2026年3月19日木曜日

MAZDA・CX-3 (2025年12月グレード改定・2026年2月生産終了)

 

奇跡の四台

MAZDA・CX-3が2026年2月に生産終了となってしまった。2015年の登場なのだが、屈指の傑作デザインが幸いして10年以上が経過しても古さはない。普遍的な造形美を強く主張していたMAZDAのデザイナーの言葉通りなのだろう、大きなデザイン変更を含むマイナーチェンジや特別グレードの設定もなく、ほぼオリジナルデザインのまま10年以上のライフサイクルを駆け抜けた。


CX-3が発売された頃のMAZDAの企画・開発は冴え渡っていて、前年にはデミオ(現行MAZDA2)、同年にはロードスター(現行)、さらに2年後にはCX-5(2代目現行)のいずれのモデルもデザインは突き抜けて優れている。HEVやCVTを使わず、日本市場で主役になる気もないMAZDAの予想外の快進撃がここから始まった。そのクオリティの高さゆえに、2017年にはトヨタの豊田章男会長(当時は社長)が「クルマ作りを学ぶ目的」と宣言し、トップダウンでMAZDAとの提携を決めた。


セダンが売れない・・・

10年前のMAZDAの主力モデル(販売が多い)は、CX-5、アクセラ、アテンザのミドル3車種だった。ホンダのCR-V、シビック、アコードの車台共通化構想を受けて、2012年からMAZDAも同じ方針を採用した。2012年、2013年で主力3モデルがスカイアクティブへ刷新され、続いて2014年、2015年で、デミオ、CX-3、ロードスターのコンパクト3モデルが揃った。コンパクト3モデルはグローバルではそれほど多くの台数は出ないことを前提に作られている。


残念ながら主力3モデルからアテンザ(MAZDA6)が脱落した。2012年に3代目として華々しく登場したが、初代、2代目で世界を制した名車アテンザの姿ではなかった。「和製アルファロメオ」(沢村慎太朗さんレビュー)と評された2代目GH型から、「ディーゼル搭載カムリ」の3代目GJ型へと変わり、クルマの方向性が全く違うものになった。北米にはディーゼルがなく直4のみ(2代目はV6があった)で北米のニーズに合わず、中国でも合弁先が初代、二代目を並行生産して、3世代が併売されるなど巨大市場で伸び悩んだ。


ラージ商品群登場

3代目アテンザの失敗を糧に直6ガソリンターボのCX-70、CX-90が北米向けに開発されることになった。アテンザが抜けた現在(2025年)では、CX-5(約33万台)、CX-30(約20万台)、MAZDA3(約15万台)が販売台数ではトップ3となっている。北米生産のCX-50が約10万台あり、日本生産のCX-70とCX-90合わせて関税の逆風の中で10万台を超える販売を誇る。それらのミドル、ラージモデルと比べるとコンパクト3車種の販売規模は少なく抑えられている。


2012年の「MAZDAプレミアム化宣言」以降のモデルに限った話ではなく、2002年以降の「新生MAZDA・ZOOM-ZOOM革命」以降のモデルは、MAZDAにしかできないクルマ作りをテーマに1台1台が仕上げられている。2002年初代アテンザは世界132のCOTYを獲得、欧州COTY2位、2003年初代アクセラも欧州COTY2位、2007年3代目デミオはWCOTY受賞、欧州COTY2位となっている。以後も世界中のCOTYにMAZDA車が選ばれている。



プレミアム・コンパクト

多くの中堅メーカーが利益率の低さゆえに、普通車のコンパクトカーからは撤退しているMAZDAにとってもそれは同じなのだけど、10年以上前に作ったコンパクトカーがあまりにも優秀過ぎてファンが多いので撤退するタイミングを逃してしまった。MAZDA以外にコンパクトな普通車を作るメーカーは、トヨタ、ホンダ、日産(ルノー)、スズキ、VW、ステランティス、ヒョンデ、フォードなど、いずれも生産台数で世界トップ10に入ったことがあるメーカーばかりだ。


例外はMAZDAとMINI(BMW)だけだ。120万台のMAZDAと、246万台のBMWは、巨大資本がスケールメリット(生産合理化)で低価格競争するコンパクトカー市場で、「クルマ好きを唸らせる」みたいなテーマで戦ってきた。MAZDA2とMINIは「プレミアムBセグ」と言われてきた所以だ。どちらも経営は楽じゃないので、さっさとBセグをBEV専門に転換したい様子で、経営方針も発表しているが、ファンと社会インフラがそれを許さない。



クルマでわかる

MAZDA2とMINIのSUV版がCX-3とMINIカントリーマン(先代はMINIクロスオーバー)で、東京都多摩地区では上品な女性ユーザーの間で大人気だ。街中ではCX-5より見かけることが多いくらいだ。上品なユーザーは、街中の狭い道で他人の迷惑も考えずに、ラージサイズ、ミドルサイズのミニバンやSUVで走ろうとはしない。歩行者や自転車が多い日中にCX-8やアルファードで「どけどけ!!」とばかりに暴走するユーザーは結構目につく。横断歩道に人が立っていても平気で走り抜ける。


偏見でも何でもないけど、ロードバイクで日中に走っていてつくづく思うのは、大きいクルマに乗る女性と古いクルマ(10年以上前の年式のミニバン、セダン、小型輸入車など)に乗る男性は事故発生率がかなり高いってことだ。現行モデルのBMW5シリーズなどの高級車に乗ってる知人に何人かいるが、全員が穏やかな性格で運転もスマートだ。しかし同じBMWでも1シリーズをロードバイクで追い越して行くと、かなりの確率でアクセルベタ踏みで横をすり抜けてくる。なんであんなに短気で凶暴なのだろうか!?




MAZDAらしさ

2012年頃からMAZDAが主張するようになった「プレミアム」とは、ユーザーの手前味噌な解釈かもしれないが、「上品」なユーザーの選択肢を目指したブランド戦略を意味する。近年のトヨタ、スズキ、ホンダが意図的にチョイスする「ヤンキー風」「ガンダム顔」といった癖の強いデザインを避けている。デザインだけでなく、多くの日本メーカーが採用するCVT、HEV、シフトレバー廃止などの「商用車スペック」に対して距離を置いている。MAZDA車は悪目立ちせず、わざわざ所有する意義のあるクルマがほとんどだ。


首脳陣も120万台規模のメーカーだから「逆張り」ができると言っている。ポルシェやBMWのようなハイエンドの超高性能モデルを作ることも可能かもしれないが、それらを好むユーザーをメインの顧客にするつもりは全くないだろう。ハイエンドな性能を予感させるコンセプトカーこそ何台も発表はしているが、いずれも製品化には至っていない。MAZDA車の良いところは毎日のように乗りたくなる点で、サーキットでしか実力を発揮できないクルマはブランドとの親和性に疑問がある。




諸行無常

2015年以降のMAZDAには、日産ジュークを追走してコンパクトSUVブームに乗ったCX-3と、プレミアムコンパクトに突き抜けて日本市場HEV拡大の逆風を跳ね除けたMAZDA2(そもそもBセグにHEVは不要では?)と、ミドルSUVブームの象徴となったCX-5(二代目)と、スポーツカー・リバイバル・ブームに乗ったNDロードスターの奇跡の4連発があった。選択と集中でスライドドア、小j排気量ターボ、CVT、HEVなどを、ことごとくぶった斬ったのは間違いなく英断だった。


この奇跡の4台のうち、CX-3とCX-5(二代目)が2026年で廃止され、MAZDA2とロードスターもいつ廃止のアナウンスがあってもおかしくない。しかも発表されている後継モデルはHEV化されるCX-5と、BEV化されるMAZDA2、CX-3、ロードスターだ。期待3:不安7くらいの割合でMAZDAファンは今後の行く末を見守っている。「今乗っているクルマが壊れた時には、いよいよクルマを降りようかな」まあ人生はクルマだけではないし・・・。



後記

最後までお読みいただきありがとうございます。この投稿は2026年3月19日時点での情報をもとに記述しています。今後とも日本市場で展開する 自動車 メーカーについて思うところを綴っていきたいと思います。




<日本語版>MINI 60YEARS~ミニの60年~







2026年2月4日水曜日

VW・T-ROC (2025年8月・欧州新型発表)

 

輸入車が買いやすくなってきた

2019年に登場した初代T-ROCは、VWの期待通り欧州市場でSUV販売1位の座に到達した。日本市場では価格がネックとなっていたが、初代T-ROCのファイナルエディション「マイスター・ヴェルク」が販売中だ。現状で438万円のボトム価格を打ち破り、429万円〜でしかもシートヒーターが標準装備になっていてお得だ。VWもステランティスも日本市場では、価格競争力での生き残りを賭けていて、新型モデルはいずれも価格がしっかり抑え込まれていて、機能面やブランディングなど総合的に判断すれば、価格上昇が著しい日本車と比較して良い選択に思える。


2025年を目処に初代T-ROCの生産が終了される予定で、2026年から二代目に生産が切り替わる。MAZDA3の全長を僅かに縮めてCX-30を設計しているように、初代T-ROCもゴルフ7の全長を切り詰めたサイズになっていた。二代目T-ROCでは中国向け初代T-ROCと同じサイズに拡大されるようで、ゴルフ8よりも全長が長くなる。それでも4.3m程度なのでコンパクトだけど高速道路でしっかり走れるコンセプトは維持されそうだ。



トヨタ vs フォルクスワーゲン

メルケル時代のVWは中国市場でシェアを伸ばし、欧州よりも東アジアの方が販売が多かったが、2025年は欧州で力強く復活し、欧州394万台、東アジア301万台で、「欧州メーカー」へと回帰している(台数はVWグループ全体)。欧州市場で攻勢を強めるHEVメーカー・トヨタの尖兵となっているのがカローラクロス、C-HRだが、これを迎撃するT-ROCとシュコダ・カミックは、トヨタのHEVが積極的にPRしない「グランドツーリング性能」および「走りの楽しさ」でユーザーに訴求している。


T-ROCにはトヨタのHEVが追従できない「2つの飛び道具」がある、1つは300ps級の性能を持つT-ROC・Rの設定で、アウディSQ2との共通設計で実現した。日本正規販売での価格は699万円で高価だが、高性能モデルは日本車でも相当に高くなっているので、同等のスペックの新車価格としては手頃である。トヨタも欧州市場を意識してレクサスLBXモリゾーRR(650万円)を導入して、HEVだけではない懐の深さを見せているが、「コンパクトSUV&ハイエンドスポーツ」というT-ROC・Rのコンセプトはトヨタのマーケティングにも確実に影響を与えている。


欧州車の証

もう1つの飛び道具は、日本でも並行輸入で導入されているT-ROCカブリオレだ。欧州のクルマ文化を象徴する仕様で、EVシフトに突入しても欧州メーカーが共有で守り続ける強烈なアイデンティティと言える。ソフトトップのオープン仕様になっているコンパクトSUVは、ランドローバーで初代レンジローバー・イヴォークに短期間だけ設定されていた。実現こそしなかったが、BMW・X2にもカブリオレ導入が計画されたいたようだ。


T-ROC・Rにも言えることだけど、SUVが主流になり長時間を快適にドライブするコクピットは大きく進化した。ルーフが高く圧迫感が軽減されるため、ホイールベースを小さく設定できハンドリングが向上する。さらにドライバー中心の空間設計も欧州車に合っている。欧州向けSUVばかりのラインナップになっているMAZDAのコクピットに慣れると、アルファードやレクサスIS運転席の窮屈さには閉口する(肘が何度も当たるんですが!!)。欧州で人気のカローラツーリングの方が広いくらいだ。


好きになる「愛車」

Rやカブリオレで非日常なドライビングを長時間楽しむならば、ゴルフのようなロードカーよりもT-ROCのようなコンパクトSUVの方が向いている。サーキットで走るならゴルフRなのだろうけど、公道ロングドライブならばT-ROC・Rの方が楽しい休日になりそうだ。Rやカブリオレではない通常モデルのT-ROCの基本グレードである1.5L(150ps)の直4ターボでも十分過ぎる走行性能を持っている。買い物、高速道路を使った遠出ドライブ、気分転換にワインディングルートの走行の、どの用途にも非常に適性が高い。


同サイズの日本メーカーSUVである、ヤリスクロス、ヴェゼル、キックス、CX-3はBセグゆえに高速道路の巡行にやや不向きだ。VW車が使うDCTは、日本メーカーの国内向けでは採用がなくなった(ホンダの北米モデルに一部あり)。MT車の運転経験が無いユーザーが使うと上り坂や渋滞時にトラブルが出るなどデメリットもあるが、高速巡行でMT車のようなダイレクトな走行感覚はドライビングの楽しさを高めてくれる。夜間ドライブが趣味な人がCVT車から乗り換えたら全く別のアクティビティになると思う(運転にコツが要るけど)。



フォルクスワーゲンとMAZDA

日本メーカー車はFMCの度に新しい機能が加わらないと、カーメディアから(書くことがないから)「全く進歩がない」とか書かれる。一方でドイツメーカー車のFMCは、可能な限りキープコンセプトであることを強く求められる。ポルシェが自然吸気に回帰したり、BMWがMTを設定したり、MINIがエンジン車を残すだけで、カーメディアもファンも歓迎する。MAZDAは日本メーカーなので「HEVを作れ!!」と高圧的に批判されることも多かったが、国籍を変更してドイツメーカーになれば、「走り」にコンサバな開発思想を絶賛してもらえるかもしれない。


VWも小排気量ターボ化、ディーゼル化、BEV化、MT廃止などのタイミングで、「昔のゴルフは良かった」的な懐古主義なレビューが浴びせられた。保守的なMAZDAに対して、VWは革新的な面で議論を読んでしまう。欧州最大ブランドとして欧州で実用的なクルマ作りをした結果が「過密ストップ&ゴー」かつ「灼熱高湿極寒豪雨スノー」な日本市場向け実用車としての適性は低いままだったりするので(地域にもよるけど)、ファンやインポーターは置いてきぼりを食らったと感じてしまうかもしれない。



フォルクスワーゲンを味わう

日本の気候に対応していて、かつゴリゴリのHEV燃費で推してくるトヨタ、ホンダ、日産(日本大衆車BIG3)が、日本の実用車として機能面で優位性を持っていることは認めざるを得ない。日本の暑い夏を乗り切る逸品として長年開発されてきたキリン、アサヒ、サントリーのビールを好む人々に、スコットランド・アイラ島のウイスキー・ハイボールの方が美味いと勧めたところで、大きくニーズが切り替わるとは思えない。


しかし一部の日本の酒飲みの心を掴んで離さないのがラフロイグ、アードベッグだったりする。余市や白州といったジャパニーズウイスキーも確かに美味いが、アイラ島の蒸溜所が生み出すモルトウイスキーより上の格付けにはならない (もちろんビールなど口にしない)。VW、MINI、BMW、MAZDAは、それぞれにユーザーは少数派ではあるかもしれないけど、東京都の中央部(多摩地域)で、休日の日中に散歩していると、この4ブランドがクルマ愛好家に根強い人気を誇っていることがよくわかる。


イチャモン

初代T-ROCはデビュー直後から福野礼一郎さんに酷評されるなど、厳しい船出だった。VWを購入する層(リテラシー高め)への福野さんの影響力はかなり大きいと思われる。偉大なライターであることは認めるが、T-Crossの1L直3ガソリンと、T-ROCの2L直4ディーゼル(当時はガソリンは未発売)を同時にレビューする企画に無理があったかもしれない。同等のモデルとして、MAZDAのCX-3のガソリンと、CX-30のディーゼルを同時にレビューさせたらCX-3の走りが際立たつのは容易に想像できることだ。


幸いなことにゴルフとT-Crossは福野礼一郎さんによる絶賛レビューがコアなクルマ好きの間では知られていて、2025年の輸入車販売台数で2位ゴルフ、3位T-Crossとなったことで、福野レビューが妥当だったことが証明されてしまった。どちらも乗り出しでT-ROCより100万円ほど安くてフォルクスワーゲンを味わえるのだから賢い選択である。2代目T-ROCの全容はわからないが、その余力ある設計で「R」や「カブリオレ」の世界観で注目されるようになって欲しい。



後記

最後までお読みいただきありがとうございます。この投稿は2026年2月4日時点での情報をもとに記述しています。今後とも日本市場で展開する 自動車 メーカーについて思うところを綴っていきたいと思います。


「VW・T-ROC ドイツ車の価値」(マウンテンゴリラのカーライフ)


「VW・T-ROC コンパクトSUV戦争が勃発」(CARDRIVEGOGOエリア9)


「福野礼一郎さん『ゴルフとは思えぬ駄作』(2021年レビュー)の予言」(カーメディアにひと言・・・)


「VW・T-ROC (2026年2月4日)」(CARDRIVEGOGOまとめブログ)









2026年1月27日火曜日

トヨタRAV4 (2025年12月FMC)

 

30年で王座へ

トヨタのRAV4がFMCで6代目となった。初代(1994年)と2代目(2000年)は、当時のカローラがベースで、今のヤリスクロスのサイズでしかなかった。3代目(2005年)と4代目(2013年・日本発売なし)では、カローラからアルファードまで幅広く統一規格化されたMCプラットフォームとなり、ショートボデー版が現行カローラクロスのサイズで、ロングボデー版が今のいわゆるミドルSUVのサイズとなった。2013年に日本向けハリアー(3代目)がMCプラットフォームとなり4代目RAV4に替わって販売された。


2018年登場の5代目(先代)からは、TNGAのKプラットフォームとなり、新設計のダイナミックフォースエンジン(日本2L、北米2.5L)も同時に投入され、大規模な刷新による新車効果でデビューから大人気となった。北米のSUVブームと重なり年間100万台を突破し、全車種で世界一の販売を誇る。そして新型となる6代目では、シャシー&エンジンの刷新もないので、日本仕様にも北米向け2.5L自然吸気が搭載されるなどの変更が期待されたが、予想を超える変化で中国仕様以外は全車HEV化された。


法規対応のFMCなのか!?

先代(5代目)は、日本以外にカナダ、中国、アメリカ、ロシアの5拠点で生産されていたが、新型は日本、カナダ、中国のみとなっていて、政情不安のロシアは予想通りだが、アメリカ・ケンタッキー州の工場は、日本向けに輸出できるモデルが割り当てられるのかもしれない。また先代では中国と日本で生産されていた2Lエンジンの非HEVモデルが日本から無くなったのも、2026年7月に迫る自動車サイバーセキュリティ法規制(日本)の猶予期間終了や、同じく2027年12月が期限のEUサイバー・レジリエンス法が関係してそうだ(欧州向けは日本生産)。


新型RAV4発表時に、車載ソフトウェアを統合管理する「アリーン」を初搭載することが発表された。従来のトヨタ車は1台のクルマの中で複数のOSによって分割制御されていたが、新興BEVメーカーで一般的に行われている統合管理するシステムを、HEVが主体のトヨタ車でも採用するということだ。条件付きハンズオフ自動運転で先行する日産、ホンダに対して、「アリーン」の採用で技術的に同程度あるいは優位に立つことができると思われる。将来的にはKINTOで下取りしたアリーン車をロボタクシーに転用するなどの流通を考えているのかもしれない。



強気な価格

HEVが先に発表され、PHEVも予告されているが価格は未定だ。HEVはエクステリアが2種類あり、北米トヨタっぽいクールなイメチェン仕様が「標準車」で、先代の面影を残すコンサバ仕様が「アドベンチャー」となっている。乗り出し500万円越えで、ちょっと前のレクサスNXみたいな価格になっていて、さすがに販売台数は減るだろうが、フロントマスク部分だけとはいえ2パターンのデザインを作ってくるトヨタの「ユーザーが喜ぶクルマを作ろう」という心意気が素晴らしい(ハリアー廃止フラグか!?)。


現状では「アドベンチャー」の450万円が最廉価モデルとなる。一足先に発売された現行フォレスターのS:HEVは420万円〜の設定だが、スバルではこの10年で最大級の初期オーダー数を記録したらしい。フォレスターが縦置きでモード燃費18.8km/Lに留まるのに対して、RAV4は22.9km/Lなのが強気の価格設定の理由だろうか。トヨタのE-FOURの燃費に対して、スバルのシンメトリカルAWDの低重心エンジンと最適化されたミッションが自慢で、トヨタとスバルのクルマ作りの分岐が明確となっていて面白い。



初期は尖っていた

RAV4とフォレスターは現在のようなSUV全盛期(2015年頃)のかなり前から継続して生産されているシリーズだ。両車ともに初期モデルは「スポーツ・ユーティリティ・ビークル」の名に相応しいグレードが用意されていて、初代RAV4には2L自然吸気の3S-GEをヤマハがチューンして180psまで引き上げ、車重がわずか1180kgに抑えられたモデルがあった。フォレスターにも初代から4代目まで280psの2Lターボ(EJ20、FA20)が設定されていた。どちらも復活させたら人気になりそうだが、前述のようにRAV4はボデーサイズがもはや別物だ。


ハイオク指定で7〜9km/L程度となるカリカリのスポーツエンジンを、車重が嵩むSUVに搭載するグレードは、ガソリン価格が底なしに上がる環境で量産車としては商品力を失ってしまう。軽量なロードカーこそがスポーツカーであるべきとの信念を持つホンダとMAZDAが、ファミリーカー(ミニバンの代替)としてSUVを手掛けるようになり大きな成功(ヴェゼル & CX-5)を収める。SUVの先駆的存在だったRAV4やフォレスターが、それぞれ5代目となる先代モデルからホンダ、MAZDAの成功に乗っかる形で、現行のTHSによるミドルSUVとなった。



ミドルSUVの上位価格

生まれ変わったRAV4とフォレスターは、それぞれトヨタとスバルのグローバルでの最量販モデルとなっている。VWはティグアン、日産はローグ(エクストレイル)、ホンダはCR-V、MAZDAはCX-5で、北米市場に参入している日独のメジャー志向のメーカーは全て同じ傾向が見られる。よくカーメディアやユーチューバーが、「CX-5はMAZDAの生命線」とステレオタイプに表現するが、他のメーカーにおいても状況は似たようなものだ。


新型RAV4がデビューする前に、トヨタはクラウンのシリーズ大変革とグローバル展開を実行した。ブランドの威信を賭けたフラッグシップ大刷新という決断は、停滞する業界内でトヨタだけが唯一大きく「動ける」ことを示した。RAV4が属するミドルSUVは良くも悪くも横並びで販売シェアを大きく取っているが、その状況下でクラウンがミドルSUVより上の価格帯で、北米伝統のピックアップや、各国の政府需要も多いラダーフレーム(ランクル、トライトン)を除いて、10万台単位の個人向け販売を成功させるのはトヨタとはいえ至難の技だ。



クラウンと同等の設計

クラウンシリーズは、ミドルSUVでは現時点で採用例がない21インチのタイヤを使用して外観で差別化をし、全車HEV化でこれまで高級車が成し得なかった優秀な燃費性能が与えられ、静粛性、ソフトな乗り心地が作り込まれ、さらにHEVの弱点と言われてきたトランスミッションの改良も大幅に進んだ。ミドルSUV群の上位モデルを求める高所得層は、有名ブランドの記号的価値で動いてしまう。高価格帯モデルをユーザーの不満が出ないクルマを作れてしまうのは大衆ブランドではトヨタだけかもしれない。


刷新されたクラウンの後から、同じKプラットフォームを使う新型RAV4が出てくる。さすがにリアサスやミッションなど諸元表に示されるスペックでは差別化されるが、パラメータで出てこない静粛性や乗り心地の部分でRAV4へ技術が降りてくる。実際にトヨタが得意な〇〇%向上しましたが、今回のFMCでも多数発表されている。パワーユニットもクラウン(セダンを除く)の販売経験からHEVとPHEVのみの設定で可能だと判断したようだ。前述の通り北米もHEV、PHEVのみで、中国だけ2Lガソリンが継続する。



トヨタらしくない無敵な雰囲気

トヨタにとって絶対に失敗できないRAV4であるが、先代のように400万円以下の乗り出しに抑えたいユーザーには、HEVのカローラクロスが用意されていて、先代RAV4からクラウン、ランクル250、レクサスへステップアップするユーザーに決断を迫るように価格帯を上げてきた。とはいえ、先代からの乗り換えはHEVの場合はリセールも良いので、新型へと更新する場合でも追い金は200万円以下に収まるだろう。


乗り心地には好き嫌いがあるだろうけど、トヨタはすでにミドルSUVとその上位モデル向けの様々な機能をカタチにしている。先代RAV4では、ホンダのシャシー&エンジンを研究し、MAZDAのクルマ作りを会長の号令のもと分析した綿密な開発戦略によって世界一になった。非HEV車が無くなったとはいえ、大きな変更はないのだからトヨタの中では安心して選べるモデルだと言える。あまりの販売の強さゆえにがミドルSUV市場を破壊するかもしれないが・・・。


後記

最後までお読みいただきありがとうございます。この投稿は2026年1月27日時点での情報をもとに記述しています。今後とも日本市場で展開する 自動車 メーカーについて思うところを綴っていきたいと思います。


CARDRIVEGOGOまとめブログ


トヨタ・RAV4 最善か無か マウンテンゴリラのカーライフ


トヨタ・RAV4 越えられない壁 CARDRIVEGOGOエリア9


2026年版 間違いだらけのクルマ選び









2026年1月12日月曜日

ホンダCR-V e:HEV (2026年2月グレード追加)

 

トランプが日本市場を救う!?

2026年2月からホンダがCR-Vのe:HEV車を日本市場に投入する。生産はオハイオ州のイーストビレッジ工場で、第二次トランプ政権の強引な政策を受けて、ホンダが北米生産車の日本向け輸出に舵を切った。トヨタ(カムリ、ハイランダー、タンドラ)、日産(パトロール)にも同じような動きがあり、日本の自動車産業の基盤が何だか変わりそうな2026年である。


CR-Vだけでなくソニーと共同開発した新型BEVのアフィーラもオハイオ州の工場で生産され、2027年に日本に導入する予定だと報道されている。北米生産車を日本に持ってくる流れが定着すれば、ハンドル位置を変えるのは手間だろうけど、アキュラのインテグラやTLXも日本に導入して、ポルシェの718ケイマンやパナメーラみたいなステージで売ればいいと思う。ホンダのe:HEV化戦略には逆行するけど、これはスポーツモデルだ!!と宣言すればいい。10速ATの技術力を日本でも見せつけて欲しい。



外国製フラッグシップ集結

CR-V・e:HEVの導入で、これまでは日本市場では影が薄かったけど、e:HEVに最適化されたホンダの重量級ファミリーモデルへの注目が高まることが期待される。中国製オデッセイと、タイ製アコードにアメリカ製CR-Vが加わり、グローバルで評価されるホンダのグランドツアラーがもっと認知されそうではある。ホンダが誇るSUV、セダン、ミニバンの3つのフラッグシップというだけで、クルマに詳しい人ならば、とりあえず「間違いない完成度のクルマ」であることはすぐに察する。


北米市場にはパイロット(これも日本導入の噂あり)のような規格外サイズのSUVが用意されているとはいえ、ホンダのフラッグシップがプレリュードを含めe:HEVで日本市場に全て揃った。価格帯でトヨタのクラウンやアルファードを想定しているので小粒な印象になってしまうが、ポルシェやBMWを部分的かもしれないが走りの質感で越えていく醍醐味こそが、日本で最後発ながら一流メーカーへと成長を遂げたホンダの本来の姿だ。



ホンダの本来の評価

3代目の北米版オデッセイは「ピープルムーバーのBMW」として2008年頃に北米で大ヒットした。3列シートでフロントに寄ったドライバーズポジションながら、BMW5シリーズのような操縦性と安定感を誇る「オンリーワン」なクルマと評された。トヨタ車は車体が大きくなるほど操縦性や乗り味への言及はされなくなるが、ホンダ車は重量が増えるに応じて足回りの強化をしっかり行うため、トヨタ車に比べて価格がやや割高になる傾向がある。


BMWアルピナのように、車体を補強して重量が増えた分だけ、上のクラスのパーツを使って足し算で強化するクルマ作りを、セダン、ワゴンではなくて、ピープルムーバーでも妥協せずに行うホンダのクルマ作りは、ステップワゴンやフリードに根強いファンを生んでいる。SUVにもその思想は受け継がれていて、ヴェゼル、ZR-Vともに「走りの良さ」を理由に多くのユーザーが選んでいる。



フルスペックSUV

今回e:HEVで導入されるCR-Vは、車内の居住性を目的にSUV化されたヴェゼル、ZR-Vとは異なり、市販SUVでは最高クラスに位置する最低地上高210mmを実現している。ふざけたカーメディアがSUVレビューの際に、何の根拠もなく「悪路走破性」を語り、読者は勝手にジムニーが土手みたいなところを走るところを想像する。交通量の多い道路ではりりえないが、地方の道路では路面が裂けていたり、深さ10cmはありそうでタイヤが沈み込むような穴が空いていたりする。


最低地上高が140mm程度のロードカーだと、ガタガタの道を通過するのに、車体下部を傷つけないように神経を使うが、210mmのSUVに乗っているときは気にせずに通過できる。ヴェゼルのAWD車は170mm、ZR-Vが190mmで、フォレスター(220mm)、CX-5(210mm)、ジムニー(205mm)に比べるとSUVとしてフルスペックではなかった。機能性重視のホンダが、フォレスター、CX-5に匹敵する本格派SUVを日本に投入してきた。完全に成熟したSUV市場で、ユーザー側の認知も高まりそろそろまともに評価されるようになってもいいのでは。



スバルファンの批判を弾き返す

街中ではフルエアロを組んで、エスティマみたいなボデーになったハリアーをたまに見かける。195mmの地上高がさらに下げられてカローラクロス(160mm)みたいな、SUVなのに床下をぶつけないか気にしなければいけないクルマになっていて、失礼だけど「頭が悪いチューニング」だと思う。トヨタSUVに乗る人の認識はおそらく、RAV4(195mm)が悪路走破性高く、CX-5(210mm)が低いとカーメディアによって洗脳されているのだろう。


クロストレックやレイバックも200mm以上の地上高を確保するスバルのファンからすれば、CX-3(160mm)、CX-30(175mm)、CX-60(175mm)のような、居住性確保が目的のSUVも多く出しているMAZDAはポリシーが低いかもしれない。それゆえにCX-5はMAZDAにとってブランド価値を維持する重要なモデルだ。同じ理由でホンダのSUVもスバルユーザーに鼻で笑われていた部分もあったのだけど、今回のCR-Vの再登場で意味合いが変わってくる。



日本メーカーと有名ブランド

都市部ではポルシェ、BMW、ランドローバーといった高級SUVブランドが人気だ。2000万円くらいするフラッグシップのモデルとCR-Vを比較するのは流石に無茶だけど、これらのブランドの1000万円を下回るくらいに位置するマカン、X3、ディフェンダーが相手ならば好敵手になる。MAZDAは縦置き直6の後輪駆動に憧れて過ぎてCX-60を作ってしまったが、実際のところ横置き直4ベースのCR-Vでもe:HEV技術の恩恵で、動力性能、燃費、静粛性、操縦性、安定性どのパラメータでも引けを取らない。


1990年代に英国ローバーを支え、英国工場を建ててOEM車の導入して名門を復興させたのがホンダだ。販売が回復したローバーをM&Aで手に入れたのがBMWで、その際のランドローバーの設計がX3などの設計につながっている。横置きとなったX1のベースもMINIの技術の活用で、やはりホンダの横置き設計が取り入れられている。さらにレンジローバー・イヴォークのシャシーはMAZDAがフォード時代に開発したものが採用されている。輸入ブランドのSUVがレベルが低いというわけではなく、ホンダやMAZDAの技術は世界最高レベルにあるということだ。



MAZDA天下の時代は終わる!?

MT車だったらトヨタ、日産、ホンダ、MAZDA、スズキ、ポルシェ、BMWどこのブランドでも楽しいが、2ペダルのオートマティックで選ぶとすれば個人的な意見で恐縮だがMAZDA1択だ。長時間走っても退屈しないダイレクトな操縦性にこだわるMAZDAが絶対的に正解だと思っている。しかしプレリュードに続いてe:HEVのCR-Vは、MAZDA以外で選びたくなる2ペダルが出てきた。自然吸気エンジンに熟成ATを組み合わせたMAZDAがこれまで乗り味で優位だったのはある意味で当然であるが、この格差を埋めるべくホンダも(トヨタも)HEV用ミッションの改良に努力してきた。


CR-Vのe:HEVは、クルマに煩いMAZDA、スバル、そして輸入SUVユーザーからもホンダブランドの中で特別に注目を浴びるクルマだと断言できる。本体価格500万円オーバー&北米生産ゆえにミドルSUV販売のトップに立つのは難しいだろうけど、このクルマの潜在ユーザーはホンダが抱えるN-BOX、ヴェゼルからのステップアップ・ユーザーというよりは、これまでホンダ車に乗っていなかった層に多いのではないかと思う。アウトランダーやエクストレイルを積極的に選ぶ層(トヨタNG派)の比較候補にも断然上がるだろう。



後記

最後までお読みいただきありがとうございます。この投稿は2026年1月12日時点での情報をもとに記述しています。今後とも日本市場で展開する 自動車 メーカーについて思うところを綴っていきたいと思います。



日本人の知らないHONDA


ホンダ タイプR ヘリテージ





ホンダCR-V・e:HEVは「オンリーワン」なのか?(マウンテンゴリラのカーライフ)


ホンダCR-VアメリカンSUV日本上陸(CARDRIVEGOGOエリア9)



ホンダCR-V・e:HEV (CARDRIVEGOGOまとめブログ) 


2025年10月22日水曜日

トヨタ・アクア (2025年9月・大規模MC)



 

幸せなBセグ・カーライフ

休みの日に奥多摩や秩父周辺をドライブしていると、パワースポットを求めてだろうか、「練馬」「世田谷」「品川」「横浜」の「わ」ナンバーを多数見かける。若者が2〜3人で連れ立って乗ってくる定番のレンタカーはノートe-POWERとアクアが2大勢力のようだ。三峯神社、日原鍾乳洞などの首都圏の山間部に位置する名所へのアクセス道路は、対向車を処理する技術が必要な隘路もあるので、都心から往復200km近い行程を考えると燃費の良いコンパクトカーは向いている。


20歳そこそこの頃は、いつでも体調万全でパワースポットの霊言を感じることはなかった。しかし慢性的な病気と体力低下に悩まされる年になってみると、趣味として興じるサイクリングで得られる全能感と、ウイスキーと美食による解脱感とともに、ドライブ&パワースポットは仕事に疲れてモチベーションが低下した時の癒しの時間としてはコスト的にも手軽を実感している。奥多摩や秩父は有料道路なしの下道で行けるのも良い。



セグメント消滅の危機!?

アクアの最軽量グレードが1120kg、同じくノートが1230kgで、高速道路での安全性を考えると1200kg以上の車重が好ましいのでノートに適性がありそうだが、e-POWERの高速燃費が非常に悪いのが玉に瑕だ。ヤリス、フィット、MAZDA2、スイフトも揃って1200kgを下回る車重なので、軽自動車ほどではないが、Bセグの高速巡航はオススメできない。


初代アクアは「プリウスC」として投入されていたが、近年はBセグ車は北米市場で販売されなくなっている。東南アジアや南米などもBセグのSUVが急速に進んでいて、道路事情が良い日本と欧州に向けた設計になっている。たとえトヨタであってもヤリス、アクアの次期モデル以降の継続には慎重にならざるを得ない。経済基盤のある国なので、価格と性能のバランスが取れたモデルなら、そこそこ安定した売り上げは見込める。



大ヒット車の後継はツラい

初代アクアの大ヒットは13年ほど前だったが、現行(2代目)になってから売り上げは伸び悩んでいる。2012年から5年連続で国内20万台超えを達成したが、現在は7〜8万台程度に落ち着いている。そんな中で2代目アクアは、先日のビッグマイナーチェンジで、214万円だったボトム価格が、一気に248万円まで上昇した。初代と比べて売れなかったため、予定していた利益率を調整してきたのかもしれない。


先代モデルはコンパクトカーのデザインとしては傑作の部類に入るもので、デビューからのスマッシュヒットも納得である。しかし2代目アクアでは、コンパクトカーの本場である欧州のデザインを意識し過ぎた感があり、往年のイタリア車、フランス車の大衆モデルにありがちな全体のバランスが整っていない感じが出てしまっていた。デザインの好みは人それぞれではあるが、個人的にはレンタカーで乗るには良いけど、所有するクルマとしては敬遠したい。



トヨタの修正力

2021年の発売当初のモード燃費30km / L級のHEVが214万円はトヨタらしい魅力的な価格設定だ。しかし50万円ほど安い非HEVのヤリス、スイフト、MAZDA2の20km / Lでも十分な燃費ではある。さらに自動車税が大幅に優遇されている軽自動車もあるので、地方のクルマ社会で生活する高齢ユーザーにとっては、2代目アクアは負担感があって選びにくいのだろう。この10年で初代とは販売環境が大きく変わっている。


市場の変化を察知してすぐに方針を切り替える柔軟性がトヨタの強みなのだろう。5代目プリウスに寄せたデザインに変わり、前面はまるで別のクルマになった。エンジン車時代のデザインからBEV時代のデザインにアップデートされたが、米国市場に再投入されるのかもしれない。日本市場では248万円(Xグレード)への価格上昇によって、227万円のカローラ(Xグレード・HEV)と価格が逆転している。



クルマ好きのためのアクア!?

ヤリスとカローラの「ベーシックカー・ラインナップ」に対して、アクアとプリウスは「スペシャルティカー・ラインナップ」となっていて、様々な顧客ニーズに応えたいのだろう。なるべく安く250万円以下に抑えたい人もいれば、周囲に「このサイズで400万円以上もしたよ〜」と言いたい人もいるわけだ。


SUV全盛の時代になって久しいが、ロードカーだけでこれだけの車種を揃えるトヨタの真似は、日産、ホンダ、MAZDA、スバルには到底無理だ。ヤリスとプリウスは国際標準モデルだが、アクアは現状では日本市場メインであり、カローラは日本市場専用ボデーを採用している。ロードカーで走る喜びを追求するユーザー向けに「GRスポーツ」グレードが設定され所有欲を満たせる。


不可逆的な進化

初代アクアが登場した頃、デミオ、スイフト、ヴィッツ、フィットは100万円そこそこの価格で売られていた。非HEV車であっても18km/Lくらいのモード燃費を叩き出していたBセグにHEVを搭載する意味はないのだけど、国内生産車の販売価格を200万円以上に押し上げたいメーカー側の理屈によって強行された。フィットHEV、ノートe-POWER、デミオXDがオーバースペックのBセグ車として後に続いた。


追従できない三菱自動車はコルトを諦め、逆輸入のミラージュを導入したがほとんど売れなかった。スズキ・スイフトも大きく販売を落とし、スイフトスポーツが主体となるモデルに変わってしまった。付加価値を付けたBセグ車が、引退世代(団塊世代)のニーズにうまくマッチした。これを先導したトヨタのマーケティングはやはり日本でトップなのだろう。



トヨタ VS 日産 勝負の現場

Bセグ車のレベルが上がってしまった現状から、再び2010年の100万円そこそこの「必要十分」なBセグへの回帰も可能だが、トヨタ・ヤリス(2021年欧州COTY受賞)が抑えてしまっている。トルコのルノー工場で生産される三菱コルト(1.6L、1.0Lターボ&6AT、6MTなど)が日本に導入されても良さそうだけど、あくまでMT好きの意見に過ぎない。


世界のどこよりもハイスペックな日本のBセグ市場は、MCされた2代目アクアから、更なるスペシャルティカー路線を進むのかもしれない。ディーゼルを放棄したMAZDA2は、BEV化して出直すことになりそうだ。日産ノートオーラ、アクア、GRヤリス (ATが追加された) によるハイエンドBセグ競争は、次の10年でどんな局面を迎えていくのだろう。この3台をみる限りBセグ車の魅力が上がっていることは間違いない。



後記

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資本主義が人類最高の発明である:グローバル化と自由市場が私たちを救う理由









2025年9月3日水曜日

BMW3シリーズ (2025年9月・50周年記念車)

 

経済成長

石破首相の号令のもと、盛んに賃上げが叫ばれていて最高賃金も最低賃金も順調に上昇しているらしい。2010年代の中国で強烈な経済成長を支えてきたギグワーカーのマッチングアプリが、日本でも本格的に普及し始めた。東京ではタクシー、運送、配達で月収60万円稼げるようになり、家賃&駐車場も20万円が相場になってきている。この10年でBMW3シリーズの価格も500万円から700万円まで一気に上昇したが、ダイナミックな賃上げ&インフレの時代を象徴している。


50年で7世代の歴史を誇るBMW3シリーズは、大人気だった4代目(E90系)の頃に300万円台だったこともあり、現行(G20系)の価格設定はかなり市場の反感を買っている。E90系の頃はMAZDAデミオが98万円で販売されていて、それが現行のMAZDA2では170万円くらいまで上がっているのだから、インフレ率はBMWもMAZDAもほぼ同じだ。BMW車両も、MAZDA車の部品も円安の影響を受ける。



インフレが既存シリーズを破壊

3シリーズに限らず、VWゴルフ、メルセデスCクラス、トヨタクラウン、日産スカイライン、ホンダ・シビックなど50年にわたって車名が続くモデルは、車両価格の高騰で販売が難しくなっている。フェラーリやランボルギーニのように、FMCの度に車名を変えてしまった方が販売側は助かるかもしれない。唯一の例外と言えるトヨタ・カローラは徹底した低価格で人気だったが、HEVのみとなった今後はどうなるだろうか・・・・。


日本のBMWファンが直6を神格化してしまった。日本向け正規品だと5シリーズ(M5を除く)からは直6が廃止されたが、3シリーズにはM340iがギリギリ1000万円を下回る価格で設定されている。367psを快適に扱うためにXdrive (AWD) となっているようだが、ドイツ車のAWDは100万円以上割高になるのだから、もう少しデチューンしてFR版で200万円くらい安い価格設定があっても良さそうだ。



使いやすいグレード

雨や雪が多い日本では、各社がAWD技術を競って開発し、日本車ならばAWD化で20〜40万円程度しか価格差が出ない。スイスの一部の豪雪地域ではスバル車が異常な人気を誇るなど、AWD技術に関しては日本メーカーが欧州市場でも高く評価されている。ドイツメーカーのAWD車が高価なのは、マグナや日立などのサプライヤーに外注しているからだ。MAZDAでも48VのMHEVになると100万円近く価格が上がるのと同じ構図だろう。


モード燃費10.6km/LのM340iを背伸びして買うよりも、直4ターボ・デチューン版 (156ps) の318iの662万円 (モード燃費13.0km/L) が使い勝手が良さそうだ。今回の50周年記念車も318iリムジンをベースにした698万円のモデルが400台で一番多く設定されている。上の世代は排気量や出力をやたらと気にする傾向にあるけども、彼らの価値観に合わせていたレクサスがISは11月でエンジン車を廃止し、HEV専用になると発表された。



抑圧されるスペック

BMWもレクサスを笑ってはいられない。多彩なボデー展開でブランドの未来を切り開くはずだった8シリーズが昨年生産終了に追い込まれた。レクサスもBMWも排ガス規制への対応が難しいことを理由に挙げている。欧州向けのMAZDA3は2.5L自然吸気MHEVを、140psまでデチューンしている。高負荷領域でも耐えられる排気量を低スペックで運用する「ライトサイジング」をVWやBMWも取り入れていて、VWゴルフの1.2Lは廃止され、BMW3シリーズも先代の1.5L直3ターボが現行では採用されていない。トヨタも次世代は3気筒から4気筒になるようだ。


VWゴルフが1.5L直4ターボ (115ps)、BMW3シリーズが2L直4ターボ (156ps)、MAZDA3が2.5L直4自然吸気MHEV (140ps)のエンジン車を主力モデルとして販売している。トルク重視なので走行性能に大きな不満はなく、実用燃費とのバランスを取っている。排ガス規制強化に対応すると、従来から30%程度は出力が小さくなってしまうらしい。VW、BMW、MAZDAが現状のエンジンで販売を継続するとしたら、このミニマム出力のユニットになるようだ。



ドライビングの未来型

MAZDAは2027年を目処に、次世代エンジン(スカイZ)を投入し、2.5Lで出力を落とさずに排ガス規制をクリアするらしい。BMWもエンジン開発を継続していて、内燃機関の技術革新が期待される。MAZDAもBMWも上級グレードにはディーゼルが用意されている。より小さいサイズでドライブを楽しむクルマならば、156psもあれば思う存分に走れるわけで、現行のBMW318iは「納得の走りができる実用車」として輝きを放つ。


G20系3シリーズ「318i」の前期モデルでは500万円を下回るグレードもあったが、後期モデルでは「Mスポーツ」のみとなり、662万円からの設定になった。ビッグマイナーによって外装は簡単に判別できるレベルで変化し、内装はまるで別のクルマというくらいに徹底的に作り変えられている。前期のセンターコンソールには、シフトレバーと円形のコマンドコントロールがあったが、後期ではシフトレバーが廃止されボタン式となった。新型CX-5ではコマンドコントロールが廃止で、シフトレバーは残っているので逆の選択がされている。



何も考えずに乗るしかない・・・

長らくBMW3シリーズとは、縦置きエンジンで、ZFのトルコンATを装備し、シフトレバーのMTモードではシフトアップが後で、ダウンが前というスタイルで、ドライビングの本質を考え抜いた設計が世界中で支持されてきたクルマだった。その象徴とも言えるシフトレバーが無くなったタイミングでの「50thアニバーサリー」は、ちょっと間が悪い感じもする。変化についていけないMAZDA好き一般人には、現状の3シリーズの良し悪しは判別不能だ。


前期モデルまではICEとしての3シリーズを受け継ぐものだったが、後期モデルではBEV用のインテリアへと大きく様変わりし、BEVがベースのクルマに、エンジンを搭載したバージョンを追加したような感じだ。本国ではMTが廃止になったようで(右ハンドルMTはとっくに廃止)、それに合わせてシフトレバーも無くなってしまったようだ。これで並行輸入でもMTの3シリーズを新車で買うことは不可能になった。



他ブランドから乗り換え殺到!?

変化が激しくて付いていけないのは、BMWに限った話ではない。MAZDAのクルマ作りへの情熱は信じたいが、現実にはロードスターとMAZDA2くらいしか、ドライビングを最優先に楽しむ設計のラインナップは思いつかない。GHアテンザとRX8が廃止された2012年からずっと時間が止まっている。東京の「世田谷」「練馬」「品川」「杉並」といったナンバーの地域でMAZDAが拡販したいなら、BMWと対峙できるGHアテンザやRX8のようなモデルが必要だ。


BMWもMAZDAもパドルシフトがほぼほぼ標準仕様となっているので、もはやシフトレバーは不要かもしれない。内装が一気に最先端となった後期G20は、リムジン(セダン)でもリセールの値落ちは穏やかになるのだろうか。MAZDAがこだわりのセダン作りを放棄しているので、BMWには「難民」を受け入れる度量を見せて欲しいが、G20の318iはMAZDAから「待ちぼうけ」を喰らった人々からのリアルな熱視線を受けていると思われる。50thの318iの400台はMAZDAやスバルからの乗り換えが多いのではないか!?


後記

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BMW






2025年8月28日木曜日

ホンダ・プレリュード (2025年8月・情報公開)

3ドアクーペ

北米市場で販売されていたシビック・クーペの後継モデルが、新たに「プレリュード」に車名変更を機に日本市場にも投入されることになった。2016年で販売を終了したCR-Zが中古車市場でカルト的人気で乗り継がれていたことで、メーカー側も久々に3ドア車の国内発売を決めたようだ。学生でも購入できる廉価な中古CR-Zで、クルマの魅力にどっぷりハマった若者が、就職して給料も上がってきたタイミングであり、決して裕福なシニア専用マーケティングというわけではなさそうだ。


プレリュード、シティ、シビック、アコードクーペ、NSX、レジェンドクーペ、CR-X、ビート、インテグラ、シビッククーペ、S2000、CR-Z、S660・・・過去のホンダの2ドア&3ドア車はいずれも「名車」ばかりで、ホンダらしい徹底した作り込みが目立つ。これがホンダ四輪の歴史そのものだと言っても過言ではない。新型プレリュードが3ドアで新設計されたのは、この遺産を引き継いでホンダのブランド価値を示すために他ならない。ホンダの2ドア&3ドアはとりあえず買っておいて損はないと考えるユーザーも少なくないだろう。


低燃費ツアラー

CR-ZはMTとCVTが用意されたが全車ハイブリッドで、モード燃費は20km/Lを超えていた。現状では中古車の車両価格は50万円ほどで、17km/Lくらいの実燃費で走ってくれるなら、とてもお財布に優しい。今年から好きに走っても17km/L(ハイオク)は余裕で越えるMT車に乗っているが、毎週のように200〜300kmのドライブに出掛けてしまうほど、ガソリン代の負担感はない。Bセグのコンパクトカーだけども、今のところ稼働率は非常に高くて予想以上に満足している。



MTが選べるICEだとBセグの燃費が群を抜いている。MTを断念してHEVならば同等の燃費をCセグ以上のツアラーで実現している。走りに定評があるシビックHEVのカーライフも、400万円を越える本体価格を支払ってしまえば、燃費の経済性と高額負担バイアスの相乗効果もあって市販車最高レベルの「買ってよかった」体験ができると思う。東京から関東地方の全域に行ける往復300〜400kmの長距離ドライブでも、17km/L、1L=170円で計算すると4000円以下で済む。



プリウスが辿り着けない領域 (価格)

外観が現行のプリウスに似ていて、車に興味がない一般人には見分けが付かないレベルかもしれない。大きな見分けるポイントはドアの枚数と、洗練されたリアデザイン。さらに真横から見るとドラポジが「センター乗り」になっているのがプレリュードで、「前乗り気味」なのがプリウス。ドラポジはシビックとの大きな違いにもなっている。プリウス、シビックHEV、プレリュードで選ぶなら、プレリュードが特別な存在になっている。


価格は正式発表されていないが、プリウスHEVの最上級グレード(Z・AWD)が392万円なのに対して、プレリュードのベースグレードは618万円になるらしい。MAZDA2の頂上(250万円)と、CX-80のボトム(394万円)でも150万円程度の価格差しかないのに、会社が違うとはいえ200万円以上の格差は、プレリュードの価値が見極められる賢いユーザーにしか理解されないだろう。あまり適当なことは言えないが、余程の問題でも起きない限りは、とりあえずはリセールで100万円以上は価格差が縮まるだろうが・・・。


クラウンスポーツも喰う

618万円という価格は、クラウンスポーツ590万円(HEV)を追い越してしまう。ホンダの価格設定は最初からクラウンスポーツをターゲットに進められていたのかもしれない。MAZDAや日産だったら、ターゲットより安く価格設定するのだけども、それは四輪メーカー同士の感覚である。二輪屋のホンダにとっては、エンジンもまともに作れない四輪メーカーと同等の価格設定など最初から考えていない。フィットもヴェゼルもトヨタの同型と比較すればやや割高である。


シビックtypeRが割安過ぎてプレ値が付いてしまったのだから、ユーザーからの信頼を回復するためにも価格設定には慎重になるのだろう。HEVを普遍的価値を持つ本格スポーツツアラーへと昇華させるというホンダの意志は誇り高く、他社の価格設定など最初から考慮していないのかもしれない。二代目NSXでHEVのスーパーカーを作り上げた実績があり、その技術や知見をより汎用的なモデルへ応用しているのだから、HEVツアラーとして現状ではオンリーワンの価値を持つ。


BMW・M235iも喰う

今年フルモデルチェンジを果たしたBMWのM235i (2シリーズグランクーペ) 734万円とおなじ土俵に上がった。2L直4ターボ (300ps)  を横置きに積むAWD車で、日本市場価格ではシビックtypeRと同等のスペックに、BMW・Mの格式が追加されていて適正価格に感じる。しかしプレリュードの登場は、このホンダ vs BMWの伝統的対峙に横槍を入れた。常用域は電動で走るシステムなので、BEVスペックのトルクで発進でき総合出力200ps程度であっても、シビックtypeRに匹敵する洗練された加速が可能だ。


次期シビックtypeRは現行のピュアICEのままでは登場しないことが予想され、ハイエンドなドライビングを提供する役割はプレリュードが使うHEVシステムへと移る。BMW版のシビックtypeRと言えるM235iは、横置き&直4のためモード燃費がICEのMの中で最高の12.6km/Lであるが、プレリュードのベースとなるシビックHEVは24.2km/Lである。ボデーは3ドアで剛性も高くなり、軽量化もしている可能性がある。BMWの本来の魅力であったスペシャルティカー的カスタムをホンダが仕掛けてきた。


A45AMGから乗り換え!?

国内市場でCセグのハイエンドカーとして君臨するのはメルセデスのA45AMGで、2013年の登場以来、街中でよく見かける。M235iがBMW版シビックtyoeRなら、A45AMGはメルセデス版ランエボである。現行のA45AMGは421psまでチューンアップされ、940万円まで価格が上昇していて買いにくくなっているが、代わりに306psのA35MAGが765万円で設定されていて、最近ではこちらをよく見かける。


直4の横置きは手頃な大衆車のイメージが強いが、国内で走らせるのに都合が良いサイズ感と満足できる走行性能に加えて、ブランディングにふさわしい内装まで備えている。実際に10年以上にわたって売れ続けてきたわけで、A45AMGやA35AMGは、プレリュードの国内投入を実現させた「影の功労車」と言ってもいいかもしれない。


シビックHEVが売れる

残クレやリースなど様々な購入方法が広がっているため、613万円という価格が一般ユーザーの家計に負担をかけるのかわかりにくい。2000年代に国内のBMWディーラーで残クレが始まり、E90系BMW3シリーズが大ヒットし、2007年の国内BMW販売は過去最高を記録した。残クレの広がりによって輸入車価格の上昇が始まり、その波が2020年代には日本メーカーにも及んできた。クルマだけでなく、住宅、米、宿泊など需要が高いものは次々と「金融」に価格が釣り上げられていく。


20年前に残クレを始めたBMWは、今はその後遺症に苦しんでいる。価格が急騰しているアルファードやランクルも10年後には同じような状況だろうが、その頃には自動車のカタチは変わったものになっているだろう。ユーザーは資本主義の弊害に気づき始めている。シビックやCX-60といった高性能だけど控えめな価格設定のクルマが堅実に売れるようになっている。プレリュードの価格は絶妙なサジ加減なのだろうけど、シビックHEVの上級グレード430万円がとても魅力的な価格設定に見えてくる。



後記

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ホンダプレリュード&インテグラがいた時代


タカラトミー(TAKARA TOMY) トミカ No.10 ホンダ プレリュード ミニカー


タカラトミー(TAKARA TOMY) トミカ ホンダ シビック TYPE R トミカ55周年記念仕様




2025年7月16日水曜日

MAZDA・CX-5 (2025年7月・新型公開)



 



スバル・フォレスターが人気で焦った!?

MAZDAが欧州市場向けの新型CX-5を発表した。CX-60、70、80、90の新型4車種を一括企画で開発して順次投入して以来のMAZDAの自社開発の新型モデルということで、注目度は非常に高い。新型フォレスターが2023年11月に北米市場向けで発表された時は、日本ではカーメディアやYouTubeがこぞって紹介することはほとんどなかったのとは対照的である。注目度が高く動画で再生回数が多く稼げるMAZDAの新型車ということで、自動車系ユーチューバーにとっては追い風が吹いている!?


海外発表時はほとんど取り上げられなかったスバル・フォレスターであったが、1年半経過して日本発売となり、本体価格も大きく400万円越えしたにも関わらず日本市場でスマッシュヒットを遂げた。先代フォレスターは地味ながらもモデル末期になって海外市場での人気でリセールが急騰したり、海外メディアの「ムース・テスト」で好成績 (ポルシェ・マカンを圧倒) を収めたこともあって、コアなユーザーからの熱い支持を得ているようだ。さらに「ミドルSUV=高級車」という価値観の変化もあって幅広い年代から受注を得ているようだ。



ディーゼル廃止

すでにわかっていたことだけども、新型CX-5では2.2Lディーゼルエンジンが採用されない。欧州の排ガス規制に合わせるため、すでに欧州向けMAZDA3、CX-30も「2.5L・MHEV」への換装が完了している。今回発表された欧州向けにも同じユニットが搭載される。2.5L自然吸気を141hpにデチューンさせている。CX-60ほかの大型4モデルでは、新設計のシャシー、エンジン、ミッションが一度に投入され、MAZDAの「革新」モデルであったが、今回はシャシー、エンジン、ミッションは既存のもので、MAZDAの「伝統」「コンサバ」なモデルである。


2015年のNDロードスターでは、初代NA(1989年)への回帰を宣言したり、現在もロータリー駆動のスポーツカーの復活をほのめかすMAZDAは、トヨタや日産など他の日本メーカーとは逆のベクトルを持つ稀有なブランドだ。BMW、ポルシェ、フェラーリなど、ファンから「原点回帰」を求める声が上がる欧州の名門ブランドに近い存在だと言える。CX-60の登場よりも、CX-5の「コンサバ」なFMCの方にワクワクしてしまうMAZDAファンは結構多いのではないだろうか!?


全長&ホイールベース伸びる

現行CX-5と比較して、全長が115mm延長されることが発表されている。延長分は全てホイールベースに当てられているようで、ホイールベースも2700mmから2815mmに拡大されるが、これは北米工場(アラバマ州)で既に生産されているCX-50のものと一致する。この延長により後席の居住性の大幅な向上がアピールされていて、車内のシートピッチや後席まで広がるサンルーフの配置もCX-50と同じだ。ストロングHEV導入時にショーファーカー向けグレードも登場するかもしれない (MAZDAといえばドライバーズカーだけど)。


一方で懸念されるのは、2700mmの現行はミドルSUVで随一のハンドリング性能を誇り、ホイールベースの中間に前席が配置される「中乗り」設計だが、これらがことごとく失われる可能性があることだ。現行CX-5は「ハンドリング」「GT性能」を追求した万能型ドライバーズSUVとして大ヒットしたが、その後にホイールベースが2655mmでハンドリングの良いCX-30と、直6でGTの世界感を突き詰めたCX-60が登場して、ユーザーの嗜好に細かく対応している。新型CX-5が前後4人乗車を楽しむカーライフ志向するのもいいのかもしれない。



インテリア

エクステリアはキープコンセプトのまま、レイアウトはCX-50のものを移管した。一番大きな変更点が盛り込まれているのがインテリアデザインだけども、ステアリングは真円形状で、シフトノブもスティックタイプとままで、「コンサバ」なユーザーに訴求できるFMCを目指したのだろう。シート形状も既視感があるし、センターコンソール周辺はシフト、電気式サイドブレーキだけのシンプルな構造になった。オルガンペダルのアクセルや、パドルシフトなどの操作系インターフェースは、素晴らしいことに全く変わらないようだ。


エアコンの物理スイッチ廃止がちょっと物議を醸している。現行CX-5のオートエアコンの車内温度は比較的に安定していて、エアコンスイッチを操作する頻度は多くない。24度でデフォにしてあり、毎回の乗車時に設定する必要もない。MAZDA2・15MBはマニュアルエアコンなので、しばしばツマミを回して風量と冷暖を管理する。CX-5にはマニュアルエアコンのグレードなどないので、エアコンに関しては問題ない。ガラスの曇りに関しても、CX-5のフロント面は合わせガラスが採用されていて、10年以上前のクルマのようにすぐに見えなくなるくらい曇るなんてことは起きない。



ストロングハイブリッド

発売前から2027年に自社開発のストロングハイブリッドを導入すると発表されている。一足先にスバルがトヨタのTHSを導入しているが、クロストレック、フォレスターのモード燃費は18.4〜18.9km/Lだ。2013年の3代目アクセラでTHSを採用した実績があり、その際に回生ブレーキのフィールを劇的に向上させ、トヨタに決定的な技術力の違いを見せつけた結果、現在のアライアンスに至っている。AWD比較だとハリアーは21.6km/Lなので、いきなり自社開発でこれを越えてくるとは考えにくい。


国交省の指標は2030年にメーカー平均燃費25km/L以上となっている。今後のMAZDAのボトムを形成するCX-5、CX-30、MAZDA3にとって主力ユニットとなる「2.5LスカイZハイブリッド」なので、トヨタのTHSを燃費で上回るような特大ブレイクスルーを狙っている可能性もある。老婆心ながら、あまりに数字を追いかけるばかりに、耐久性の問題だったり、インチキ(モラルハザード)をしたりなんてことがないことを祈りたい。



CX-60の方が安い!?

現行の2.5Lエンジン(PY-RPS型)のMHEVで登場する初期モデルの価格は、現行CX-5(PY-RPSの非電動)だとスポーツ・アピアランスのみで、FF358万円、AWD381万円と比べて、同等かやや手頃な価格からのスタートになりそうだ。全グレードが400万円越えのフォレスターが売れているので、300万円台の後半スタートでも十分に勝負になるという判断もあり得る。CX-60の2.5L(PV-RPS)がFR324万円、AWD349万円なので、CX-5の客がこちらに流れる。


ストロングハイブリッドに関しては、2027年のMAZDAの経営状態によって多少は価格が変化するだろうけど、フォレスター(全車AWD)が420万円、CX-60のディーゼルだとFRが412万円、AWDが435万円なので、この辺の価格帯に落ち着くことになりそうだ。ただし2030年までにMAZDAは全車電動化を掲げているので、CX-60のディーゼル(MHEV無し)や2.5Lガソリンも、縦置き版の「スカイZハイブリッド」に置き換えられると思われる。


日本発売は2026年4月

ディーラーに入っている情報によると2026年4月に日本で販売開始のようだ。なんで日本市場が後回しなんだ!?という意見もあるだろうけど、現行CX-5は2017年のデビュー以来、毎年ブランドのベストセラーに君臨してきた絶対的エースである。ディーラーの担当者もディーゼルの駆け込み需要の獲得に燃えている。CX-60の直6ディーゼルの方がモード燃費でやや上回っているが、ディーゼル同士を価格で比較すれば、CX-5の方が100万円ほど安い。


今年の後半にはロードスターの2Lモデルの発売も迫っている。こちらのクルマもICEの新車が買えるのが、もしかしたら2027年までの可能性もあり、試乗して良かったら貯金を始めよう!!なんて悠長に構えていられない。リセールでがっつりお釣りが付いてくるだろうから、即日にローンか残クレを使ってでも買うべき案件だ。発売1週間で中古車屋(転売ヤー)が根こそぎ注文して受注停止に追い込まれそうだ。内外の経営環境の変化によってジェットコースターのようなMAZDAの成り行きを今後も見守りたい。



後記

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ONLY MAZDA オンリーマツダ









 

2025年6月29日日曜日

アルファロメオ・ジュニアibrida (2025年6月新モデル)

 

美しいクルマ

MAZDA乗りは、大方の予想通りだと思うが、街中で見かける周囲のクルマに対して、少なからず優越感がある。トヨタ、日産、ホンダ、三菱、レクサス、BMW、ボルボのデザインはちょっと理解不能なくらいで、語彙力なく一言で表現するなら「ダサい」でしかない。スバルやスズキは最近デザインが良くなってきているとは思うが、あくまで上から目線である。メルセデス、ポルシェ、アウディなどドイツ車は・・・なんだか中国メーカーっぽく見えてしまう。


デザインにうるさいMAZDA乗りが、街中で出会うとちょっと自信を無くしてしまうのが、アルファロメオだ。現行のジュリアやステルヴィオは登場からかなりの年月が経過しているが、MAZDAデザイン以上に風化しない。それどころか絶版モデルの147、156、159、166、GT、ブレラなど2000年代のデザインは、登場から20年過ぎてもエゲツないオーラを放っている。デザインが良いMAZDA車に乗っているという優越感が、アルファロメオの前では呆気なく失われる。



MAZDAとアルファロメオ

アルファロメオに新型車ジュニアが追加され、大中小の3段階のSUVが揃う。なんだかMAZDAのようなSUV主体のブランドになってきた。日本市場で現行SUVをデザインで妥協せず選ぶならば、ステルヴィオ、CX-60、CX-80、ディフェンダーがラージサイズSUV、トナーレ、CX-5、レンジローバー・イヴォークがミドルSUV、ジュニア、CX-30、CX-3、DS3がスモールSUVの選択肢になる。レクサスRX、LBX、ハリアー、ヴェゼルで十分にカッコいいと満足できる人には反論があるだろうけど、デザインで世界の頂点に立つブランドは隙がない。


2024年に120万台販売したMAZDAと、6万台のアルファロメオでは全く比較にならない気もするが、6万台規模でも欧州、日本、北米、豪州などほぼ全ての主要市場で展開されている。MAZDAと同じでCセグ以上の全モデルを北米市場に投入している。全モデルがイタリア製という本国生産ポリシーが、日本でも北米でも高いクオリティを求めるユーザーに支持されている。さらに北米市場を意識した高性能なモデルがあまりに高額になり過ぎて、2024年の日本市場では前年比で40%も販売台数が減ってしまったところもMAZDAに似ている。



特殊なビジネスモデル

少量生産で存続できるのは、アルファロメオが「メーカー」というよりは、「チューナー」に近いビジネスモデルになっているからだろう。2000年代まではアルファロメオが創業したアレーゼで開発&生産が行われていたが、現在では開発部門はトリノ(フィアット本拠)に移されていて、各モデルの生産はフィアットのイタリア各地の工場で行われている(アレーザ工場は閉鎖)。フィアットが開発・生産を担当するクルマを、「アルファロメオ」として仕上げることに特化していて、光岡自動車、BMWアルピナ、ACシュニッツァー、ブラバスなどのチューナーに近い存在になっている。


縦置きエンジンのジュリアやステルヴィオは、同時期に発売されたマセラティ・ギブリとシャシーが共用され、マセラティにはない直4エンジンは、ジープの2.0L横置き直4ターボ(ハリケーン)と一括で開発されていて、ボア✖︎ストロークのサイズは全く同じになっている。トナーレは横置きとなり、ジープのコンパス、チェロキーに使われる三菱設計のシャシーを使い、イタリア生産で北米向けのダッジ・ホーネットと共通設計だ。日本向けマイルドハイブリッドには1.5Lターボが新開発で搭載されたが、北米市場向けは、ジープと同じ2Lターボ(ハリケーン)に変更になっている。



手頃な価格で良いクルマを作る

フィアット=クライスラーの他ブランドとの共通設計ばかりを使って仕立てられる2015年以降のアルファロメオだけども、経営努力の甲斐もあって、販売台数が多いBMWのライバル車と比べても同程度の価格でより高性能なモデルが選べる設定で、ジュリアの登場から10年に渡って販売を続けるくらいの売り上げは維持してきた。BMWの唯一無二なドライバビリティに対して、アルファロメオは絶対的なサーキットの速さは追求しないけども、ファン・トゥ・ドライブの高まりを感じさせるこだわりはユーザーに広く伝染している。


プジョー=シトロエンやオペルとの合流を果たし、大同団結「ステランティス」が組まれ、アルファロメオの扱うクルマも幅は広がった。アルファロメオは2025年以降の新型車はBEVのみになると発表している。2024年に登場したジュニアibrida がアルファロメオのエンジン車としては最後の企画になるようだ。1.2Lターボ48Vマイルドハイブリッドに6速DCTを組み合わせるユニットと、シャシーはフィアット600Hybrid、ジープ・レネゲード、ランチア・イプシロン(日本未導入)、シトロエンC4と共通のもので、ステランティス全体で「マスゲーム」を仕掛けてきた。



クルマの価値を追求

日本市場のユーザーの感覚だと、日本車とドイツ車の性能や生産技術は、他の地域の追従を許さないというバイアスが捨てられない。ステランティスが一斉に投入した新型ユニットも、トヨタ・ライズやスズキ・クロスビーの小排気量ターボと比べてしまうところがある。もちろん車両価格は約2倍なので、エンジンもモーターも高性能なものになっていて、1300kg級の車重を150ps前後のシステム出力で引っ張るのだから、とりあえずMAZDA3の2Lエンジン級のスペックだと予想できる。


シャシーもプジョー=シトロエン時代に開発されたEMP1を使用していて、マイルドハイブリッドでもBEVでも運用できる汎用性の高いBセグ用シャシーを使っている。ライズやクロスビーの軽自動車向けシャシーでは、車重1600kg級のモデルを仕立てることは難しいだろうが、EMP1派生のe-CMPシャシーで作られるBEVは1600kgを超えるものもすでに登場している。エンジンは1.2L直3ばかりだけど、このシャシーはBEVで本領発揮するらしい。日本には導入されていないが、ジュニアには本命グレードはBEVの240ps版もある。



クラフトマンシップ

ステランティスの各ブランドはそれぞれのテイストで、同じシャシー&パワーユニットのクルマにキャラクターを付けている。見た目が違えば個性というわけではなくて、ユーザーのカーライフにどのように深く切り込むか?をデザイナーが考え抜く過程で、イタリア人、フランス人の価値観が織り込まれていくことで、日本メーカー車とは違う世界観を作り出す。メルセデスやBMWなどのドイツのプレミアムブランドは、内装&機能を他国のサプライヤーに丸投げできるまで車両価格が高騰しているが、日本市場で400万円台の攻防をするジュニアだと自社でやるしかない。


フェラーリ、ランボルギーニ、パガーニなどスーパーカーのイメージが強いイタリア車だけど、イタリア経済の実態はG7で日本と実質賃金ワースト1を争うような「貧乏な先進国」だ。イタリア企業が所有するグレングラント蒸留所(スコットランド)の「アルボラリス」というシングルモルトは、英国、日本、台湾のモルトウイスキーと比べても極めてリーズナブルだし、イリーのエスプレッソ粉も最高の味わいながら日本での正規販売でも格安で手に入る。イタリアと日本はものづくりが上手いばかりにクラフトマンシップが暴走し、価格は安いのに高品質に作ってしまう面がある。消費者にとっては嬉しいことだけど・・・。



日本市場に変革はあるか!?

アルファロメオ初の本国以外の生産(ポーランド生産)となるアルファロメオ・ジュニアだけど、イタリアメーカーらしい「庶民感覚」もあって非常に好感が持てる。2015年のジュリアは価格を抑えた設定ながら、スポーツツアラーとして「唯一無二」の味わいを備えて、日本でもアメリカでも予想以上に売れた。2000年代のモデルのイメージもあって、アルファロメオは価値あるクルマを手頃な価格で買える優れたブランドという一定の評価を得ている。


MAZDAとアルファロメオがクルマ作りをやめてしまったら、趣味でクルマを買う人は激減するのではないかと思う。各メーカーの現行モデルが高齢者向けのクルマばかりになって、若い人が無理してクルマを買いたいとは思わなくなった。「中途半端なクルマなら要らない」という声もよく聞く。トヨタも日産もガソリン撒き散らして走る経済感覚ゼロな高級車しかない。ジュニアibridaのモード燃費は非公表だが、同じ工場で生産される兄弟車は23km/Lを記録している。調べれば調べるほど興味が湧くクルマなので、日本市場の販売回復に貢献すると思う。







Passione Alfa Romeo: 新たな神話 永遠なる情熱

















2025年6月14日土曜日

カローラ クロス (2025年5月MC)

 

トヨタ最強の成長株

日本市場のカローラ・シリーズは、「セダン」、「ツーリング(ワゴン)」、「スポーツ(ハッチバック)」、「クロス(SUV)」のグローバル4車種と5ナンバーの旧モデル国内専用2車種が設定されている。日本では「クロス」7000台 / 月、「ツーリング」3500台/ 月、「セダン」1000台 / 月、「スポーツ」1000台 / 月だそうで、確かにクロスとツーリングを見かける頻度が高い。4車種とも価格競争力は相当に高いけども、セダンやハッチバックは日本では人気がない。


これがアメリカ市場だと「ツーリング」以外の3車種、ドイツ市場だと「セダン」以外の3車種となる。日本の人気とはやや違っていて「スポーツ」と「クロス」の2車種がグローバルではシリーズの核となっている。北米市場では「スポーツ」にはHEVの設定がなく、「セダン」の非HEVモデルとともに、ブランドのボトム価格専用車として販売されているのに対して、「クロス」は2Lガソリン(169ps)と、他のシリーズにはない2LのHEV(196ps)の2ユニットが用意され、カローラシリーズの「主役」だ。



北米と欧州でもシェアを伸ばす

日本市場に「GRスポーツ」として導入されている2LのHEVは、北米市場では「クロス」の全HEVに搭載される。一方ドイツ市場では「スタイル」「ラウンジ」の上級仕様のみで採用される(ベースグレードは1.8LのHEV、非HEVはなし)。「クロス」のHEV車は、北米やドイツでは相互関税の影響もあってか450万円以上の価格で設定されている。日本市場のGRスポーツが389万円なので、まずは北米&ドイツに優先的に割り当てているのだろう。日本と同じく右ハンドルのイギリス市場では、なぜか「クロス」は導入されていない。


今回のビッグMCによってドイツ市場と同じく、日本市場でも全車HEV化が行われた。ガソリン車の廃止で平均単価は上昇し、販売面でも悪影響がありそうだが、「セダン」と「ツーリング」に関しては、すでに国内市場ではライバル不在の状況で、むしろガソリンモデルの割安感によって、トヨタの他のラインナップの価格設定に悪影響が出ていた。クラウンやハリアーなどの上位モデルとの価格差が開き過ぎたので是正したのだろう。



国内ではライバル不在

「スポーツ」のライバル車としては、MAZDA3ファストバックの1.5Lガソリンのお得なパッケージ「iセレクション」が230万円で設定されているが、HEVのカローラスポーツは248万円〜で、MAZDAと異なりトヨタではナビはオプション扱いで15万円ほど余計にかかる。それでも「スポーツ」の販売数は、元々から少ないので大勢に影響なしと考えたのだろう。いくら車格が同じとはいえ1.5Lのガソリン(MAZDA3)と、1.8LのHEV(カローラスポーツ)が同じ土俵というのも無理がある。


日本メーカーの国内向けCセグでは、MAZDA3セダン、インプレッサ、シビックに関しては、カローラとの価格競争はすでに諦めていて、走り・デザイン・質感といったクルマの価値で勝負している。カローラでのカーライフでは全く満足できないユーザーが一定数いて、これらのこだわり(車好き)ユーザーを3車で分け合っている。ワゴンに関しては、カローラツーリングの独壇場になっていて、ホンダもMAZDAもアメリカ市場で売れないワゴンの開発には興味を持てないようだ。



トヨタ VS ホンダ

ライバル不在でトヨタも頑張る必要がない「セダン」「スポーツ」「ツーリング」に対して、「クロス」は、現在の自動車業界の勢力構図に直結する「小型SUV」ということもあり、ホンダ・ヴェゼル、ホンダ・WR-V、MAZDA・CX-30、スバル・クロストレックなど各メーカーが最も勢力的に投資しているモデルとの際どい攻防は避けられない。日本市場で7000台 / 月のカローラクロスではあるが、同じく6000台 / 月のヴェゼルと3500台 / 月のWR-Vで対抗するホンダ勢に対して、やや劣勢という見方もできる。


ヴェゼルが好調に売れ続けているのに加えて、インドからの輸入にも関わらず3500台/ /月を売り上げてしまうWR-Vの大成功は、自動車業界全体に衝撃を与えている。適正価格であるならば、海外からの逆輸入でも十分に勝負ができてしまう。岩手県(トヨタ東日本)から、福岡県(トヨタ九州)まで、組み立て子会社を抱えて、日本の雇用を守ることを社是とするトヨタは、小型SUVの競争でホンダに遅れを取るわけにはいかない。



トヨタの仁義なきマーケティング

ホンダ陣営を切り崩すため、カローラ クロスにだけ特別にフロントマスクの変更などFMC級の大改良が施された。すでに国内生産のヴェゼルは、ボトムグレード(264万円)を除いて、全てHEV化を実現している。HEV比率は95%を超えるようだ。ヴェゼルのHEV最廉価グレードは288万円で、カローラ クロスのHEVは276万円なので、対ヴェゼルに関してはガソリン車を廃止しても大勢に影響はなさそうだ。


新たに投入されたインド生産のWR-Vは1.5L自然吸気(118ps)のみの設定で239万円〜となる。カローラ クロスでこの価格に張り合うのは無理があるので、カローラ ツーリングのHEVのスタート価格を249万円から235万円に引き下げる荒技でWR-Vよりも安い価格を実現している。さらにWR-Vより一回り小振りなボデーになるがヤリスクロスはガソリン車が190万円、HEVが229万円で、販売台数は4000台 / 月で、ユーザーをしっかり取り込んでいる。



利益率の改善

一方でカローラクロスも、賃上げ圧力が強まっている日本での生産を維持するためには単価を上げていく必要がある。生産を担当するトヨタ自動車東日本は、カローラ クロスは、ヤリス、ヤリスクロス、アクア、シエンタなどトヨタのラインナップの価格優位性を請け負う小型車の生産が多い。トヨタの国内生産拠点は他に直営4工場、トヨタ車体、トヨタ九州、ダイハツがあるが、トヨタ東日本とダイハツは利益率の低い車種を押し付けられている。トヨタ東日本にとってはカローラクロスの国内販売によっては、今後の死活問題となる。


元々はASEAN地域への戦略車として開発されたカローラクロスなので、日本とアメリカ以外に、タイ、中国、台湾、マレーシア、パキスタン、南アフリカ、ブラジルなど生産国は多岐に渡る。2021年に日本に導入され、ガソリンモデルは218万円という脅威の低価格で、あっという間に受注停止に追い込まれた。東南アジアからの輸入ではなく、日本生産を軌道に乗せるためのダインピング価格で話題作りを行い、IC不足を理由に3000台 / 月くらいに販売を抑えた。直近の半年ではそれが7000台 / 月となっているからトヨタの世論操縦は上手過ぎる。



ユーザーの囲い込みがエグい!!

HEVのみ276万円となったが、前期モデルのちょっと古くさいデザインは一新され、前期モデルを買った人や生産終了となったC-HRからの買い替え需要を掘り起こすのだろう。トヨタでは3年車検時での乗り換えのリセールはかなり良く、実際に売買した知人に聞いた金額であるが、カローラクロスもカローラツーリングも新車乗り出しから100万円も下がらないらしい。新たに導入された2L・HEVも単純にプリウスの販売不調でユニットが余ったという理由だけでなく、前期からの乗り換えを喚起するのにちょうど良い起爆剤なわけだ。


今時の新車販売は、徹底した理詰めの戦略でユーザーをごっそり獲得していくのだろうけど、カローラクロスの変貌ぶりは、トヨタのマーケティング戦略が他社を圧倒していることが、とてもよくわかる。北米市場では現地生産のカローラクロスの台頭で、日本から輸出していたC-HRとベンザ(ハリアー)の販売が終了した。相互関税の長期化によって、北米生産を行わないハリアーやC-HR(現行はトルコ生産のみ)の存在感は低下し、北米市場でも7万台 / 年を突破したカローラクロスがRAV4に続く第2のSUVとなっている。このクルマはどこまで成長していくのか!?今後の動向に注目したい。












2025年6月11日水曜日

フィアット600Hybrid (2025年6月追加)

 

ハイブリッドモデルの追加

フィアットを代表するモデルと言えば長らく「500(チンクエチェント)」だった。ルパン三世が乗っている戦前モデルのリバイバルとして2007年に登場し、日本でも街中でもよく見かける定番車になった。残念ながら2024年でポーランド工場の生産が終了し、日本向けの販売も終了するとのことだ。そのポーランド工場では代わりにグローバルの市場変化に対応したBEV専用モデルとして誕生したジープ・アベンジャーとフィアット600eの生産が始まり、どちらもすでに日本市場に投入済みだ。


新規のBEVモデルではあるけども、2024年にイタリアの工場で生産が終了したBセグSUVの「500X」の後継モデルの位置付けでもあるため、新たにマイルドハイブリッドで電動化を施した1.2Lターボ搭載の「600Hybrid」が追加された。「500X」は2014年に小型SUVのブームによって登場した。その前身となるモデルも存在していてフィアット・セディチは、スズキのハンガリー工場で生産されるSX4のOEMモデルだった。スズキのOEM車を日本市場には投入できなかったが、FCAのイタリア工場に生産が移管された「500X」と「ジープ・レネゲード」からどちらも日本市場に投入されている。



ステランティス設計

先代の「500X」で使われていたシャシーは、FCAとGMのコラボで設計されているようで、GMの小型車部門はスズキが担当していたことから、SX4(セディチ)の設計がベースになっていると考えられる。セディチには先代のスイフトスポーツで使われていた1.6L自然吸気が搭載されていたが、「500X」ではフィアットの1.4L直4ターボ(2019年から1.3L直4ターボの新開発エンジン)となり、フィアットが得意とする小排気量エンジンを使うモデルとなった。


新たに登場した「600Hybrid」には、1.2L直3ターボが搭載されるが、フィアットの1.2Lは4気筒でNA専用なので、ステランティスのアライアンスを使って調達されたプジョー=シトロエン陣営で広く使われる汎用エンジンが搭載されることになった。プジョー、シトロエン、DSの日本向けモデルは、トヨタ系サプライヤーのアイシンAW製トルコンATを装備するが、「600Hybrid」には供給されておらず、「500X」に引き続きDCTを装備する。



500Xか?600Hybridか?

フィアットの日本法人(CIAOフィアット)では、先代「500X」の生産終了はアナウンスされておらず、販売が続いている。レンタカーにも供給されていて、フリート販売による在庫車が多いのだろう。412〜435万円の設定でキャンバストップの限定車もあり、イタリア生産車という付加価値もあるので興味深い。ボデーサイズはヤリスクロス(ハイエンドで315万円)と同程度だけど、エンジンは151psで、内装デザインはトヨタとはまるで違ったエモーショナルな造形をしている。ノーマルユニットのレクサスLBX(460万円)と比べれば、十分にお買い得だと思う。


「600Hybrid」は前述のようにポーランド生産で、1.2Lの直3に変わったけども、フィアットのマイルドハイブリッドが強力で、システム出力は145psまで上げられている。レクサスLBXに匹敵するような豪華内装で、レザー&運転席パワーシート標準装備となっている上級パッケージ(ラ・プリマ)だけども、ローンチ限定価格399万円で、かなり「弱気」な価格設定だ。発売から10年が経過する「500X」は4気筒でインテリアもエンジン車っぽい計器やスイッチが目立つ造形なのに対して、「600Hybrid」はBEVっぽいシンプル過ぎる内装に変わっている。デザインも走りもまるで異なる両方を所有して楽しむ人を世間ではエンスーと言う。



小型SUVの質感はどんどん上がっている

600Hybridのような小型SUVは日本市場でも各社から発売されている。街中でホンダWR-Vを見かけたが、思っていた以上に上質なクルマに見えた。実家の母にもオススメしたい感じだ。同じくインド生産のスズキ・フロンクスや、タイ生産の日産キックス、MAZDA・CX-3が逆輸入されている。大人気のジムニー・ノマドもインドからの輸入を1300台/月から3300台/月に増やして、4日間で5万台という破格の受注に対応するらしい。日本メーカーだけでなく世界中のメーカーが、現在のところ最も力を入れて開発しているのが「BセグSUV」なのかもしれない。


毎年発売される「世界の自動車オールアルバム」を見ていると、BセグSUVの増殖ぶりが凄まじい。現地生産必須の中国市場とBセグ不在のアメリカ市場には、第三国で生産して輸出というビジネスができないが、インド、インドネシア、パキスタン、ブラジル、バングラディシュ、メキシコ、日本、フィリピン、ベトナムといった人口が多い国々と、欧州やオーストラリア、ニュージーランドといった高所得地域に幅広く導入できるので、BEVなどの市場変化によるリスクを避けるには一番信頼できるジャンルなのだろう。



小さくても高級車

日本市場に導入されている欧州メーカーの小型SUVは、フィアット、ジープ以外に、シトロエンC3エアクロス、プジョー2008、DS3、ルノー・キャプチャー、VW・Tクロス、MINIカントリーマン、アウディQ2と多岐なブランドに渡っている。それぞれに日本市場での販売台数の中ではブランド内のエース格のモデルといえるものばかりだ。ライバルが多過ぎて過当競争気味なこともあって、デザインなどの作り込みも各社それぞれに工夫を凝らしていて、600Hybridが400万円を下回る戦略価格で導入されるなど、インポーターもギリギリの戦いをしている。


車格至上主義が根強く残る日本市場では、メルセデス、BMW、ボルボ、スバル、MAZDなどのアメリカ向けモデルを、「大きくて取り回しに気を使う」「燃費もかなり悪い」などとちょっと嬉しそうにブツブツ言いながら乗るのが定番になっている。とりあえずエコなど考えずに、ランクル250、アルファード、CX-80のような設計の大前提が「5m級であること」な、メーカーがユーザーの知能レベルを舐めているとしか思えないモデルが優先的に作られている。



MAZDAの巨艦主義はどうなのか?

394万円のCX-80と、399万円のフィアット600Hybridのどちらが高級車か?後車だろう。どちらが走りが楽しいか?これまた後車だろう。メーカーの方針にはいろいろあるのだから安易な比較はできないけども、今から20年ほど前のMAZDAは欧州市場での成功を目指してフィアット・プントみたいなデミオと、アルファロメオ156みたいなアテンザで大成功を収めた。イタリアブランドのようにセンスの良かったMAZDAはどこへ行ってしまったのか!?


2007年に登場のデザインが今でも極上過ぎる「500」、2014年に登場して10年経過もコダワリのレンタカー車として普遍的なデザイン美を誇る「500X」は、イタリアデザインは、MAZDA車のようなロングサイクルに合っている。5m級などとサイズを決めずに、必要に応じた大きさのクルマをバランス良くデザインしたものは賞味期限が長いようだ。CX-5もキャビンをコンパクトにデザインしたところが秀逸なのに対して、CX-60、ハリアーはキャビン後部が間延びして見えてしまう。



イタリア車への憧れ

イタリア車が車格に拘らないのは、イタリア国内の道がとても狭いからという理由だけでなく、「イタリア車である」というプライドや余裕がそうさせるのだろう。世界最高の自動車用エンジンを生産するのはイタリアだ!!ドイツでも日本でもなくイタリアだ!!楽しくなければイタリア車ではないし、ドイツ車や日本車と違ってイタリア車は運転技術を要求する。2気筒エンジンのトルクで上手く走らせる技術が求められる。ポルシェは誰が乗っても速いけど、フェラーリには腕が必要・・・。


長らく日本でも販売されてきた「500」や「パンダ」が廃止され、「500X」も生産終了が噂されていて、アバルトの695、F595もベース車が無いので終了する。アルファロメオは価格上昇が激しい。日本市場で500万円以下で買えるイタリア生産のエンジン車は、いよいよ消滅の危機を迎えている。スペイン生産のフィアット・ドブロ(ミニバン、ディーゼルのみ)を除くと、ポーランド生産の600Hybridが、庶民にも手が届く最後の「楽しいイタリアのエンジン車」になってしまうようだ。ゆえに日本市場で意外にヒットしそうな予感がする。













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