MAZDA・CX-5 (2025年7月・新型公開)
スバル・フォレスターが人気で焦った!?
MAZDAが欧州市場向けの新型CX-5を発表した。CX-60、70、80、90の新型4車種を一括企画で開発して順次投入して以来のMAZDAの自社開発の新型モデルということで、注目度は非常に高い。新型フォレスターが2023年11月に北米市場向けで発表された時は、日本ではカーメディアやYouTubeがこぞって紹介することはほとんどなかったのとは対照的である。注目度が高く動画で再生回数が多く稼げるMAZDAの新型車ということで、自動車系ユーチューバーにとっては追い風が吹いている!?
海外発表時はほとんど取り上げられなかったスバル・フォレスターであったが、1年半経過して日本発売となり、本体価格も大きく400万円越えしたにも関わらず日本市場でスマッシュヒットを遂げた。先代フォレスターは地味ながらもモデル末期になって海外市場での人気でリセールが急騰したり、海外メディアの「ムース・テスト」で好成績 (ポルシェ・マカンを圧倒) を収めたこともあって、コアなユーザーからの熱い支持を得ているようだ。さらに「ミドルSUV=高級車」という価値観の変化もあって幅広い年代から受注を得ているようだ。
ディーゼル廃止
すでにわかっていたことだけども、新型CX-5では2.2Lディーゼルエンジンが採用されない。欧州の排ガス規制に合わせるため、すでに欧州向けMAZDA3、CX-30も「2.5L・MHEV」への換装が完了している。今回発表された欧州向けにも同じユニットが搭載される。2.5L自然吸気を141hpにデチューンさせている。CX-60ほかの大型4モデルでは、新設計のシャシー、エンジン、ミッションが一度に投入され、MAZDAの「革新」モデルであったが、今回はシャシー、エンジン、ミッションは既存のもので、MAZDAの「伝統」「コンサバ」なモデルである。
2015年のNDロードスターでは、初代NA(1989年)への回帰を宣言したり、現在もロータリー駆動のスポーツカーの復活をほのめかすMAZDAは、トヨタや日産など他の日本メーカーとは逆のベクトルを持つ稀有なブランドだ。BMW、ポルシェ、フェラーリなど、ファンから「原点回帰」を求める声が上がる欧州の名門ブランドに近い存在だと言える。CX-60の登場よりも、CX-5の「コンサバ」なFMCの方にワクワクしてしまうMAZDAファンは結構多いのではないだろうか!?
全長&ホイールベース伸びる
現行CX-5と比較して、全長が115mm延長されることが発表されている。延長分は全てホイールベースに当てられているようで、ホイールベースも2700mmから2815mmに拡大されるが、これは北米工場(アラバマ州)で既に生産されているCX-50のものと一致する。この延長により後席の居住性の大幅な向上がアピールされていて、車内のシートピッチや後席まで広がるサンルーフの配置もCX-50と同じだ。ストロングHEV導入時にショーファーカー向けグレードも登場するかもしれない (MAZDAといえばドライバーズカーだけど)。
一方で懸念されるのは、2700mmの現行はミドルSUVで随一のハンドリング性能を誇り、ホイールベースの中間に前席が配置される「中乗り」設計だが、これらがことごとく失われる可能性があることだ。現行CX-5は「ハンドリング」「GT性能」を追求した万能型ドライバーズSUVとして大ヒットしたが、その後にホイールベースが2655mmでハンドリングの良いCX-30と、直6でGTの世界感を突き詰めたCX-60が登場して、ユーザーの嗜好に細かく対応している。新型CX-5が前後4人乗車を楽しむカーライフ志向するのもいいのかもしれない。
インテリア
エクステリアはキープコンセプトのまま、レイアウトはCX-50のものを移管した。一番大きな変更点が盛り込まれているのがインテリアデザインだけども、ステアリングは真円形状で、シフトノブもスティックタイプとままで、「コンサバ」なユーザーに訴求できるFMCを目指したのだろう。シート形状も既視感があるし、センターコンソール周辺はシフト、電気式サイドブレーキだけのシンプルな構造になった。オルガンペダルのアクセルや、パドルシフトなどの操作系インターフェースは、素晴らしいことに全く変わらないようだ。
エアコンの物理スイッチ廃止がちょっと物議を醸している。現行CX-5のオートエアコンの車内温度は比較的に安定していて、エアコンスイッチを操作する頻度は多くない。24度でデフォにしてあり、毎回の乗車時に設定する必要もない。MAZDA2・15MBはマニュアルエアコンなので、しばしばツマミを回して風量と冷暖を管理する。CX-5にはマニュアルエアコンのグレードなどないので、エアコンに関しては問題ない。ガラスの曇りに関しても、CX-5のフロント面は合わせガラスが採用されていて、10年以上前のクルマのようにすぐに見えなくなるくらい曇るなんてことは起きない。
ストロングハイブリッド
発売前から2027年に自社開発のストロングハイブリッドを導入すると発表されている。一足先にスバルがトヨタのTHSを導入しているが、クロストレック、フォレスターのモード燃費は18.4〜18.9km/Lだ。2013年の3代目アクセラでTHSを採用した実績があり、その際に回生ブレーキのフィールを劇的に向上させ、トヨタに決定的な技術力の違いを見せつけた結果、現在のアライアンスに至っている。AWD比較だとハリアーは21.6km/Lなので、いきなり自社開発でこれを越えてくるとは考えにくい。
国交省の指標は2030年にメーカー平均燃費25km/L以上となっている。今後のMAZDAのボトムを形成するCX-5、CX-30、MAZDA3にとって主力ユニットとなる「2.5LスカイZハイブリッド」なので、トヨタのTHSを燃費で上回るような特大ブレイクスルーを狙っている可能性もある。老婆心ながら、あまりに数字を追いかけるばかりに、耐久性の問題だったり、インチキ(モラルハザード)をしたりなんてことがないことを祈りたい。
CX-60の方が安い!?
現行の2.5Lエンジン(PY-RPS型)のMHEVで登場する初期モデルの価格は、現行CX-5(PY-RPSの非電動)だとスポーツ・アピアランスのみで、FF358万円、AWD381万円と比べて、同等かやや手頃な価格からのスタートになりそうだ。全グレードが400万円越えのフォレスターが売れているので、300万円台の後半スタートでも十分に勝負になるという判断もあり得る。CX-60の2.5L(PV-RPS)がFR324万円、AWD349万円なので、CX-5の客がこちらに流れる。
ストロングハイブリッドに関しては、2027年のMAZDAの経営状態によって多少は価格が変化するだろうけど、フォレスター(全車AWD)が420万円、CX-60のディーゼルだとFRが412万円、AWDが435万円なので、この辺の価格帯に落ち着くことになりそうだ。ただし2030年までにMAZDAは全車電動化を掲げているので、CX-60のディーゼル(MHEV無し)や2.5Lガソリンも、縦置き版の「スカイZハイブリッド」に置き換えられると思われる。
日本発売は2026年4月
ディーラーに入っている情報によると2026年4月に日本で販売開始のようだ。なんで日本市場が後回しなんだ!?という意見もあるだろうけど、現行CX-5は2017年のデビュー以来、毎年ブランドのベストセラーに君臨してきた絶対的エースである。ディーラーの担当者もディーゼルの駆け込み需要の獲得に燃えている。CX-60の直6ディーゼルの方がモード燃費でやや上回っているが、ディーゼル同士を価格で比較すれば、CX-5の方が100万円ほど安い。
今年の後半にはロードスターの2Lモデルの発売も迫っている。こちらのクルマもICEの新車が買えるのが、もしかしたら2027年までの可能性もあり、試乗して良かったら貯金を始めよう!!なんて悠長に構えていられない。リセールでがっつりお釣りが付いてくるだろうから、即日にローンか残クレを使ってでも買うべき案件だ。発売1週間で中古車屋(転売ヤー)が根こそぎ注文して受注停止に追い込まれそうだ。内外の経営環境の変化によってジェットコースターのようなMAZDAの成り行きを今後も見守りたい。
後記
最後までお読みいただきありがとうございます。この投稿は2025年7月16日時点での情報をもとに記述しています。今後とも日本市場で展開する自動車メーカーについて思うところを綴っていきたいと思います。
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