もう結構前のことのような気がするが、アテンザが日本車として初めて、「ワールド・カーデザイン・オブ・ザ・イヤー」の最終の3台にノミネートされた。ライバルはアストンマーティンとジャガーのスポーツカーで3000万円と1000万円のクルマに、300万円のアテンザが挑むという「愉快」なマッチアップだった。結果はジャガーのFタイプが受賞したが、まあ最後の結果はあまり重要ではないかもしれない。
それにしてもこの「ジャガーFタイプ」というクルマは何の因果で生まれてきたのだろうか?とやや首を傾げたくなる不思議なパッケージだ。何と言っても完全「2シーター」で1000万円を超えるクルマを、カタログモデルで本気で売ろうとしているところが、ほぼ「理解不能」だ・・・。確かにフェラーリやランボルギーニといったスーパーカーブランドを除くと、メルセデスSLSくらいしか現行では売られていない「マニアック」なクルマだ。それでもV8スーパーチャージャーで1250万円は欧州の一流ブランドであることを考えると「格安」を通り越して「ダンピング」の部類に入るのと言えるから、もしかしたらヒットするのかも知れない。
それでも、このジャンルにはアメリカ車を代表するスーパースポーツの「シボレー・コルベット」が今も輝きを放って君臨している。コルベットはそのリーズナブルな価格設定が日本でもかなりウケているようで、休日の都心ではかなり多く見られる人気のスーパースポーツ車だ。それを押しのけて、アメリカや中国、日本が主戦場になるであろうこのFタイプを売ろうとする試みは「無謀」にしか見えない(そもそもスポーツカーを掴まえて「無謀」というのも下世話な話だが・・・)。
不可解な点は他にもある。FタイプはV8搭載ながら、ボディはアルミモノコックでホンダNSXのように錆びる事は無く、中古車価格もおそらく10年以上に渡ってそこそこ高く維持されるであろう。「価値のある」クルマだというお墨付きがあるので、これも実際の販売には有利に働くだろう。お金持ちほど中古車価格に敏感だったりするので、値落ちしない高級車は人気になる。しかしアルミボディながらV8搭載モデルで車重は1810kgもあり、これは同じV8のコルベットと比べると300kgも重い設計だ。コルベットはニュル最速を目指すベストパフォーマンスなクルマではあるが、いくらなんでも車重に違いがあり過ぎるのではないか?
海外試乗会のレビューなどにも軒並み「スパルタンなスポーツカーではない」などと、やや否定的な文言が並んでいる。見た目は走りそうだが、基本設計の段階ですでに、コルベット、911ターボ、GT-Rを射程に入れようなどとは少しも思っていないようだ。それでもこのクルマはシボレーやポルシェや日産ではない「ジャガー」が作っているということがポイントだ。なぜなら内装やスタイリングでは「スパルタンなライバル」に一歩も引けを取っていないからだ。もし数年後にホンダの新型NSXが参戦して来ても、対して気にならないだろう。それはラグジュアリー・ブランド「ジャガー」であり、ポルシェと並ぶ長いスポーツカーの伝統を持つ「ジャガー」なのだから。
そんなFタイプが実際になにより欲しかった勲章は「ニュル最速」などではなく、「ワールド・カーデザイン・オブ・ザ・イヤー」だったのではないか・・・。これで世界中の金持ちにこのクルマの「価値」を発信することに成功したといってもいい。それにしても今年の最終ノミネートには、いかにもというクルマが多い気がする。「ブランド価値」の回復を宿命付けられた3台が集まった印象だ(アストンマーティンはそれほど必死ではないようだが)。ちょっと穿った見方をすれば、ジャガーとマツダの「ロビー競争」が裏で必死に展開されていたのかもしれない。マツダとしても「ベスト3」なら十分な成果ではあるが、それなりに「宣伝費」を使ったことだろう(なので今さらのように3位を必死にアピールしている)。
↓ジャガーの新世代戦略はなかなか実態が掴みにくいです。いったいFタイプ発売の意図は?
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