トヨタ・アクア (2025年9月・大規模MC)



 

幸せなBセグ・カーライフ

休みの日に奥多摩や秩父周辺をドライブしていると、パワースポットを求めてだろうか、「練馬」「世田谷」「品川」「横浜」の「わ」ナンバーを多数見かける。若者が2〜3人で連れ立って乗ってくる定番のレンタカーはノートe-POWERとアクアが2大勢力のようだ。三峯神社、日原鍾乳洞などの首都圏の山間部に位置する名所へのアクセス道路は、対向車を処理する技術が必要な隘路もあるので、都心から往復200km近い行程を考えると燃費の良いコンパクトカーは向いている。


20歳そこそこの頃は、いつでも体調万全でパワースポットの霊言を感じることはなかった。しかし慢性的な病気と体力低下に悩まされる年になってみると、趣味として興じるサイクリングで得られる全能感と、ウイスキーと美食による解脱感とともに、ドライブ&パワースポットは仕事に疲れてモチベーションが低下した時の癒しの時間としてはコスト的にも手軽を実感している。奥多摩や秩父は有料道路なしの下道で行けるのも良い。



セグメント消滅の危機!?

アクアの最軽量グレードが1120kg、同じくノートが1230kgで、高速道路での安全性を考えると1200kg以上の車重が好ましいのでノートに適性がありそうだが、e-POWERの高速燃費が非常に悪いのが玉に瑕だ。ヤリス、フィット、MAZDA2、スイフトも揃って1200kgを下回る車重なので、軽自動車ほどではないが、Bセグの高速巡航はオススメできない。


初代アクアは「プリウスC」として投入されていたが、近年はBセグ車は北米市場で販売されなくなっている。東南アジアや南米などもBセグのSUVが急速に進んでいて、道路事情が良い日本と欧州に向けた設計になっている。たとえトヨタであってもヤリス、アクアの次期モデル以降の継続には慎重にならざるを得ない。経済基盤のある国なので、価格と性能のバランスが取れたモデルなら、そこそこ安定した売り上げは見込める。



大ヒット車の後継はツラい

初代アクアの大ヒットは13年ほど前だったが、現行(2代目)になってから売り上げは伸び悩んでいる。2012年から5年連続で国内20万台超えを達成したが、現在は7〜8万台程度に落ち着いている。そんな中で2代目アクアは、先日のビッグマイナーチェンジで、214万円だったボトム価格が、一気に248万円まで上昇した。初代と比べて売れなかったため、予定していた利益率を調整してきたのかもしれない。


先代モデルはコンパクトカーのデザインとしては傑作の部類に入るもので、デビューからのスマッシュヒットも納得である。しかし2代目アクアでは、コンパクトカーの本場である欧州のデザインを意識し過ぎた感があり、往年のイタリア車、フランス車の大衆モデルにありがちな全体のバランスが整っていない感じが出てしまっていた。デザインの好みは人それぞれではあるが、個人的にはレンタカーで乗るには良いけど、所有するクルマとしては敬遠したい。



トヨタの修正力

2021年の発売当初のモード燃費30km / L級のHEVが214万円はトヨタらしい魅力的な価格設定だ。しかし50万円ほど安い非HEVのヤリス、スイフト、MAZDA2の20km / Lでも十分な燃費ではある。さらに自動車税が大幅に優遇されている軽自動車もあるので、地方のクルマ社会で生活する高齢ユーザーにとっては、2代目アクアは負担感があって選びにくいのだろう。この10年で初代とは販売環境が大きく変わっている。


市場の変化を察知してすぐに方針を切り替える柔軟性がトヨタの強みなのだろう。5代目プリウスに寄せたデザインに変わり、前面はまるで別のクルマになった。エンジン車時代のデザインからBEV時代のデザインにアップデートされたが、米国市場に再投入されるのかもしれない。日本市場では248万円(Xグレード)への価格上昇によって、227万円のカローラ(Xグレード・HEV)と価格が逆転している。



クルマ好きのためのアクア!?

ヤリスとカローラの「ベーシックカー・ラインナップ」に対して、アクアとプリウスは「スペシャルティカー・ラインナップ」となっていて、様々な顧客ニーズに応えたいのだろう。なるべく安く250万円以下に抑えたい人もいれば、周囲に「このサイズで400万円以上もしたよ〜」と言いたい人もいるわけだ。


SUV全盛の時代になって久しいが、ロードカーだけでこれだけの車種を揃えるトヨタの真似は、日産、ホンダ、MAZDA、スバルには到底無理だ。ヤリスとプリウスは国際標準モデルだが、アクアは現状では日本市場メインであり、カローラは日本市場専用ボデーを採用している。ロードカーで走る喜びを追求するユーザー向けに「GRスポーツ」グレードが設定され所有欲を満たせる。


不可逆的な進化

初代アクアが登場した頃、デミオ、スイフト、ヴィッツ、フィットは100万円そこそこの価格で売られていた。非HEV車であっても18km/Lくらいのモード燃費を叩き出していたBセグにHEVを搭載する意味はないのだけど、国内生産車の販売価格を200万円以上に押し上げたいメーカー側の理屈によって強行された。フィットHEV、ノートe-POWER、デミオXDがオーバースペックのBセグ車として後に続いた。


追従できない三菱自動車はコルトを諦め、逆輸入のミラージュを導入したがほとんど売れなかった。スズキ・スイフトも大きく販売を落とし、スイフトスポーツが主体となるモデルに変わってしまった。付加価値を付けたBセグ車が、引退世代(団塊世代)のニーズにうまくマッチした。これを先導したトヨタのマーケティングはやはり日本でトップなのだろう。



トヨタ VS 日産 勝負の現場

Bセグ車のレベルが上がってしまった現状から、再び2010年の100万円そこそこの「必要十分」なBセグへの回帰も可能だが、トヨタ・ヤリス(2021年欧州COTY受賞)が抑えてしまっている。トルコのルノー工場で生産される三菱コルト(1.6L、1.0Lターボ&6AT、6MTなど)が日本に導入されても良さそうだけど、あくまでMT好きの意見に過ぎない。


世界のどこよりもハイスペックな日本のBセグ市場は、MCされた2代目アクアから、更なるスペシャルティカー路線を進むのかもしれない。ディーゼルを放棄したMAZDA2は、BEV化して出直すことになりそうだ。日産ノートオーラ、アクア、GRヤリス (ATが追加された) によるハイエンドBセグ競争は、次の10年でどんな局面を迎えていくのだろう。この3台をみる限りBセグ車の魅力が上がっていることは間違いない。



後記

最後までお読みいただきありがとうございます。この投稿は2025年10月22日時点での情報をもとに記述しています。今後とも日本市場で展開する自動車メーカーについて思うところを綴っていきたいと思います。



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