2025年6月29日日曜日

アルファロメオ・ジュニアibrida (2025年6月新モデル)

 

美しいクルマ

MAZDA乗りは、大方の予想通りだと思うが、街中で見かける周囲のクルマに対して、少なからず優越感がある。トヨタ、日産、ホンダ、三菱、レクサス、BMW、ボルボのデザインはちょっと理解不能なくらいで、語彙力なく一言で表現するなら「ダサい」でしかない。スバルやスズキは最近デザインが良くなってきているとは思うが、あくまで上から目線である。メルセデス、ポルシェ、アウディなどドイツ車は・・・なんだか中国メーカーっぽく見えてしまう。


デザインにうるさいMAZDA乗りが、街中で出会うとちょっと自信を無くしてしまうのが、アルファロメオだ。現行のジュリアやステルヴィオは登場からかなりの年月が経過しているが、MAZDAデザイン以上に風化しない。それどころか絶版モデルの147、156、159、166、GT、ブレラなど2000年代のデザインは、登場から20年過ぎてもエゲツないオーラを放っている。デザインが良いMAZDA車に乗っているという優越感が、アルファロメオの前では呆気なく失われる。



MAZDAとアルファロメオ

アルファロメオに新型車ジュニアが追加され、大中小の3段階のSUVが揃う。なんだかMAZDAのようなSUV主体のブランドになってきた。日本市場で現行SUVをデザインで妥協せず選ぶならば、ステルヴィオ、CX-60、CX-80、ディフェンダーがラージサイズSUV、トナーレ、CX-5、レンジローバー・イヴォークがミドルSUV、ジュニア、CX-30、CX-3、DS3がスモールSUVの選択肢になる。レクサスRX、LBX、ハリアー、ヴェゼルで十分にカッコいいと満足できる人には反論があるだろうけど、デザインで世界の頂点に立つブランドは隙がない。


2024年に120万台販売したMAZDAと、6万台のアルファロメオでは全く比較にならない気もするが、6万台規模でも欧州、日本、北米、豪州などほぼ全ての主要市場で展開されている。MAZDAと同じでCセグ以上の全モデルを北米市場に投入している。全モデルがイタリア製という本国生産ポリシーが、日本でも北米でも高いクオリティを求めるユーザーに支持されている。さらに北米市場を意識した高性能なモデルがあまりに高額になり過ぎて、2024年の日本市場では前年比で40%も販売台数が減ってしまったところもMAZDAに似ている。



特殊なビジネスモデル

少量生産で存続できるのは、アルファロメオが「メーカー」というよりは、「チューナー」に近いビジネスモデルになっているからだろう。2000年代まではアルファロメオが創業したアレーゼで開発&生産が行われていたが、現在では開発部門はトリノ(フィアット本拠)に移されていて、各モデルの生産はフィアットのイタリア各地の工場で行われている(アレーザ工場は閉鎖)。フィアットが開発・生産を担当するクルマを、「アルファロメオ」として仕上げることに特化していて、光岡自動車、BMWアルピナ、ACシュニッツァー、ブラバスなどのチューナーに近い存在になっている。


縦置きエンジンのジュリアやステルヴィオは、同時期に発売されたマセラティ・ギブリとシャシーが共用され、マセラティにはない直4エンジンは、ジープの2.0L横置き直4ターボ(ハリケーン)と一括で開発されていて、ボア✖︎ストロークのサイズは全く同じになっている。トナーレは横置きとなり、ジープのコンパス、チェロキーに使われる三菱設計のシャシーを使い、イタリア生産で北米向けのダッジ・ホーネットと共通設計だ。日本向けマイルドハイブリッドには1.5Lターボが新開発で搭載されたが、北米市場向けは、ジープと同じ2Lターボ(ハリケーン)に変更になっている。



手頃な価格で良いクルマを作る

フィアット=クライスラーの他ブランドとの共通設計ばかりを使って仕立てられる2015年以降のアルファロメオだけども、経営努力の甲斐もあって、販売台数が多いBMWのライバル車と比べても同程度の価格でより高性能なモデルが選べる設定で、ジュリアの登場から10年に渡って販売を続けるくらいの売り上げは維持してきた。BMWの唯一無二なドライバビリティに対して、アルファロメオは絶対的なサーキットの速さは追求しないけども、ファン・トゥ・ドライブの高まりを感じさせるこだわりはユーザーに広く伝染している。


プジョー=シトロエンやオペルとの合流を果たし、大同団結「ステランティス」が組まれ、アルファロメオの扱うクルマも幅は広がった。アルファロメオは2025年以降の新型車はBEVのみになると発表している。2024年に登場したジュニアibrida がアルファロメオのエンジン車としては最後の企画になるようだ。1.2Lターボ48Vマイルドハイブリッドに6速DCTを組み合わせるユニットと、シャシーはフィアット600Hybrid、ジープ・レネゲード、ランチア・イプシロン(日本未導入)、シトロエンC4と共通のもので、ステランティス全体で「マスゲーム」を仕掛けてきた。



クルマの価値を追求

日本市場のユーザーの感覚だと、日本車とドイツ車の性能や生産技術は、他の地域の追従を許さないというバイアスが捨てられない。ステランティスが一斉に投入した新型ユニットも、トヨタ・ライズやスズキ・クロスビーの小排気量ターボと比べてしまうところがある。もちろん車両価格は約2倍なので、エンジンもモーターも高性能なものになっていて、1300kg級の車重を150ps前後のシステム出力で引っ張るのだから、とりあえずMAZDA3の2Lエンジン級のスペックだと予想できる。


シャシーもプジョー=シトロエン時代に開発されたEMP1を使用していて、マイルドハイブリッドでもBEVでも運用できる汎用性の高いBセグ用シャシーを使っている。ライズやクロスビーの軽自動車向けシャシーでは、車重1600kg級のモデルを仕立てることは難しいだろうが、EMP1派生のe-CMPシャシーで作られるBEVは1600kgを超えるものもすでに登場している。エンジンは1.2L直3ばかりだけど、このシャシーはBEVで本領発揮するらしい。日本には導入されていないが、ジュニアには本命グレードはBEVの240ps版もある。



クラフトマンシップ

ステランティスの各ブランドはそれぞれのテイストで、同じシャシー&パワーユニットのクルマにキャラクターを付けている。見た目が違えば個性というわけではなくて、ユーザーのカーライフにどのように深く切り込むか?をデザイナーが考え抜く過程で、イタリア人、フランス人の価値観が織り込まれていくことで、日本メーカー車とは違う世界観を作り出す。メルセデスやBMWなどのドイツのプレミアムブランドは、内装&機能を他国のサプライヤーに丸投げできるまで車両価格が高騰しているが、日本市場で400万円台の攻防をするジュニアだと自社でやるしかない。


フェラーリ、ランボルギーニ、パガーニなどスーパーカーのイメージが強いイタリア車だけど、イタリア経済の実態はG7で日本と実質賃金ワースト1を争うような「貧乏な先進国」だ。イタリア企業が所有するグレングラント蒸留所(スコットランド)の「アルボラリス」というシングルモルトは、英国、日本、台湾のモルトウイスキーと比べても極めてリーズナブルだし、イリーのエスプレッソ粉も最高の味わいながら日本での正規販売でも格安で手に入る。イタリアと日本はものづくりが上手いばかりにクラフトマンシップが暴走し、価格は安いのに高品質に作ってしまう面がある。消費者にとっては嬉しいことだけど・・・。



日本市場に変革はあるか!?

アルファロメオ初の本国以外の生産(ポーランド生産)となるアルファロメオ・ジュニアだけど、イタリアメーカーらしい「庶民感覚」もあって非常に好感が持てる。2015年のジュリアは価格を抑えた設定ながら、スポーツツアラーとして「唯一無二」の味わいを備えて、日本でもアメリカでも予想以上に売れた。2000年代のモデルのイメージもあって、アルファロメオは価値あるクルマを手頃な価格で買える優れたブランドという一定の評価を得ている。


MAZDAとアルファロメオがクルマ作りをやめてしまったら、趣味でクルマを買う人は激減するのではないかと思う。各メーカーの現行モデルが高齢者向けのクルマばかりになって、若い人が無理してクルマを買いたいとは思わなくなった。「中途半端なクルマなら要らない」という声もよく聞く。トヨタも日産もガソリン撒き散らして走る経済感覚ゼロな高級車しかない。ジュニアibridaのモード燃費は非公表だが、同じ工場で生産される兄弟車は23km/Lを記録している。調べれば調べるほど興味が湧くクルマなので、日本市場の販売回復に貢献すると思う。







Passione Alfa Romeo: 新たな神話 永遠なる情熱

















2025年6月14日土曜日

カローラ クロス (2025年5月MC)

 

トヨタ最強の成長株

日本市場のカローラ・シリーズは、「セダン」、「ツーリング(ワゴン)」、「スポーツ(ハッチバック)」、「クロス(SUV)」のグローバル4車種と5ナンバーの旧モデル国内専用2車種が設定されている。日本では「クロス」7000台 / 月、「ツーリング」3500台/ 月、「セダン」1000台 / 月、「スポーツ」1000台 / 月だそうで、確かにクロスとツーリングを見かける頻度が高い。4車種とも価格競争力は相当に高いけども、セダンやハッチバックは日本では人気がない。


これがアメリカ市場だと「ツーリング」以外の3車種、ドイツ市場だと「セダン」以外の3車種となる。日本の人気とはやや違っていて「スポーツ」と「クロス」の2車種がグローバルではシリーズの核となっている。北米市場では「スポーツ」にはHEVの設定がなく、「セダン」の非HEVモデルとともに、ブランドのボトム価格専用車として販売されているのに対して、「クロス」は2Lガソリン(169ps)と、他のシリーズにはない2LのHEV(196ps)の2ユニットが用意され、カローラシリーズの「主役」だ。



北米と欧州でもシェアを伸ばす

日本市場に「GRスポーツ」として導入されている2LのHEVは、北米市場では「クロス」の全HEVに搭載される。一方ドイツ市場では「スタイル」「ラウンジ」の上級仕様のみで採用される(ベースグレードは1.8LのHEV、非HEVはなし)。「クロス」のHEV車は、北米やドイツでは相互関税の影響もあってか450万円以上の価格で設定されている。日本市場のGRスポーツが389万円なので、まずは北米&ドイツに優先的に割り当てているのだろう。日本と同じく右ハンドルのイギリス市場では、なぜか「クロス」は導入されていない。


今回のビッグMCによってドイツ市場と同じく、日本市場でも全車HEV化が行われた。ガソリン車の廃止で平均単価は上昇し、販売面でも悪影響がありそうだが、「セダン」と「ツーリング」に関しては、すでに国内市場ではライバル不在の状況で、むしろガソリンモデルの割安感によって、トヨタの他のラインナップの価格設定に悪影響が出ていた。クラウンやハリアーなどの上位モデルとの価格差が開き過ぎたので是正したのだろう。



国内ではライバル不在

「スポーツ」のライバル車としては、MAZDA3ファストバックの1.5Lガソリンのお得なパッケージ「iセレクション」が230万円で設定されているが、HEVのカローラスポーツは248万円〜で、MAZDAと異なりトヨタではナビはオプション扱いで15万円ほど余計にかかる。それでも「スポーツ」の販売数は、元々から少ないので大勢に影響なしと考えたのだろう。いくら車格が同じとはいえ1.5Lのガソリン(MAZDA3)と、1.8LのHEV(カローラスポーツ)が同じ土俵というのも無理がある。


日本メーカーの国内向けCセグでは、MAZDA3セダン、インプレッサ、シビックに関しては、カローラとの価格競争はすでに諦めていて、走り・デザイン・質感といったクルマの価値で勝負している。カローラでのカーライフでは全く満足できないユーザーが一定数いて、これらのこだわり(車好き)ユーザーを3車で分け合っている。ワゴンに関しては、カローラツーリングの独壇場になっていて、ホンダもMAZDAもアメリカ市場で売れないワゴンの開発には興味を持てないようだ。



トヨタ VS ホンダ

ライバル不在でトヨタも頑張る必要がない「セダン」「スポーツ」「ツーリング」に対して、「クロス」は、現在の自動車業界の勢力構図に直結する「小型SUV」ということもあり、ホンダ・ヴェゼル、ホンダ・WR-V、MAZDA・CX-30、スバル・クロストレックなど各メーカーが最も勢力的に投資しているモデルとの際どい攻防は避けられない。日本市場で7000台 / 月のカローラクロスではあるが、同じく6000台 / 月のヴェゼルと3500台 / 月のWR-Vで対抗するホンダ勢に対して、やや劣勢という見方もできる。


ヴェゼルが好調に売れ続けているのに加えて、インドからの輸入にも関わらず3500台/ /月を売り上げてしまうWR-Vの大成功は、自動車業界全体に衝撃を与えている。適正価格であるならば、海外からの逆輸入でも十分に勝負ができてしまう。岩手県(トヨタ東日本)から、福岡県(トヨタ九州)まで、組み立て子会社を抱えて、日本の雇用を守ることを社是とするトヨタは、小型SUVの競争でホンダに遅れを取るわけにはいかない。



トヨタの仁義なきマーケティング

ホンダ陣営を切り崩すため、カローラ クロスにだけ特別にフロントマスクの変更などFMC級の大改良が施された。すでに国内生産のヴェゼルは、ボトムグレード(264万円)を除いて、全てHEV化を実現している。HEV比率は95%を超えるようだ。ヴェゼルのHEV最廉価グレードは288万円で、カローラ クロスのHEVは276万円なので、対ヴェゼルに関してはガソリン車を廃止しても大勢に影響はなさそうだ。


新たに投入されたインド生産のWR-Vは1.5L自然吸気(118ps)のみの設定で239万円〜となる。カローラ クロスでこの価格に張り合うのは無理があるので、カローラ ツーリングのHEVのスタート価格を249万円から235万円に引き下げる荒技でWR-Vよりも安い価格を実現している。さらにWR-Vより一回り小振りなボデーになるがヤリスクロスはガソリン車が190万円、HEVが229万円で、販売台数は4000台 / 月で、ユーザーをしっかり取り込んでいる。



利益率の改善

一方でカローラクロスも、賃上げ圧力が強まっている日本での生産を維持するためには単価を上げていく必要がある。生産を担当するトヨタ自動車東日本は、カローラ クロスは、ヤリス、ヤリスクロス、アクア、シエンタなどトヨタのラインナップの価格優位性を請け負う小型車の生産が多い。トヨタの国内生産拠点は他に直営4工場、トヨタ車体、トヨタ九州、ダイハツがあるが、トヨタ東日本とダイハツは利益率の低い車種を押し付けられている。トヨタ東日本にとってはカローラクロスの国内販売によっては、今後の死活問題となる。


元々はASEAN地域への戦略車として開発されたカローラクロスなので、日本とアメリカ以外に、タイ、中国、台湾、マレーシア、パキスタン、南アフリカ、ブラジルなど生産国は多岐に渡る。2021年に日本に導入され、ガソリンモデルは218万円という脅威の低価格で、あっという間に受注停止に追い込まれた。東南アジアからの輸入ではなく、日本生産を軌道に乗せるためのダインピング価格で話題作りを行い、IC不足を理由に3000台 / 月くらいに販売を抑えた。直近の半年ではそれが7000台 / 月となっているからトヨタの世論操縦は上手過ぎる。



ユーザーの囲い込みがエグい!!

HEVのみ276万円となったが、前期モデルのちょっと古くさいデザインは一新され、前期モデルを買った人や生産終了となったC-HRからの買い替え需要を掘り起こすのだろう。トヨタでは3年車検時での乗り換えのリセールはかなり良く、実際に売買した知人に聞いた金額であるが、カローラクロスもカローラツーリングも新車乗り出しから100万円も下がらないらしい。新たに導入された2L・HEVも単純にプリウスの販売不調でユニットが余ったという理由だけでなく、前期からの乗り換えを喚起するのにちょうど良い起爆剤なわけだ。


今時の新車販売は、徹底した理詰めの戦略でユーザーをごっそり獲得していくのだろうけど、カローラクロスの変貌ぶりは、トヨタのマーケティング戦略が他社を圧倒していることが、とてもよくわかる。北米市場では現地生産のカローラクロスの台頭で、日本から輸出していたC-HRとベンザ(ハリアー)の販売が終了した。相互関税の長期化によって、北米生産を行わないハリアーやC-HR(現行はトルコ生産のみ)の存在感は低下し、北米市場でも7万台 / 年を突破したカローラクロスがRAV4に続く第2のSUVとなっている。このクルマはどこまで成長していくのか!?今後の動向に注目したい。












2025年6月11日水曜日

フィアット600Hybrid (2025年6月追加)

 

ハイブリッドモデルの追加

フィアットを代表するモデルと言えば長らく「500(チンクエチェント)」だった。ルパン三世が乗っている戦前モデルのリバイバルとして2007年に登場し、日本でも街中でもよく見かける定番車になった。残念ながら2024年でポーランド工場の生産が終了し、日本向けの販売も終了するとのことだ。そのポーランド工場では代わりにグローバルの市場変化に対応したBEV専用モデルとして誕生したジープ・アベンジャーとフィアット600eの生産が始まり、どちらもすでに日本市場に投入済みだ。


新規のBEVモデルではあるけども、2024年にイタリアの工場で生産が終了したBセグSUVの「500X」の後継モデルの位置付けでもあるため、新たにマイルドハイブリッドで電動化を施した1.2Lターボ搭載の「600Hybrid」が追加された。「500X」は2014年に小型SUVのブームによって登場した。その前身となるモデルも存在していてフィアット・セディチは、スズキのハンガリー工場で生産されるSX4のOEMモデルだった。スズキのOEM車を日本市場には投入できなかったが、FCAのイタリア工場に生産が移管された「500X」と「ジープ・レネゲード」からどちらも日本市場に投入されている。



ステランティス設計

先代の「500X」で使われていたシャシーは、FCAとGMのコラボで設計されているようで、GMの小型車部門はスズキが担当していたことから、SX4(セディチ)の設計がベースになっていると考えられる。セディチには先代のスイフトスポーツで使われていた1.6L自然吸気が搭載されていたが、「500X」ではフィアットの1.4L直4ターボ(2019年から1.3L直4ターボの新開発エンジン)となり、フィアットが得意とする小排気量エンジンを使うモデルとなった。


新たに登場した「600Hybrid」には、1.2L直3ターボが搭載されるが、フィアットの1.2Lは4気筒でNA専用なので、ステランティスのアライアンスを使って調達されたプジョー=シトロエン陣営で広く使われる汎用エンジンが搭載されることになった。プジョー、シトロエン、DSの日本向けモデルは、トヨタ系サプライヤーのアイシンAW製トルコンATを装備するが、「600Hybrid」には供給されておらず、「500X」に引き続きDCTを装備する。



500Xか?600Hybridか?

フィアットの日本法人(CIAOフィアット)では、先代「500X」の生産終了はアナウンスされておらず、販売が続いている。レンタカーにも供給されていて、フリート販売による在庫車が多いのだろう。412〜435万円の設定でキャンバストップの限定車もあり、イタリア生産車という付加価値もあるので興味深い。ボデーサイズはヤリスクロス(ハイエンドで315万円)と同程度だけど、エンジンは151psで、内装デザインはトヨタとはまるで違ったエモーショナルな造形をしている。ノーマルユニットのレクサスLBX(460万円)と比べれば、十分にお買い得だと思う。


「600Hybrid」は前述のようにポーランド生産で、1.2Lの直3に変わったけども、フィアットのマイルドハイブリッドが強力で、システム出力は145psまで上げられている。レクサスLBXに匹敵するような豪華内装で、レザー&運転席パワーシート標準装備となっている上級パッケージ(ラ・プリマ)だけども、ローンチ限定価格399万円で、かなり「弱気」な価格設定だ。発売から10年が経過する「500X」は4気筒でインテリアもエンジン車っぽい計器やスイッチが目立つ造形なのに対して、「600Hybrid」はBEVっぽいシンプル過ぎる内装に変わっている。デザインも走りもまるで異なる両方を所有して楽しむ人を世間ではエンスーと言う。



小型SUVの質感はどんどん上がっている

600Hybridのような小型SUVは日本市場でも各社から発売されている。街中でホンダWR-Vを見かけたが、思っていた以上に上質なクルマに見えた。実家の母にもオススメしたい感じだ。同じくインド生産のスズキ・フロンクスや、タイ生産の日産キックス、MAZDA・CX-3が逆輸入されている。大人気のジムニー・ノマドもインドからの輸入を1300台/月から3300台/月に増やして、4日間で5万台という破格の受注に対応するらしい。日本メーカーだけでなく世界中のメーカーが、現在のところ最も力を入れて開発しているのが「BセグSUV」なのかもしれない。


毎年発売される「世界の自動車オールアルバム」を見ていると、BセグSUVの増殖ぶりが凄まじい。現地生産必須の中国市場とBセグ不在のアメリカ市場には、第三国で生産して輸出というビジネスができないが、インド、インドネシア、パキスタン、ブラジル、バングラディシュ、メキシコ、日本、フィリピン、ベトナムといった人口が多い国々と、欧州やオーストラリア、ニュージーランドといった高所得地域に幅広く導入できるので、BEVなどの市場変化によるリスクを避けるには一番信頼できるジャンルなのだろう。



小さくても高級車

日本市場に導入されている欧州メーカーの小型SUVは、フィアット、ジープ以外に、シトロエンC3エアクロス、プジョー2008、DS3、ルノー・キャプチャー、VW・Tクロス、MINIカントリーマン、アウディQ2と多岐なブランドに渡っている。それぞれに日本市場での販売台数の中ではブランド内のエース格のモデルといえるものばかりだ。ライバルが多過ぎて過当競争気味なこともあって、デザインなどの作り込みも各社それぞれに工夫を凝らしていて、600Hybridが400万円を下回る戦略価格で導入されるなど、インポーターもギリギリの戦いをしている。


車格至上主義が根強く残る日本市場では、メルセデス、BMW、ボルボ、スバル、MAZDなどのアメリカ向けモデルを、「大きくて取り回しに気を使う」「燃費もかなり悪い」などとちょっと嬉しそうにブツブツ言いながら乗るのが定番になっている。とりあえずエコなど考えずに、ランクル250、アルファード、CX-80のような設計の大前提が「5m級であること」な、メーカーがユーザーの知能レベルを舐めているとしか思えないモデルが優先的に作られている。



MAZDAの巨艦主義はどうなのか?

394万円のCX-80と、399万円のフィアット600Hybridのどちらが高級車か?後車だろう。どちらが走りが楽しいか?これまた後車だろう。メーカーの方針にはいろいろあるのだから安易な比較はできないけども、今から20年ほど前のMAZDAは欧州市場での成功を目指してフィアット・プントみたいなデミオと、アルファロメオ156みたいなアテンザで大成功を収めた。イタリアブランドのようにセンスの良かったMAZDAはどこへ行ってしまったのか!?


2007年に登場のデザインが今でも極上過ぎる「500」、2014年に登場して10年経過もコダワリのレンタカー車として普遍的なデザイン美を誇る「500X」は、イタリアデザインは、MAZDA車のようなロングサイクルに合っている。5m級などとサイズを決めずに、必要に応じた大きさのクルマをバランス良くデザインしたものは賞味期限が長いようだ。CX-5もキャビンをコンパクトにデザインしたところが秀逸なのに対して、CX-60、ハリアーはキャビン後部が間延びして見えてしまう。



イタリア車への憧れ

イタリア車が車格に拘らないのは、イタリア国内の道がとても狭いからという理由だけでなく、「イタリア車である」というプライドや余裕がそうさせるのだろう。世界最高の自動車用エンジンを生産するのはイタリアだ!!ドイツでも日本でもなくイタリアだ!!楽しくなければイタリア車ではないし、ドイツ車や日本車と違ってイタリア車は運転技術を要求する。2気筒エンジンのトルクで上手く走らせる技術が求められる。ポルシェは誰が乗っても速いけど、フェラーリには腕が必要・・・。


長らく日本でも販売されてきた「500」や「パンダ」が廃止され、「500X」も生産終了が噂されていて、アバルトの695、F595もベース車が無いので終了する。アルファロメオは価格上昇が激しい。日本市場で500万円以下で買えるイタリア生産のエンジン車は、いよいよ消滅の危機を迎えている。スペイン生産のフィアット・ドブロ(ミニバン、ディーゼルのみ)を除くと、ポーランド生産の600Hybridが、庶民にも手が届く最後の「楽しいイタリアのエンジン車」になってしまうようだ。ゆえに日本市場で意外にヒットしそうな予感がする。













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