういえば、10年くらい前には「もはやBセグは日本で作っても儲からない!」と、経営コンサルタントだか経済アナリストだかが、まるでMBAの教科書に載っている「常識」かのように語っていましたが、Bセグも軽(Aセグ)もいまだに立派に「国内生産」が商売になっているんですよね。彼らの意見に乗っかるように海外組み立て車として導入された三菱ミラージュと日産マーチですが、こちらは価格の割に全然売れてないようです。タイ生産車でもちゃんと自動ブレーキだって装備されているわけですが・・・。三菱、日産の現場を無視した大卒・官僚主義を、トヨタ・ホンダ・スズキ・マツダの高卒叩き上げが撃破する!!!これこそが「ものづくり」ってやつですね。
高級車と違ってコンパクトカーには誰でも見てわかりやすい付加価値が少ないです(盛り込みにくいです)。限られた製造原価に抑えることを考えれば、不必要な豪華装備はことごとくオプションへと回されますし、オプションを目一杯積み込んでもせいぜい250万円以内に収まるようにしないと、コンパクトカーとしての価値は無くなります。その中でユーザーに選んでもらう為に何をすべきか? 例えば欧州市場で一般に見られる売り方が、WRCに参戦するといった「ストーリーの構築」です。日本でもランエボ、インプがWRCをきっかけに世界的な人気を獲得しましたが、今ではWRCはBセグ車で競われる時代になりました。VW、シトロエン、ヒュンダイなど欧州で生き残りをかけるブランドが相次いで参戦していますが、トヨタもヤリス(ヴィッツ)で2017年から参戦する意向だそうです。
実際のところWRCの注目度が低い日本市場では参戦をPRしたところで、大きな期待はできないでしょう。・・・ゆえに日本でコンパクトカーを売るには、
①地道に快適なクルマへと育てる。
②ブレイクスルーを起こす。
③CMで人気のタレントを使う。
これらを手を抜かずにやり続ける必要があります。
①で成功している事例として挙げられるのが、スズキ・スイフトでしょうか。クラス最良のドライビング・ファン、そして小排気量でも妥協なく回る優秀なエンジン・・・小型車の巨人・スズキらしい傑作車だと思います。
②に当てはまるのが、HV搭載&グッドデザインで大ブレークした「トヨタ・アクア」と、Bセグにディーゼルという掟破り&グッドデザインで大きな話題となった「マツダ・デミオ」です。
③の例としては、嵐の二宮君を最初から使い続けている日産ノートがとても上手くやっていると思います。あとタレントは出てこないですけど、ホンダ・フィットのCMは非常にメッセージ性が強くて、クルマ好きは思わず心が掴まれてしまいますね。個人的にかなり好きです。
さて今回新たにこのクラス(厳密に言うとAセグですが)に追加された「スズキ・イグニス」は、果たして日本市場に定着して根を張ることができるでしょうか? 全車マイルドハイブリッドを搭載していて最も下のグレードの2WD車は28km/Lを実現。高効率Vテック&CVTで燃費スペシャルとなっているフィットの非HVが26km/Lなことを考えるとかなりの水準にあります。もちろんアクアやフィットHVは35km/L以上といった水準で争っているわけですが、「イグニス」の素晴らしい点は、マイルドハイブリッドを搭載しても尚、フィット(非HV)やヴィッツと同じくらいの価格を実現しているところです。140万円クラスのコンパクトカーではもっとも優秀な燃費と言えます。
これだけでも本来ならば、立派なブレイクスルーになると思うのですが、残念ながら「イグニス」には、アクアやデミオのように一目見た瞬間から「これは売れそうだ!」といったデザイン面での好感触がやや希薄です。おそらくこのクルマを見た人の多くが、旧共産圏で売る予定のクルマをそのまま日本に持ってきたのでは?という印象を持つのではないでしょうか。スズキの意図としては80年代の古き良き日本の小型車に見られたデザインを随所に取り入れたと思われますが、フロントは最新の流行に合わせつつも、リアのデザインは・・・斜め後ろから見ると1981年発売のスバル・レックスあるいは同時代のキャロルやスターレットに似たクラシカルな風情。なんだかぎこちないデザインに感じるのは私だけでしょうか? ・・・このクルマの売れ行きに注目したいと思います。
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イグニス、確かにフロントデザインは似たデザインを見ないので魅力がありますが、サイド~リアデザインを見ると少し安っぽいというか魅力が薄い気がします。
返信削除あとインパネのボタンを写真で見るからにも古くささを感じました。
http://www.suzuki.co.jp/car/ignis/interior/
しかし、車はデザインだけでは無いので売れ行きはどうなるでしょうかね。
コメントありがとうございます
削除確かに後ろななめ45度からの雰囲気は「古き良き80年代」ですね。
ここがスズキの狙いみたいで、
新型アルトがかなり上手くいったということで二匹目の・・・。
「ハイブリッドにアイサイトのOEM版が付いて、
シートヒーターも標準で100万円台」
ここまでくるとどこでコストダウンしているの?
と怖くなったりもしますけどね・・・。
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返信削除素晴らしく良い車だと思いますよ。
返信削除もう今でも町中でも結構見かけます。
やたら旧い感じとおっしゃいますが、これも日本車デザインの正当進化の一つ、素晴らしいと思いますよ。
スバルやマツダみたいに単純にデザインを統一するのではなく、違うアプローチから、これも日本車デザインだと思える良い仕上がりだと思います。
往年の名車が現代の名車として復活したと思っても良いと思いますよ。
スズキさんは高品質とコストパフォーマンスを両立する先駆けですし試乗しても品質に全く問題無いと感じます。
フロントリア全て格好良いと思いますよ。
アメ車のシボレーのカマロなどのマッスルカーやポニーカーのロマンが数十年と続いている感覚に近い感じに思います。
後、私はこのブログシリーズも好きですよ。
当方は他の記事でも、このブログが必要だとコメントしている者です。
ロードスターの記事でもコメントしたと言えばお分かりいただけると思います。
これからも愛読させていただきます。
コメントありがとうございます。
削除古臭いからダメというわけではないのですが、
スズキが「狙い」過ぎた結果が裏目に出たのでは?
そんな気がします。
フロントとリアのバランスがやや極端で、
コンパクトなクルマだからこそ、
中村史郎デザインのような、
あるいは歴代アウディTTのような、
デザインを車体全体で主張するものであってほしかったです。
もしかしたら私の感覚が麻痺している可能性も大いにありますけど。
拙いブログを褒めて頂きまして、とても励みになります!
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