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フォード・マスタング 「スカクーを上回るコスパは大歓迎!」

  言うまでもなく「フォード・マスタング」は、初登場から50周年を数えるアメリカを代表する伝統モデルの「マッスルカー」です。本国では北米ビッグ3を中心に「5L・V8」くらいのやたらとデカいエンジンを搭載した「男らしい」ビッグクーペが人気のようで、いよいよアメリカがナンバー1の産油国になったこともあり、業績が改善している北米メーカーでは大排気量モデルの開発がすすんでいるようです。もちろんこれらマスタング、カマロ、ダッジ・チャレンジャーなどは、日本よりガソリン価格が相当に安いアメリカ限定のクルマに過ぎず、日本ではマニア向けに細々と正規販売が続けられている程度でした。

  このブログでは、日本で楽しめるであろうクルマばかりを選んで掲載するというポリシーだったので、これらのクルマはほとんど話題にも挙げませんでした。特大サイズの車体で、しかも5Lの「ガス喰い」をオススメです!と絶賛したところで「誰得?」って感じです。しかしこのマスタングもいよいよ欧州でも発売することになり、詳細を見てみると「日本でも十分に使える」クルマに生まれ変わりました。昨今では日本車もドイツ車もスタイル優先で車幅が1800mmを大きく超えるようになりましたので、マスタングのようなアメリカンサイズもそれほど気にならないです。日本の道路も日々改良が進んでいますし、そもそもアマゾンなどのネット通販を担っている「いすゞエルフ」(幅1920mm)があちこちの細い道路に入っていきますから、最初からサイズはそれほど問題ではなかったかもしれません。

  今回のフルモデルチェンジは、マスタングの本質を大きく変えるもの!だとして賛否両論巻き起こっていますが、とりあえず「内外装の高級化」「4気筒エンジン」「右ハンドル」という大きな「3本の柱」によって、とても日本で乗りやすい(所有しやすい)クルマになったと思います。裏を返せば先代マスタングの価格に魅力を感じていた人々が手を出さなかった理由のほとんどがこの3つだったのではないでしょうか? もちろん中には「左ハンドル」に憧れを持つ人もいるでしょうけど、失礼ですがもはやそれは80年代90年代に生きた人々の価値観であって、現代においては「右ハンドルが無い」=たいして魅力がないクルマと同意義になっています。1億円以上する僅少生産のオーダーメイド車でもハンドル位置を選べる時代です。日本・イギリス・豪州以外にも南ア・タイ・シンガポールなど右ハンドル国の購買力は無視できない時代です。

  輸入車でも小型車となると車幅が十分ではなく右ハンドル化で大きな問題が生じることがあるようです。フランスの小型車(プジョー208、シトロエンC3)などはハンドルの軸がシートの中心からかなりズレていたりするケースもあるので、左ハンドルを指名買いすることの意義は否定しません。某ドイツプレミアムブランドの最下級モデルの日本販売では右ハンドルのみに制限されますが、これが難物でシートとハンドルの取り付け位置に若干角度が付いていて、わずかながら外側に向かって座らされているように感じます。なんじゃこりゃ?完全に日本をナメているのでしょうか?ちょっとイラっとしますが、これはもう黙ってスルーするしかないですね。小型ハッチバックなのにFRという設計に少々無理があったのでしょうか? やっぱり輸入車のハッチバックから選ぶならば、ベストセラーのゴルフがいいと思います。右ハンドル車でも全くといっていいほどに運転環境に違和感はありません。まあ日本車では当たり前のことですけどね。

  マスタングの右ハンドル車は年内にも発売されるようですが、まだまだ映像でも見た事がないですので全く具合は判りません。実際にどれくらい違和感が出て来るのでしょうか? しかしフォードが右ハンドルで導入している小型モデルのフォーカスとフィエスタもゴルフの右ハンドルに匹敵するくらいに運転環境で全く不満はないので、プロペラシャフトの関係でFRの設計はなかなか難しいとはいえマスタングのサイズならば、よっぽど雑な仕事でも無い限りは上手く作ってくれるのではないかと思います。

  外装デザインに関してはいろいろ意見があるようで、ネットの掲示板などでも相当に叩かれていて、中には「これはアメ車ではない!日本車だ!」みたいな激しい原理主義者の声も聞かれます。アテンザ、スカイライン、レガシィとそれらに影響を与えたであろう「和田アウディ」のようなクールで端正なデザインにまとめられ、たしかに美しさこそありますが、従来の奔放で日本の道路では完全に浮いてしまうようなマスタングらしい過激な個性はやや弱まりました。日本に正規輸入されていないフォードの主力セダン・フュージョン(欧州名モンデオ)に準じたルックスで、フュージョンの2ドアクーペ版といった位置づけといってもいいかもしれません。セダンはFF、クーペはFRという作り分けはユーザー的には歓迎ですけどね。

  マスタングのデザインの元となったと思われる4ドアセダン「フュージョン」は、現行モデルが3年前に北米で発売されてすぐにデザイン面での進歩が絶賛され、北米カーオブザイヤーでもトップ3に選ばれました。そしてその後の北米市場での活躍は目覚ましいものがあり、カムリ、アコード、アルティマの3台合計で月間10万台以上を売り上げていた日本車勢の分厚い壁を見事に打ち破り、3台それぞれから5000~7000台程度のシェアを奪って「4強」の構図に持ち込みました。北米雑誌の中でも、「フュージョン」「マツダ6(アテンザ)」の2台のイケメンセダンが新興勢力となってミドルセダン市場が塗り変わるかも?なんて予測がされていました。ちなみにアテンザも北米では絶好調だったレガシィB4を台数ベースで追い抜くなどシェアを伸ばしています。

  フュージョンとマスタングはFFとFRでシャシーが全く違うので、スカイラインとスカイラインクーペのような関係とはちょっと違います。昨今のFFセダンでは静音設計が美徳ですが、FRクーペのマスタングは全く違うキャラクターで、走らせると荒々しさが伝わってきます。エンジンも横置きと縦置きで簡単には共有できないので、走りに関してはほぼ別のクルマです(だと思います)。北米でのフュージョンの人気の秘密にはエンジン・バリエーションもあるそうで、ジャガーランドローバーでも広く(イヴォーグ、XJ、XF、XE)使われているマツダが開発したMZRエンジンの「2.0Lショートストローク直4」(先代ロードスターに使われたもの)に、フォード自慢の「エコブースト」(ターボチャージャー)を組み合わせて240psにしたものと、アトキンソンサイクル(吸排気システム)を付けた自然吸気(141ps)のもの、さらにハイブリッド化したものまで用意されています。

  マスタングにもいろいろエンジンを選ばせてくれても良さそうですが、やはりスポーツクーペらしく、300ps越えのパワフルなエンジンしか使いません!ということのようです。とりあえずベースエンジンはこちらもマツダ製のMZRエンジンをベースとした「2.3Lロングストローク直4」にターボチャージャーを2気筒ごとに装備したツインスクロールターボです。かつてスカイラインGT-Rは直列6気筒のRB26に、3気筒ごとに過給するツインスクロールチャージャーで世界の頂点に立ちましたが、マスタング用の直4の新型ユニットもそれと同じようななかなか手の込んだシステムを使っています。

  最近ではBMWがM3/M4で直6に同様の「ツインスクロール」を採用して431psを捻り出してます。ターボチャージャーを2機使ってコストを掛けることで、ポンピングロス(吸排気時に消費されるエンジンパワー)を合理的に低減させて、どうやら高出力&良好燃費が両立するようです。M3の12.2km/Lは3Lツインターボとしては驚異的です。マスタング用のエンジンもどうやらこの水準を視野に入れていたようで、圧縮比をガソリンターボとしては異例の11.5まで引き上げる予定だったようですが、どうやら9.5に落ち着いたようです(旧マツダのベースがNAで9.7なのでこれでも健闘ですが・・・)。もちろん圧縮比だけでエンジンの性能が決まるわけでもないのですが、技術水準としてドイツ勢(VW、メルセデス、BMW)が軒並み10.0~10.3くらいを出しているので、一気に11.5で抜き去ってほしかったですが・・・。NAのガソリンでもディーゼルターボ(これは逆に下げるのですが)も理想値と言われる14.0を達成しているマツダが、今度作るガソリンターボは一体いくつになる?

  ちょっと横道に逸れましたが、エンジン技術に関してはどうやらBMWのM3/M4の前にまだまだ歯が立たないようですが、マスタングの車両価格はM3の半額以下ですからこれは仕方の無いことだと思います。現実的に同価格帯のライバルで年内に発表される予定の「インフィニティQ60」(スカイラインクーペ)と比較したときに、300ps超のスペックを考えると、このマスタングはいよいよ「快挙」達成したのではないかと思います。日本を代表するラグジュアリークーペが北米価格で買える(コスパ抜群!)ということで、根強いファンを持つ「スカクー」を脅かす存在になったんじゃないですか? 

  いまではネットでいくらでも情報が引き出せますから、雑誌が書かなくても米国のmotor trendのHPを読めばなんでも判ります。そんな情報社会が今回の初回限定350台が1ヶ月でソールドアウトし、200台の追加発売が決まったという異例のスマッシュヒットを可能にしたと思います。マスタングの伝統なんてあまり興味はないけど、先代までのイカツイ外装が一気にスタイリッシュになり、いかにもアメリカの大衆車然としていた内装も、日本のハイソカー(カムリやアコード)と同等かそれ以上の水準まで引き上げられました。

  インパネスイッチなどの先進デザインには好き嫌いがありそうですが、個人的にはとても気に入りましたし、レクサスやBMWのようなインパネを見飽きた人々にとってはとても新鮮に感じます。もし今が買い換えのタイミングで、ゆったり乗れてしかもそれなりに楽しめる3BOXを探していたならば、レクサスもBMWもアウディもスルーしてフォードに行ってしまいたくなる人の気持ちはとても良くわかります。そしてなんといっても実車がもの凄くキレイです!塗装・組み付けの様子を見ればレクサスRCの10倍くらい感動しますよ!

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↓福野礼一郎氏と畑村耕一氏の「2枚看板」のコーナーがどちらも「新型マスタング」のレビューをしています。福野氏はやや辛口で、マツダエンジニアだった畑村氏はマツダエンジンの晴れ舞台に感慨深げです。


  

  

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