インフィニティQ50(新型スカイライン) 「”ラスト・ニッサン”は買いか?」

  あくまで憶測の域を出ない話だが、日産はどうやら「FR高級モデル」の開発を凍結したようだ。先日も北米を中心に展開しているインフィニティブランドの廃止が取りざたされたと報じられた。北米でのFR車の売上はまったく成長の兆しをみせず、仮に次期モデル用の新型シャシーを開発したとしても現在の規模の売上では開発費用の回収もままならないだろう。次世代の環境対応車の展開で遅れをとっている日産にとって、見通しが付かない高級車の開発をする余裕はないのが実情だ。

  まもなく発売されるインフィニティQ50もV35・V36と2代に渡って使われているプラットフォームが引き続き使われる。トヨタのクラウンと同じく3世代が同じシャシーを使うことになった。新型プラットフォーム開発が割に合わない事情はクラウンに関してもまったく同じだと思われる。そして様々な報道によると、この次(6~7年後)の日産のミドルクラス・ラグジュアリーセダンは業務提携しているメルセデスが設計を担当するそうだ。

  実質的にメルセデスはルノー日産の高級車部門を担当する「関連メーカー」に位置して来ているようだ。これはトヨタ・VW・GMの3軸で展開されつつある自動車業界で、メルセデスとルノー日産がそれぞれに競争力を保つための必然的な「同盟関係」だ。メルセデスもルノー日産もここ数年においてトヨタと互角以上の収益をあげていて、投資家サークルでは一定の評価を受けている。しかし世界で一番トヨタが多く計上している「研究開発費」を、この両社は大幅に削って無理矢理に収益を作り出しているという指摘もある(エコカー技術で両社が遅れているのは必然の成り行き?)。

  今後10年の自動車業界で予想されるトレンドとしては、VWが傘下のアウディとポルシェに高級車開発を委譲するという合理化策が各陣営に広まると予想されている。ライバルのトヨタもまったく同じようにスバルとBMWに自社の高級車を委ねる方針でグループ再編が進んでいる。フィアットも傘下ブランド間の連携を強め、フェラーリのエンジンやマセラティの生産スキームをクライスラー系ブランド(SRTやダッジ)やアルファロメオに移植して北米・中国・日本でのシェアの拡大を目指すようだ。簡単に言うとフェラーリのエンジンを使ってマセラティが組み上げたダッジやアルファロメオブランドのスーパーカーが登場するということだ。フォードとホンダはこれらとはやや一線を画した独自の経営方針(孤立主義?)を押し進めるようだが、ルノー日産もメルセデスと三菱をブランド内部に組み込んでVWやトヨタに追従すると言われている。

  前置きが長くなったが、このインフィニティQ50で歴史ある日産の「走りのセダン」は姿を消す公算が高い。北米で売れているアルティマ(ティアナ)は今後も残るだろうが、これはカムリやアコードのライバルとして作られたFFセダンであり、日産のスカイラインやセドリック/グロリアの系譜を引き継ぐようなクルマではない。

  今の段階でインフィニティQ50で新たに導入されると発表されたシステムは、フーガのハイブリッドシステムの流用と超高張力鋼鈑の使用がアナウンスされている。すでに生産が開始されているが、まだ正式に噂の「ハンドリング機構」についての発表はない。来年以降には2.2Lディーゼルターボと2Lガソリンターボによる新グレード追加があるようだ。

  もし栃木工場で作る「ラスト=スカイライン」なのだとしたら、やや地味なFMCの印象でとても残念だ。日産のこだわりが盛り込まれたハイテク=セダンこそがスカイラインの名前にふさわしいはずだが・・・。やはりバブル後の経営危機の段階でスカイラインは幕引きをすべきだったのだろうか。それでも余力で新生スカイラインはBMW3シリーズを北米市場で完膚なきまでに叩きのめし、ヒュンダイから羨望の眼差しを受けジェネシスというフォロワーも生んだ「日本を代表する名車」でありつづけたのはさすがだ。6~7年後に登場するであろうメルセデスがアメリカで組み立てるOEMのスカイラインなんて、喜ぶミーハーは居るかもしれないが、とても日本を代表するスポーツセダンとは言えない。



  

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