BMW330e 「ここぞとばかり・・・勝負かけてきた。PHVが540万円!」

  3シリーズに従来からあるハイブリッドといえば・・・「アクティブ・ハイブリッド3」。直6「ターボ」にマイルドハイブリッド=「電動ターボ」を組み合わせた重厚なユニットを積んでいて、いわば「ツイン・チャージャー」でトルクを切れ目無くスムーズに搾り出す仕掛けなんですが、せいぜい1800kg程度のボデーには無過給でも十分な「直6」ですから、変に加速で力むこともないのでそんなギミックは不要ではありますが・・・モータートルクは強烈で直線だけなら相当な速さを持つ3シリーズのスペシャルグレードです。ただし740万円〜という価格帯のせいか販売は伸び悩んでいたようです

  BMWの戦略は、直4ガソリンターボの過給器調整グレードで、3シリーズのボトムを形成し、欧州や日本での販売の主体は直4ディーゼルターボで受け持ち、さらに上位グレード車として直6ガソリンターボ&HVを用意するといった多層グレード構成が基本線にあったようですが・・・。BMWの屋台骨を担っている3シリーズの地位が低下と言わないまでも、予想以上に反響が乏しいようで、ディーゼルとともに日本でF30系を発売してまだ4年ですが、これまでのところ先代のE90系を越えるセールスは日本では見られていません(このままG系に移っていくのか?)。

  マツダのディーゼル導入が日本で予想以上に上手くいったのも、おそらくBMWとのシンクロによる影響が大きいと思っています。マツダは先代のアテンザにもディーゼルを積んで欧州のみで販売していました。未導入の日本でこそあまり知られてないですが、すでにその時点でCクラスや3シリーズを確実に上回る良質なディーゼルユニットが出来ていたそうです。「日本でディーゼルを売るのは不可能」と思われていた矢先に、ユーロ6(排ガス規制)に対応したディーゼルエンジンでBMW320dが日本で話題になると、・・・会社存亡の危機に立っていた2012年当時のマツダは藁にもすがる想いで「アテンザXD」の日本発売を決めたと思われます。

  BMWにとっては非常に好調なセールス(歴代最高)だったE90を受け継ぐF30を、無難に日本で成功させるための自慢のディーゼルだったはずですが、結果的にはマツダの露払いを務める損な役回りとなってしまいました。ディーゼルが失速し、HVの国・日本に満を持して持ち込んだ「アクティブハイブリッド3」がこれまたさっぱり売れずで、F30は全く踏んだり蹴ったりな出だしでした・・・。さらに想定外だったのが、日本メーカーがDセグセダンで再び勝負を仕掛けてきたことです。先述のアテンザに加えて、レクサスIS、スカイライン、レクサスRCとかなりの「意欲作」のリリースが続きました。

  400万円で320dよりもずっと静かなディーゼル・・・、500万円でアクティブHV3よりもトルクフルで強烈な加速の6気筒HV・・・(量販車HV最速をアピール!!!)。モード燃費で20km/Lを越えてしまう直4ストロングハイブリッド。日本メーカーが想定外の動きだった(日本メーカーをナメていた)部分もあるかもしれないですが、BMWとF30系にとっては屈辱の4年間・・・それ以外のなにものでもなかったでしょう。いまではすっかり「M3って何?」と言われてしまうくらいに話題性が低い(M3も見かけても全く興奮しないクルマになっちゃいました・・・)。

  ディーゼルに運命を委ねたアテンザや、HV専用へと舵を切ったスカイライン(200tは別のクルマ)、まさかのCVTになったレクサスIS/RC300hなどなど、日本メーカーが取った道もまたクルマ好きにとっては決して手放しで褒められるものではないのですが、それでもセダン/クーペが絶望的だった日本市場へと「一蓮托生」の想い?で完成させたそれぞれのモデルは・・・F30系よりもずっとずっとユーザーへ向いたものだった!と思います。一方でE90の好調な販売で手綱がゆるんでいた3シリーズは「売ろう!」というひたむきさがやや足りなかったように思います。決して悪いクルマではないですけど、先代の売れ行きが好調すぎたことによる難しさはあったはずです。

  「完全にひっくり返された」・・・BMWジャパンがそう気がつくのには十分な4年間だったと思います。レクサスIS300hの本体価格が499万円。これに対して同等のスペックを誇り、プラグイン機能も追加されたBMW330eが554万円。レクサスISの売れ線グレードとほぼ同等と言っていいくらいのシビアな価格設定がBMWの必死さを物語っています。確かに4年前も320dが予想外に安くて人気になりました。なので4年前にBMWが驕っていたということはないですが、市場環境の変化(日本メーカーの頑張り)に巻き込まれてあっさりと「チャラ」になりました。今回の330eの価格設定は、4年前の320dのスマッシュヒットの再現を狙っているのだと思います。

  さて冒頭の「ツインチャージャー」の話に戻りますが、330eの搭載ユニット直4ターボ&ストロングハイブリッドという構成になりました。レクサスISが直4ターボと直4ハイブリッドといずれもシングル・チャージャーなのに対して、BMWはターボと電動のツインチャージャーですからユニットに関してはそれなりのコストがかかっているはずです(なのでお買い得)。最新のDセグセダンは、後席のスペースを保証する設計が多く、以前よりも5人乗車が苦痛でもないです。一人で走るときと5人乗車時では200kg前後の車重差ができます。

  このときにシングルチャージャーの低回転型エンジンだとやや問題が起こります。1500回転で最大トルクが発生・・・なんて中身の無い文句に釣られるとエラいことになるんです。ホンダやマツダの自然吸気エンジンならば5500rpmまで一気に回るし、トラクションに有利なFFという利点も生かせるのですが、昨今の低回転ターボに多段式ATだと渋々3000rpmまで回るものの、間髪入れずにシフトアップしていくのでどうしても非力でドタバタな感じが出てしまいます。CVTで後から暴力的な加速へと切り替わっていくスバルのターボと、ひたすらにエンジンを回す気がないBMWやレクサスの2Lターボ、正直言うとどちらも余韻のある「高級車エンジン」としてはやや失格だと思います。

  そんな直4ターボで2.5トンの巨体を動かそうとしているのが「ボルボXC90」です。ボルボが開発した新型ユニットは2Lガソリンエンジンに、スーパーチャージャーとターボによる「ツインチャージャー」を仕込み、さらに上級モデルではHV化してモーターによる「電動ターボ」を重ねた「トリプルチャージャー」としています。エンジンの回転数に関わらずにモータートルクで余裕の低速域走行の実現が狙いですね(そうであってほしい!)。

  BMWのPHVユニットがこのボルボのユニットに何らかの影響を受けているのかわかりませんが、BMWもボルボもPHVシステム自体を「政策によって押し付けられた義務」としてではなく、トヨタや三菱のように脅威のモード燃費を誇るためでもなく、「直4ガソリンターボ」は高級車エンジンとして成立するのか?という自らを見つめる「疑問」への解決策として導入・研究していると思うのです。

  つまりボルボやBMWが今後日本でも拡販を目指すであろうPHVとは・・・、トヨタのカムリ、クラウン、IS、GS、RC用の直4のHVと、かなり違う意味を持つクルマであって、HVで主導権を握っていたように見えた日本メーカーへ「捲土重来」を期すカウンターパンチのようなユニットだった!・・・この両者に乗ったときにそう確信できるような出来映えだったならば、その時はコストを掛けて日本のプレミアムカーよりも手頃な価格を実現した彼らの努力を最大限に賞賛したいと思います!!!


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