ホンダ・インサイト EX-BLACKは362万円

本気のサルーン復活論!!
本体価格350万円といえば、アテンザ25S・Lパケ、カムリG/WSのほか、BMWやメルセデスのDセグメントの実勢価格がこの辺に集中する。プリウスの『Aプレミアム』が320万円だから、それ以上にハッキリと車格や高級感が主張できるサルーンモデルに許された価格帯。ホンダが打倒プリウスに送り込んできたインサイトEX(上級グレード)が324万円で、まさにターゲットとガチンコ。さらにレザーに専用インテリア、専用ホイール、外装のクローム仕上げを施して「本気」を見せたEX-BLACK・STYLEが362万円。黙ってこれ一択!?これはとても妙味があるサルーンが登場してきた。


欧州車を蹴散らすだろうな・・・
ライバルはプリウスだけでなく、メルセデスCLA(404万円〜)、アウディA3セダン(314万円〜)、新型プジョー508(417万円〜)など射程圏内にはお買い得に見える欧州車モデルがひしめいているのだけど、輸入車に乗る見栄っ張りな人々(決して見栄を張ることは悪いとは思いません!!)をあまり前のめりにはさせない「おとなしい」モデルが多い。プジョーよりもアウディやメルセデスの方が安いってのもちょっとよくわからない。新型3シリーズ発売を目前に控えるBMWにとっては、非常に厄介なクルマかも。ホンダってのがメンドーだ。



日本で売れるミドルサルーンの条件
とりあえず新車から10年くらいは「上質なまま」で乗り続けられるモデルが好まれる。先代プリウスが大ブレークしてミドルサルーン市場には暗雲が立ち込め続けているけども、輸入ブランドが絶対ではない!!という認識も広がりつつあり、日本市場のトレンドはかなり変わってきている。10年くらいは余裕で乗り続けられる「メンテナンスコスト」。それからどんな場所でも気軽に出かけていける「サイズ感」。そして同じ10年をずっと一定の「ステータス」を保ち続けるだけの「品格」が揃っていれば、そこそこファンは増えるようだ。


売れたサルーンの特徴
この3つの条件を満たした具体的な成功例としては「プリウス」「レヴォーグ」「シビック」「Cクラス」「CLA」などが挙げられる。逆に「サイズ感」で敬遠されたのが「ティアナ」「アテンザ」。価格面でやや折り合わなかったのが「スカイライン」「アコード」あるいは「プリウスPHV」。そしてやや「品格」不足だったのが「プジョー508(現行)」「WRX」「マークX」「インプレッサ」「アクセラ」「ジェイド」といったところか。


セダン/ワゴンを売るのは難しい
もちろんクルマへの考え方や価値観は人それぞれ違うのだけども、日本市場で300万円前後かそれ以上の価格帯の3BOXサルーン/ワゴンの売れ行きを客観的に判断すると、「コスト」(価格/経済性)、「サイズ感」、「ステータス」の3項目での大まかな『ストライクゾーン』が見えてくる。何かと話題を振りまいているMAZDAは実際のところはSUV以外ではとことんスベり倒しているし(Lパケはそこそこ売れた)、長期的なシェア拡大で好調が伝えられるフランス勢もシビアなこの市場では全く足跡を残せていない。


完全に狙っている!!
362万円でフル装備の最上級グレード『インサイトEX-BLACK・STYLE』はこの3つのフィルターを、マーケティング段階で相当に意識してきたように思う。まさにど真ん中を一点突破することだけに集中している。兄弟車のシビックがそこそこの成功を納めているけども、インテリアの質感と経済性、そしてホンダ自慢の2モーターi-MMDがもたらす静粛性の分だけ、本体価格がアップしているがむしろ割安感すらあるし、エクステリアデザインもシビックとは別路線のコンサバで落ち着いたものになったことにも好感が持てる。


4ドアクーペ(カリーナEDスタイル)でホンダが頭角!?
スタイルがとてもいい。アウディA5スポーツバックやBMW4シリーズグランクーペとほぼ同等のサイズ感。こんな4ドアクーペが国内メーカーからも出て来ないかな!?若干ミーハーな感じもするけどそんな意識高い系ユーザーをターゲットにすべく、インテリア、エクステリア共に素材にこだわった作り込みがされているようだ。CR-Vやアコードのように北米で巨大なセールスを持っていて、ついでに日本にも投入されている類のホンダ車とは全くアプローチが違っていて、ヴェゼル、フリード、N-BOXといったモデルでその能力を遺憾なく発揮しているホンダのマーケティング能力の高さを示すサルーンモデルに成長すると思う。


欠点はないのか!?
気になる点(欠点?)は・・・結構たくさんある。スタイルが七難隠す!?じゃないかもしれないけど、冷静に考えればEX-BLACK・STYLEの362万円は、とりあえずアテンザ25S・Lパケ(354万円)よりも高い。4700mm以下でサルーンを探している人にとってはどーでもいいことだけど。アテンザLパケはフロントシートはレザー/パワーシート/ヒーターは当然で、さらに『ベンチレーター』まで付いている。リアシートにも『ヒーター』とバックウインドーには『サンシェード』が付く。マツダのコスパが良すぎるだけなんだけども。


HVの欠点もある
ただし10km/Lがやっとの2.5L自然吸気ガソリンに対して市街地でも17〜20km/Lくらいは出せるであろうi-MMDのインサイトの魅力は大きい。アコードはモーターのトルク感でゆとりの走りを演出していたけども、ユニットにパワーがあるCVTは割とトルコンATの乗り味に近い。乗り味に関しては心配はないのだけども、アコードHVは長距離ドライバーにとってはあまり嬉しくない瑕疵を抱えていた。アテンザなどのエンジン車はだいたい90km/h前後の定速走行に燃費の目玉がやってくるが、i-MMDを使うアコードHVの燃費は60km/h前後でベストを計測する。つまり高速道路での移動に関してはマツダのガソリン&ディーゼルモデルに遅れをとる可能性が高い。


まだ不確定な要素が・・・
やはり乗ってから決めるべきではあると思う。1.5Lユニットはどのようなマナーを持っているのか検分。あるいはサルーンに欠かせない静粛性だったり、ホンダの低床設計ゆえにカリーナEDスタイルもお手の物ではあるだろうけども、実際の居住性となるといかばかりか!?せっかくのパワーシートが存分に使えない!?あるいはドイツ車のように無理なルーフ下げで、ドライビングポジションが非常に取りづらい可能性もある。12月13日に正式に発売予定とのこと・・・1度は乗ってみたいな。


「小型車の理想形 アウディA3セダン と ホンダ・グレイス」



ホンダスタイル2月号

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