輸入車が買いやすくなってきた
2019年に登場した初代T-ROCは、VWの期待通り欧州市場でSUV販売1位の座に到達した。日本市場では価格がネックとなっていたが、初代T-ROCのファイナルエディション「マイスター・ヴェルク」が販売中だ。現状で438万円のボトム価格を打ち破り、429万円〜でしかもシートヒーターが標準装備になっていてお得だ。VWもステランティスも日本市場では、価格競争力での生き残りを賭けていて、新型モデルはいずれも価格がしっかり抑え込まれていて、機能面やブランディングなど総合的に判断すれば、価格上昇が著しい日本車と比較して良い選択に思える。
2025年を目処に初代T-ROCの生産が終了される予定で、2026年から二代目に生産が切り替わる。MAZDA3の全長を僅かに縮めてCX-30を設計しているように、初代T-ROCもゴルフ7の全長を切り詰めたサイズになっていた。二代目T-ROCでは中国向け初代T-ROCと同じサイズに拡大されるようで、ゴルフ8よりも全長が長くなる。それでも4.3m程度なのでコンパクトだけど高速道路でしっかり走れるコンセプトは維持されそうだ。
トヨタ vs フォルクスワーゲン
メルケル時代のVWは中国市場でシェアを伸ばし、欧州よりも東アジアの方が販売が多かったが、2025年は欧州で力強く復活し、欧州394万台、東アジア301万台で、「欧州メーカー」へと回帰している(台数はVWグループ全体)。欧州市場で攻勢を強めるHEVメーカー・トヨタの尖兵となっているのがカローラクロス、C-HRだが、これを迎撃するT-ROCとシュコダ・カミックは、トヨタのHEVが積極的にPRしない「グランドツーリング性能」および「走りの楽しさ」でユーザーに訴求している。
T-ROCにはトヨタのHEVが追従できない「2つの飛び道具」がある、1つは300ps級の性能を持つT-ROC・Rの設定で、アウディSQ2との共通設計で実現した。日本正規販売での価格は699万円で高価だが、高性能モデルは日本車でも相当に高くなっているので、同等のスペックの新車価格としては手頃である。トヨタも欧州市場を意識してレクサスLBXモリゾーRR(650万円)を導入して、HEVだけではない懐の深さを見せているが、「コンパクトSUV&ハイエンドスポーツ」というT-ROC・Rのコンセプトはトヨタのマーケティングにも確実に影響を与えている。
欧州車の証
もう1つの飛び道具は、日本でも並行輸入で導入されているT-ROCカブリオレだ。欧州のクルマ文化を象徴する仕様で、EVシフトに突入しても欧州メーカーが共有で守り続ける強烈なアイデンティティと言える。ソフトトップのオープン仕様になっているコンパクトSUVは、ランドローバーで初代レンジローバー・イヴォークに短期間だけ設定されていた。実現こそしなかったが、BMW・X2にもカブリオレ導入が計画されたいたようだ。
T-ROC・Rにも言えることだけど、SUVが主流になり長時間を快適にドライブするコクピットは大きく進化した。ルーフが高く圧迫感が軽減されるため、ホイールベースを小さく設定できハンドリングが向上する。さらにドライバー中心の空間設計も欧州車に合っている。欧州向けSUVばかりのラインナップになっているMAZDAのコクピットに慣れると、アルファードやレクサスIS運転席の窮屈さには閉口する(肘が何度も当たるんですが!!)。欧州で人気のカローラツーリングの方が広いくらいだ。
好きになる「愛車」
Rやカブリオレで非日常なドライビングを長時間楽しむならば、ゴルフのようなロードカーよりもT-ROCのようなコンパクトSUVの方が向いている。サーキットで走るならゴルフRなのだろうけど、公道ロングドライブならばT-ROC・Rの方が楽しい休日になりそうだ。Rやカブリオレではない通常モデルのT-ROCの基本グレードである1.5L(150ps)の直4ターボでも十分過ぎる走行性能を持っている。買い物、高速道路を使った遠出ドライブ、気分転換にワインディングルートの走行の、どの用途にも非常に適性が高い。
同サイズの日本メーカーSUVである、ヤリスクロス、ヴェゼル、キックス、CX-3はBセグゆえに高速道路の巡行にやや不向きだ。VW車が使うDCTは、日本メーカーの国内向けでは採用がなくなった(ホンダの北米モデルに一部あり)。MT車の運転経験が無いユーザーが使うと上り坂や渋滞時にトラブルが出るなどデメリットもあるが、高速巡行でMT車のようなダイレクトな走行感覚はドライビングの楽しさを高めてくれる。夜間ドライブが趣味な人がCVT車から乗り換えたら全く別のアクティビティになると思う(運転にコツが要るけど)。
フォルクスワーゲンとMAZDA
日本メーカー車はFMCの度に新しい機能が加わらないと、カーメディアから(書くことがないから)「全く進歩がない」とか書かれる。一方でドイツメーカー車のFMCは、可能な限りキープコンセプトであることを強く求められる。ポルシェが自然吸気に回帰したり、BMWがMTを設定したり、MINIがエンジン車を残すだけで、カーメディアもファンも歓迎する。MAZDAは日本メーカーなので「HEVを作れ!!」と高圧的に批判されることも多かったが、国籍を変更してドイツメーカーになれば、「走り」にコンサバな開発思想を絶賛してもらえるかもしれない。
VWも小排気量ターボ化、ディーゼル化、BEV化、MT廃止などのタイミングで、「昔のゴルフは良かった」的な懐古主義なレビューが浴びせられた。保守的なMAZDAに対して、VWは革新的な面で議論を読んでしまう。欧州最大ブランドとして欧州で実用的なクルマ作りをした結果が「過密ストップ&ゴー」かつ「灼熱高湿極寒豪雨スノー」な日本市場向け実用車としての適性は低いままだったりするので(地域にもよるけど)、ファンやインポーターは置いてきぼりを食らったと感じてしまうかもしれない。
フォルクスワーゲンを味わう
日本の気候に対応していて、かつゴリゴリのHEV燃費で推してくるトヨタ、ホンダ、日産(日本大衆車BIG3)が、日本の実用車として機能面で優位性を持っていることは認めざるを得ない。日本の暑い夏を乗り切る逸品として長年開発されてきたキリン、アサヒ、サントリーのビールを好む人々に、スコットランド・アイラ島のウイスキー・ハイボールの方が美味いと勧めたところで、大きくニーズが切り替わるとは思えない。
しかし一部の日本の酒飲みの心を掴んで離さないのがラフロイグ、アードベッグだったりする。余市や白州といったジャパニーズウイスキーも確かに美味いが、アイラ島の蒸溜所が生み出すモルトウイスキーより上の格付けにはならない (もちろんビールなど口にしない)。VW、MINI、BMW、MAZDAは、それぞれにユーザーは少数派ではあるかもしれないけど、東京都の中央部(多摩地域)で、休日の日中に散歩していると、この4ブランドがクルマ愛好家に根強い人気を誇っていることがよくわかる。
イチャモン
初代T-ROCはデビュー直後から福野礼一郎さんに酷評されるなど、厳しい船出だった。VWを購入する層(リテラシー高め)への福野さんの影響力はかなり大きいと思われる。偉大なライターであることは認めるが、T-Crossの1L直3ガソリンと、T-ROCの2L直4ディーゼル(当時はガソリンは未発売)を同時にレビューする企画に無理があったかもしれない。同等のモデルとして、MAZDAのCX-3のガソリンと、CX-30のディーゼルを同時にレビューさせたらCX-3の走りが際立たつのは容易に想像できることだ。
幸いなことにゴルフとT-Crossは福野礼一郎さんによる絶賛レビューがコアなクルマ好きの間では知られていて、2025年の輸入車販売台数で2位ゴルフ、3位T-Crossとなったことで、福野レビューが妥当だったことが証明されてしまった。どちらも乗り出しでT-ROCより100万円ほど安くてフォルクスワーゲンを味わえるのだから賢い選択である。2代目T-ROCの全容はわからないが、その余力ある設計で「R」や「カブリオレ」の世界観で注目されるようになって欲しい。
後記
最後までお読みいただきありがとうございます。この投稿は2026年2月4日時点での情報をもとに記述しています。今後とも日本市場で展開する 自動車 車メーカーについて思うところを綴っていきたいと思います。
「VW・T-ROC ドイツ車の価値」(マウンテンゴリラのカーライフ)
「VW・T-ROC コンパクトSUV戦争が勃発」(CARDRIVEGOGOエリア9)
「福野礼一郎さん『ゴルフとは思えぬ駄作』(2021年レビュー)の予言」(カーメディアにひと言・・・)
「VW・T-ROC (2026年2月4日)」(CARDRIVEGOGOまとめブログ)
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